覚醒
黙々とボールを投げていておかしいことに悠人は気づく。
待ち合わせをしている彼女が来ないことだ。
あれからかなりの時間が経っていたのに連絡の一つも寄越さないのは流石におかしいと思い、電話を掛けたが、一向に反応は無い。
ーー何があったのだろうか。
だが、悠人はどうする事も出来なかった、連絡も無しに動くのは入れ違いが起こると考えていたからだ。
夕暮れになって、少しずつ暗くなっている。
すると、携帯にメールが届く。
『お前の連れは人質に取った。返して欲しければ二〇時までに中央公園まで来い』
悠人は知らせを見て直ぐに走った。
絶対死なせてたまるか、と心の中で呟きながら。
中央公園は神森町の中では一番広いと言われてる公園でその広大な土地は一日ではとても回りきることはできない、それゆえに休日などは家族連れなどがよく訪れたりする。
だが、夜になると一変して人気が少なくなるのが特徴でもある。
悠人は到着して、時間を確認にすると一九時五〇分と表示されていた。
どうにかして辿り着いた悠人は携帯を確認すると、再びメールが届いていた。
『中央公園に到着したのは確認した。後は奥の広場まで来い。警察を呼ぶ素振りを見せた瞬間、人質の命は無いと思え』
ーー何で関係無い人を巻き込むんだ。
悠人の正義感は不安と恐怖を打ち消し、立ち向かうという行動を選択させた。
広場に着くと、一人の少年と日野山さんがいた。
「日野山さん! 」
日野山さんは気絶しているが、幸いなことに無事だった。
少年の方は不適な笑みを浮かべている。
「お前は何が目的なんだ? 」
「単純だよ。力を行使したいそれだけだ」
次の瞬間、少年の腕が光り炎を纏っていた。
「何なんだよこれ……」
「もう少しいたぶってもよかったけど、まあいいや、無能な人間さん。さようなら、火龍! 」
少年の腕に纏っていた炎が龍のような形状になり、彼の方まで向かってきている。
ーーこんな所で終わるのか、俺は。
「消し炭になれ」
だが、その瞬間鎌田悠人の《サークル》は覚醒した。