昔から今
鎌田悠人はこの公園でただひたすらボールを投げるのが、好きだった。
ただひたすら振りかぶって投げる。
投げる。
投げる。
その行為によってどれだけ嫌な出来事を忘れさせてもらえたのかはわからないが、彼の中ではある程度忘れることができていた。
だが、人は誰だって忘れることができないこともある。
他の事は忘れることができる。
家族以外は……
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「お兄ちゃん、おかえり! 」
妹の鎌田優菜はいつも、家族と悠人の塾を待ってくれていた。
事件当日、その声を聞いた悠人は返事をして、自室に入ろうとした時、悲鳴が聞こえた。
だが、悠人は躊躇してしまう。
ーーここで出ていって何か出来るのか。
その一瞬の躊躇が手遅れの原因だった。
下に降りた悠人を待っていたのは余りにも惨い状態だった。
両親は何者かに殴られて、血だらけになっていて、妹は幸い気を失っていた。
リビングは荒されており、窓は割れて、破片が飛び散っている。
悠人は慌てて救急車を呼んだが、殴られた段階で即死だったらしい。
最早、泣くことしか出来なかった彼は誓った。
ーー妹だけは必ず俺自身で守る
もう誰も死なせやしないと
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誰でもよかった。
辺りはすっかり真っ暗になっており、柳田にとっては非常に都合が良かった。
ただ能力を使いたかった。
周りの物を燃やしても満足出来なかった柳田は、人にその能力を行使することにする。
一人の少女を見つけたのだ。
ーーお前でいい、俺を満たせ。
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ⁉︎」
ただ能力を使って殺すのは勿体無いと柳田は感じていた。
彼女の携帯を調べると、男性とメールした履歴が残っていた。
ーーこいつも利用するか。
結局、公園に彼女が着くことはなかった。