夢の中の君。
「おはよう、小田さん。今日は何を読んでるの?」
僕はいつものように隣の席で本を読んでいるいかにも大人しそうな女の子に朝の挨拶をする。
「おはよう、相川くん。今日は昨日のミステリーをまた初めから読んでいるの。結末を知ってから読むと色々と新しい発見があるじゃない?」
彼女もいつものように挨拶をし、僕の他愛もない会話に応じてくれた。
「確かにそうかもね。まぁ僕は初めから結末を見て読み始めるタイプだけど」
そう言うと明らかに彼女の顔つきが変わった。どうやら僕の読み方がお気に召さなかったらしい。
「あらそうなの。ミステリーは自分で結末を考えるのが面白いと思うのだけど。別に人それぞれ読み方があるのは認めるけれど、最初から考えることを放棄するような読み方私は絶対にしないわ」
彼女はなにか僕が気に入らないことを言うと見た目に似合わない口調で遠まわしな嫌みを言ってくる。
そういう時、僕は彼女の機嫌をこれ以上損ねないように彼女のお気に召すであろう返答をする。
「さいですか。なら次ミステリーを読むときは僕も結末を考えながらじっくり読むことにするよ」
彼女は満足気な微笑を浮かべて、
「是非、そうするべきよ」
その彼女の一言とともに視界がブラックアウトしていく。
そして耳元でセットしていた目覚ましのアラームを聞く。
「またこの夢か・・・。」