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その1・現状把握

完結まで頑張りたいと思います。

お付き合いいただける方、よろしくお願いします。


 気が付いたら森の中だった。

 前後の記憶は定かではない。


 まるで異世界に転移してしまったかのようだ。


 一番にそう思いつき、苦笑が漏れた。

 それは流石に、小説の読み過ぎだ。


 いつの間にか居る森で、いつの間にか座りこんでいたので立ち上がる。

 ついでに、顔にかかった髪を慣れた動作で耳にかける。


 ……え? 青白い?


 青白いと言えば、顔色を表現したりもするだろう。しかし、この場に鏡のようなものは無い。

 自分で自分の表情を見ることは出来ない。

 ならば、青白いのは顔色ではない。


 見えた物は、髪。髪の毛。

 髪の毛が青白いなんて、どんな表現だというのだろう。

 まぁ、黒髪もいずれ白髪なる時が来る。

 そういうことだろう。


「……え!?」


 そんなことはないと思う!

 いくら記憶が微妙だと言っても、それほどの年齢だった覚えは無い!

 しかも、白じゃなくて、青白い!


 これは、おかしいよね!?


 耳に掛けた髪をつまんで視界に入るようにする。

 やっぱり、青白い。間違いない。


 念のために引っ張ると、痛い。地毛だ。ウィッグじゃない。


 これは、来たんじゃないか?


「私の時代が来たようじゃないか!!」


 抑えきれない高笑いをしながら、森を走り出した。


 ……どこに向かって? どこだろうね?





 ハイテンションで走ってたどり着いたのは、湖だった。

 澄んだ水は、鏡のように姿を映す。


 緊張しながら、その水を覗き込む。

 そこに映るのは……。


「なにこれ、すごいイケメン……。」


 青白いというよりもアイスブルーといった表現が似合いのサラサラの髪に、鮮やかなアメジストの瞳。全体のパーツがバランスよく乗った綺麗な青年だった。


「私の好み、ど真ん中……。」


 私の理想を絵に書いたようなイケメン。好み過ぎて、見ているだけでうっとりする。


 ……ただ、そのイケメンは両手で口元を押さえていて、こちらに熱っぽい視線を向けていた。


 仕草が妙に女性っぽい。

 実は、オネエさんなのでは? そう思い、少し迷いが生じる。

 すると、そのイケメンもちょっと困ったように眉を下げた。


 それはそうだ。だって、これは水鏡に映った自分。

 つまり、私。


「ああ、物憂げな表情もイイ……!!」


 くひひと笑みを浮かべれば、水鏡に映る微笑むイケメン。

 流石イケメンだけあって、どんな表情でもイケメンだ。


「……イケメンならば、それで良し。」


 オネエさんでも、一人で百面相をしている状況であるとしても。

 多少の言動が怪しくても、イケメン補正で許さる。

 一人、頷いて納得する。


 この配色の外見から、異世界に居ることを確信した。

 フィクションの世界がノンフィクションになった全能感。


「そう、つまりは選ばれた私! イケメンの私! 私の時代がキターーー!!!」


 ガッツポーズをして、その場で飛び跳ね、喜びを奇声で表現する。


 選ばれたとか、私の時代がどんなものだとかは知らない。雰囲気だ。

 でも、大丈夫。イケメンだから。

 何をしてもイケメンだから良し。……たぶん。






 一時的な大興奮が過ぎ去り、ふと気付く。


 あれ? 性別変わってるけど、トイレとかどうするの? 私、一人で出来る?

 心配なら誰かに見ててもらう……って、どんな変態!?

 このイケメンが変態過ぎる! 私だけどね!


 その不安はすぐに解消された。

 この体の記憶を知ることができた。


 てっきり異世界転移でイケメンになって転移したものだと思いきや、幼少期から青年になるまでの記憶がバッチリある。テレビで見るような他人事な記憶だったけど。

 

 つまり、異世界転移でこの体の持ち主を押しのけて私が入った可能性がある。

 または、異世界転生していたけど前世である私の記憶がよみがえった瞬間に、今世での人格が押しつぶされたとか。


 ……細かいこと、気にしない。


 それよりも、大事な事。

 それはこのイケメンボディの面倒を私が見ていくという事だ。


 他人事のように知った記憶は、この好みど真ん中のイケメンが自分であるという実感が薄い。

 だから、この体を好きにしていいと言われると……ね?

 

 今まで私が出来なかった夢を叶えることも出来るはずだ。

 そう、好みのイケメンを彼氏にして、私の初めてを捧げることを……。


「って、私がそのイケメンになってるぅぅーー!? イケメンの体好きに出来ても意味ないー!?」


 ナニをどうして、どうしたかったのか言うまでもない。

 ただ、夢は叶わなかった。そういう事だ。



 ―――これくらいで私が諦めると思わないでね?



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