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私のおっさん

作者: 橘

「俺はもうおっさんなんだよ」

と君は言った。


そんなことないよと言う

お世辞は言わなかった。

世間一般から見たら確かにあなたは

紛うことなきおっさんだと思う。


でもそんなことは関係なくて、

あなたというおっさんを作り上げてきた

時間もこの世界も全て愛おしい。

そう思える。



「君になんのメリットもないよ」


メリットとはなんだろうか。

君と一緒にいることに

メリットなど必要なのだろうか。

この世界ではみんな全てのことに

意味を求めたがる。

どうして?なんで?

本当にその答えは必要なのだろうか。

全ての行動に意味はあるのだろうか。

ほんとにそれは解き明かさなきゃいけないもの?



「君とは釣り合わないよ」


天秤が釣り合ってないといけないなんて

誰が決めたのだろうか、

見た目が良いかどうかなんて

なんの関係があるのだろう。

誰のための基準なの?


「俺じゃ君を幸せに出来ない」


幸せってなんだろうって思うこともあるけど

少なくともあなたと一緒で

幸せを感じなかったことは無い。

それはあなたが決める事じゃない。

幸せかどうかは自分で決める。

自分の心次第でしょう?



「俺より君にはもっといい人がいるよ」


じゃあ今すぐ教えてよ、

今目の前にいるあなた以外知らないよ。

いい人ってあなたより何が『いい人』だと言うのか

今すぐ教えて欲しい。

あなたが一番いい人だから言っているのに。



「多分君より先に死んでしまうよ」


生きている限り人はいつか死ぬよ。

君が人じゃないのなら話は別だけど。

それが早いか遅いかの違いだよ。

もしかしたら逆に自分が明日死ぬかもしれない。

そんなの誰にも分からないし、

たいした問題じゃない。



「こんな俺でも?」

そう言って彼は義足を外した。


椅子に座ったまま

少し震えているあなたをぎゅっと抱きしめ

深く頷いた。


そんな君でも、どんな君でも、

あなただから好きなんだって

いい加減わかってよ。


現実的に考えたら

君が言ったみたいなことや

様々な問題に突きあたることも

これから実際あると思う。

だけど、君となら一緒に

乗り越えたいと思えるから。



「ありがとう。」

絞り出すようにあなたはそう言うと

あなたははぎゅっとこちらの手を握って、

そのままそれを自らの額にあて、

静かに涙を流した。


あなたは大切な私だけの愛すべきおっさん。


あえて、最後の最後にしか

主人公の一人称はいれていません。

主人公は現実には一言も喋っていません。

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