迷い
「何とか助かった……」
命を懸けて戦うことがこんな疲れるとは彼自身も驚きだった。
「そういえばあなた達は何者なんですか? 能力の事も知ってる様子でしたし」
「私の名前は藤崎綾音よ、高校三年あなたの一個上よ」
「俺の名前は秋雨流星だ、よろしくな、俺も藤崎と学年同じだから」
ここまでで分かったことが一つだけあった。
それはこちらの情報は一通り知られていること。
「担当直入に言うわね。あなたは私達の組織、NTK(能力特別機動隊)に入りなさい」
「悪いな。俺はあんな非日常が嫌なんだ、だから入ることはできない」
正直、あの《炎》の能力者を許すことはできなかったのだが、これ以上自分に関わった人に迷惑をかけることはできなかった。
「もし再び同じような事件が起きたら? それを解決するための能力があなたにあるとしたらどうする? 」
彼は再び迷う。
その選択が正しいのはわかっているのだが。
「少し考えさせてください」
「いいわ、また後日訪れるからその時ね」
「はい……」
ーーーー
「一体どうすればいいんだよ」
一人誰もいない部屋の中、悠人は自問自答していた。
本当はわかっている。
参加した方がいい結果になるんだと。
だが、妹を巻き込むことになってしまうのは俺自身耐えることができないのだ。
「ん……何してるのお兄」
「お前こんな時間まで起きてたのか、珍しいな」
優菜はあの事件以来、日常的に起きている時間が少なくなっていた。
精神的なショックが原因らしい。
「だってお兄……悩んでたでしょ」
「なんで、わかるんだ? 」
「お兄が夢で出てきたんだ、何かに悩んでるから……」
なるほどな、とうなづき彼女の言葉を聞いた悠人は一つの決心を固めていた。
「お前に心配させる環境を作らないように俺は戦うよ」
「頑張ってお兄……」
優菜を寝室まで送り、寝るまで面倒を見てあげていた。
ーーーー
次の日の朝、中央公園であの二人と会うことになっていた。
中央公園は妙な静けさがあり、あの戦いが脳裏によぎる。
「決意は固まった? 」
気付いた時、後ろには藤崎先輩と秋雨先輩がおりうちの制服を着ていた。
「先輩達ってうちの学校だったんすか⁉︎ 」
「ああそうだよ、知らなかったのか? 」
上の学年と関わりを持つことが少なかったからか悠人が無知だったのか知らなかったがそんなことはどうでもよかった。
「んで、どうする? 」
「はい、俺はあんな卑劣な能力者を許すことができない。だから、協力させてもらいます」
「まああなたがこの選択を選ぶことはわかってたけどね」
「ていうか何で俺らが戦ってるのがわかったんですか? 」
もっとも気になっていたことで、正直彼女達には秘密が多すぎる。
「いいわ、それだけじゃなく私達が何をしようとしているか全て話すわ」