15話 目指す場所
「あ、そういえば零央の属性ってなんだったの?」
校舎に入って靴を下駄箱に入れている時に、俺は零央に聞いてみた。
俺は主力属性が氷、副力属性が風だった。属性で教室が変わるはずなので、同じなら一緒に授業を受けられると思ったからだ。
「えっと…、主力属性が土で、副力属性が風だったよ。」
「へぇ、俺も副力は風だよ。多分教室同じだと思う。」
「本当?良かった…。普通に話せるの誠だけだからさ、安心できるよ。」
そう思ってくれるのは嬉しいが、ひとつ疑問に思ったことがある。
「俺以外に仲良い人いないの?」
「うん。実は僕、ちょっと遠いところから引っ越して来たから、仲良い人いないんだよね。それに友達作るの苦手だから…。」
何となく分かる気がする。
俺が最初に話しかけた時も少し動揺してたし。
「でもさっきも言ったけど、誠が友達になってくれて本当に良かったよ。正直嬉しい。」
まさかそこまで彼の気持ちを支えていたとは…。
まぁ誰かのためになっているのなら何だっていいか。
「ならいいけど。そういえば最初の教室ってどこだっけ?」
「あ、ちょっと待って。荷物置いてから見てみるよ。」
と気づけばもう自分たちの教室に着いていた。
俺たちは机に向かい、鞄を置くと零央は紙を1枚取り出した。
「えっと…、誠は主力属性ってなんだっけ?」
「あぁ言ってなかったっけ。氷だよ。」
「第2属性って珍しいんだよね。それで氷は…1-6だって。土属性は1-3か。
次は風属性っと…、1-4だ。」
全部教室棟で良かった。別の校舎棟に行く場合って多少時間かかるからな…。
「それにしても魔法科ってどんな風に勉強するんだろう?気になるなぁ。」
「魔術って言ってもどうやって使うか分からないしな…。」
「あ、誠は『魔術』て言うんだね。」
そうか、別に国でこう言えって定められてないから人によって違うこともあるのか。
「ああ。昔すっごくハマってた小説にそう書いてあったから癖になっちゃって。」
「へぇ〜。じゃあさ、誠はどんな魔術師になりたいの?」
どうやら零央は魔術師を希望しているらしい。
実際に調べたわけじゃないけど、基本的には魔術学校に入る人は魔術師、もとい魔法師になりたい人が多いと思う。
「あぁ…、俺は魔術師じゃなくて、魔術騎士を目指してるんだ。剣なら魔術を習わなくても扱えるからさ。」
そう、小さかった俺は魔術の使い方なんて知るわけない。
だから出来たのは剣を振ることだけだった。
「えっ、体術あんなに強いのに剣をメインにしてるの!?凄いね…。あ、じゃあ誠は何を目標にしてるの?」
目標。
それを聞いた時、自分の心が強ばるのが分かった。
目標と呼べるものかは分からない。
むしろ生きがいと言った方が正しいかもしれない。
「…俺の目標、というか生きがいは…魔——」
キーンという音を聞いた瞬間、軽く俯いていた顔をスピーカーへ向けて上げた。
「あ、チャイムなっちゃったね。座ろ座ろ。」
…少し、覚悟が掻き消されたような気がした。
もちろん、そんなことはないのだが。
まだ1歩踏み出しただけだ、この学校で学んで、必ず奴を…。
初の魔術の授業より、俺は自身の覚悟を再び魂に刻んでいた。