全力
悠人の前に白い壁ができ、一瞬で火龍を消し去ったのだ。
「何が起きているんだ、お前まさか能力者なのか? 」
鎌田悠人には確かに思い当たる節はあった。
自分自身に何か人類が知り得ない物体がいることは既知のことだったが、その能力には全く身に覚えのないことだったのだ。
「能力者って何のことだ? 」
何のことは全く理解する事はできなかったが、この能力は敵の脅威になり得ることは悠人には理解できた。
「《盾》か厄介だな、ここで消してやる」
「ちょっと待ちなさい 、いたわここよ 」
後ろを振り返ると、謎の三人組がいた。
「自己紹介は後、あっちの方は覚醒状態にあるわね」
「姉さんどうします? 」
「とりあえず待機して」
少年だけが一人不満気な顔をしていた。
「チッ、まあいい、お前ら後悔しても知らねえからな」
すると、少年の眼は赤く染まって身体がどんどんでかくなっていく。
五メートルもある少年の大きさは最早人間の域を超えていた。
「何だよあれ……⁉︎」
人間離れした火を出すだけではなく、体格操作までできるのを目の前にしてこれが現実か彼にはわからなくなってしまっていた。
「まずいわね、ねえ君。防ぐ以外に何か出来ないの? 」
「わからないです、能力もついさっきまで知らなかったので」
「ごちゃごちゃうるせえよ! くたばれ豪炎柱」
少年の手には先程とか比にならないくらいの火が完成されており、まるで豪炎とでも言うのだろうか、明らかに防ぎきることができない炎が自分達に向かってくる。
「あなたの想いにその能力は応えるわ! さあ! 」
何かを守りたいという決意をもう鎌田悠人はしている。
豪炎柱は悠人の《盾》を貫こうとしていたが、その時、悠人の盾がさらに大きくなり、少年の炎をかき消す。
「まだだ、俺は負けるわけにはいかないんだァァ‼︎ 」
少年が先程放った炎の倍の大きさの豪炎が飛んでくる。
ーー君はまだ死ぬ事はできない。さあ解放しろ、行きたいという欲求の全てを……
脳内に何者かの声が聞こえる。
確かに生きたい、生きてみんなを守りたいという気持ちが悠人にはあった。
ーーその意志を確かに受け取った。
すると悠人の《盾》が光る。
「うおおおおッッッッッ‼︎ 絶対反転」
彼の盾は少年の炎を吸い取り、それを返した。
「何故だ、何故俺が負ける、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ‼︎ 」
こうして、鎌田悠人の能力者として初めての戦いは終わったのだった。
しかし、彼は気づいていない。
これから始まる前途多難な戦いのことには……