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隣の席の君は。  作者: 平 五月
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君の席の隣は。

 全員がくじを引き終わってクラス中からどこの席だったとか、誰のとなりだったとかという声が聞こえてくる。


 僕は窓際の一番後ろの席というなかなかいい位置を引き当てることができたが、自分の席のことよりも、小田さんがどの席になったかの方が気になっていた。


 くじを引きに終わったあとも読書を続ける彼女に、僕はできる限り自然に声をかけてみた。


「小田さん、くじの結果はどうだった?」


 すると小田さんはこちらを向きながら、そっと本を閉じて言った。


「私は変わらず、また一番前の席だったわ。相川くんの方はどうだった?」


 小田さんとまた隣の席になるという奇跡は、やはり起こらなかったようだ。


「そっか、それは残念だったね。僕は今回は一番後ろの席になれたよ。」


 小田さんの隣になれなかった時点で、僕のくじの結果も残念なのだが努めて明るい声で自分の結果を口にする。


「あら、それはおめでとう。でも、少し残念だわ。相川くんと離れてしまうのは。本の話をするのは楽しかったから」


 僕はドキリと心臓が高鳴るのを感じた。小田さんも僕との会話を楽しんでくれていたのか。


「おぉ、相川の席って俺の後ろじゃん!喜べ、しばらくはまだ騒がしくしてやるよ!」


 僕のくじの番号を盗み見た宇野田が話に割って入ってきた。まったく空気の読めない奴だ。


「お前の後ろなんて嬉しくねーよ。さっさと行っちまえ。」


 僕がそう言うと、ニヤニヤしながら荷物を持って移動を始めた。


 ほかのクラスの連中もぼちぼち移動を始めたので、僕も荷物をまとめ始める。


 先に荷物をまとめ終わった小田さんがふと僕に向かってあの微笑を浮かべた。


 そして、そっとつぶやいた。



「夢の中では、隣の席のままだといいわね。」



 一言そう言うと荷物を持って、新しい席へと移動して行ってしまった。


 しばらくの間、僕はあっけにとられてしまった。


 だが、そのあとに、僕の心は嬉しさで満たされた。


 『僕は小田さんと夢の中で、確かに語り合っていたのだ。』


その事実が心の底から嬉しかった。


舞い上がった気持ちで新しい席に移動していると、先に移動していた宇野田が不思議そうな顔で僕を見ていた。


「どうかしたか?」


僕が尋ねると、宇野田は少し顔をにやつかせながら、


「いやあ、小田さんと席が離れちまったのに随分嬉しそうな顔してるから、何かあったのかなぁと思って」


それを聞いて僕は自分の顔が熱くなるのを感じた。やっぱり宇野田は変に察しがいいのだ。


「別になんでもねーよ」


そっぽを向いて、取り繕ってみるが、宇野田は更に顔をにやつかせて


「相川、顔赤いぞ?」


と、言ってきたが、僕はもうそれ以上何も答えずに新しい席へと荷物を置いて席に着いた。


その夜、僕は願うような気持ちで眠りについた。



『僕の隣の席が、君でありますように。』



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