これが私の始まり
「・・・・・どこだここ」
目を開けると白い天井が広がっていた
ベッドの上みたい・・
・・・・これアニメとかでも、よくあるやつだな
そういえばあの後・・
確か大事な決断して・・そのあとは・・
「・・・・貴様、起きているか?」
声の発信源を見るとそこには、リリカが俺と同じようにしてベッドに寝ていた
左腕の傷は包帯で巻かれており、傷の緊急処置は行ったようだ・・
「ああ起きているよ、・・ここは?」
「ここはアルデシカ帝国の療院所だ、貴様ケロッとしておったが背中に刺し傷があったな・・それで私と一緒にここで寝ているというわけだ」
「そ、そうか」
やはりあの通り魔に刺された傷は本物だったのか・・
俺はなぜこの世界に来たのか?
なぞが深まるばかりだ・・
「・・・貴様、シロニシっといったな・・」
「はい」
「・・・・なぜ?アルデシカ帝国の兵士になりたいと私に言ったのだ?」
「それは・・」
なぜかと言われてもな・・
自分の生命の安全を確保したいし・・・兵士になるからには安全とは言えないけど・・
でも・・・・・ノリトの地獄絵図を見て・・
一人でも助けたいと思った
一人でも生きてほしいと思った
・・前世が物騒な死に方だった俺・・
生があるからには死があるというが、人ならせめて最後の最後まで生きてほしい
努力も何も報われなかった俺だ・・
ここで我がまま言っても・・いいだろうよ
「・・・・・・・」
「・・・やはり、ノリトの光景を見て思ったのか?」
そう言い俺は頷くと、彼女は笑った
昔のことを思い出すように・・
「・・何がおかしんだ?」
「いやな、・・・私もそういう理由で兵士になったのだよ・・」
私は幼いころに戦争の被害に会い兵士を志したと、とても真剣な顔つきで言った
私は幼いころから親の手伝いをしていた・・
「お母さん~♪今日は何を取ればいいの~♪」
私の親は農家をしていた
母は優しくも時には厳しい人だった、父は無言な方であまり喋らなかったが優しい人だった
決して裕福ではないが、しかし幸せな家庭だった
その日起こった出来事
その日悲しかったこと
その日幸せだったこと
毎日が幸せだった
しかし幸せや平和とは一時的なものだと知る・・
事件が起きたのは朝だった、野菜がなっている山に朝早く出発するところだった
「ん~・・・お母さん、お父さん・・?もういくのぉ~?・・」
「そうよ、リリちゃんはお留守番しててね?」
今日は旬の野菜がとってもなっている時期ではあるが
その野菜は山にあり、子供では到底採取不可能な野菜であった
「むぅー、リリカもいきたぁいー!」
「もうリリカは8歳でしょ?大丈夫♪」
私も行きたい!と思っていたが・・
まぁ断られた・・
「むー・・わかった・・」
「お願いね♪それじゃ行ってくるね♪」
「それじゃ・・」
「いってらっしゃーい♪」
・・・・・・・それが最後に聞いた母の声だった・・
それから小一時間くらい過ぎたころだろうか?
私は野菜を洗っていた
「♪~、♪~」
ゴシゴシ
用心深く、野菜を傷つけないように汚れを取る
最後の野菜に手を付けようとしたとき・・
バタンッ
「はぁはぁはぁ・・」
父が息を切らしながらドアを豪快に開けた・・
無言な父がこんな行為をしたことがないので、私はびっくりした
しかし、父の姿を見た私は驚愕した
父の右腕がなくなっていたのだ・・
赤く染まった服・・
それが父の姿だった
「リリカ!今すぐここから逃げるぞ!!」
何かから逃げている様子・・
突然私にそう言い、父は私を担ぎ上げて走った・・
家から町からも離れ、森の中を走った
「お、お父さん!いきなりどうしたの!?その腕は!?お母さんは?どこなの!?」
「・・・ッ・・少し黙っていてくれ・・」
小声で父はそういった
「ねえ!お父さん!・・・」
「黙っていてくれ!!」
私はここまで大声を出した父を見たことがない・・
その剣幕で怒鳴られた私を見て父は足を止め・・
「・・・・・すまない・・・焦っていた」
「・・・・どうしたの?お父さん?」
ツバルが攻め込んできた、と父は言った
私はそのころ世界の仕組みはそこまで深く知っていなかったが、『ツバルという国は悪い国だ』と浅い知識でしか、ツバルのことを知らなかった
今のツバルも弱い国を踏破し、自国のためにしか戦争をしない・・そういう国だ
それでお父さんは傷つけられ、腕がなくなった・・
しかし、いつもにこやかで優しいお母さんは?
「・・・・っ・・お母さんは・・つ、ツバルに・・・っ・・」
父は泣き崩れた
私は父の泣く姿、弱音を吐く姿を一生として、見たことがないのだ・・
まさかと思い、父に聞いてみる・・
「お、お母さんは?・・」
「ツ、ツバルに・・・・っ殺された!・・」
その言葉に私は、一瞬真っ白になった・・
何を?お母さんが?ツバルに?
殺された?
「ツバルの兵士が母を・・・お母さんを・・銃で殺した・・見てしまったんだ・・」
首を持ち上げ、命の最後まで抗う母を・・
ツバルの兵士は頭にピストルを留め、殺したのだ
母、という存在をこの世から消し去ったのだ・・
と父が言う
その言葉が私に釘を刺すように刺さる
「お、お父さんはそこからツバルの兵士に追われ、腕を取られ、命さながらに逃げてきたんだ・・」
お、お母さんが?
嘘だ・・
嘘だ・・・・
嘘だ・・・・・・・・・
私が現実を否定していると・・
パァン!!
・・・・・父が倒れた
突然のこと
父の額に穴が開く
頭から血を流し、人形のように崩れ落ちた
私の思考回路は・・壊れた・・
・・・お父さん?お母さん?
死んだの?
なんで?
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
頭が真っ白な私に向けられたのが
銃
その銃口からは火薬の匂いがし、
その兵士の笑顔は狂うようにあざ笑い、
引き金に手を付ける
ああ、私も死ぬんだな・・
パァーン!!
私の顔にたくさんの血が付いた
視界が真っ黒になった
意識がなくなった
「・・・っは!」
気が付くと真っ白な天井があった・・
あれ?私生きている?
手を握ると伝わる圧迫さ
胸に手を当て、伝わる鼓動
生きている・・
困惑している私に声をかけてきた・・
「お、起きたかい?」
そこには、眼鏡をかけ怠けていそうな青年がいた
そう、これが私、リリカ・エーレットの始まり
ねみい