日常
学校に着くともう既に何人かいて、いつものように騒いでいた。
「あれ、今日は連れがいるようで」
彼の名前は天草紫龍。
少年にとっては、いい相談相手になっている友人だ。
「いや、朝たまたま同じ道で会っただけだよ」
「ほうほう、まあ詳しい話こっちでな」
そう言われて、悠人は教室に連れて行かれた。
「またね、日野山さん 」
彼女は一瞬寂しそうな顔をしていたが、それに悠人は気付くことはできない。
いつものように授業が始まり、そして終わる。
何気ない日常だ。
いつまで続くかわからない日常の大切さをつい人は忘れてしまう。
悠人もそうだった。
子供の頃に両親を殺されても日常に縋ってしまうのだ。
いやむしろそんな非日常な出来事が起こってしまったからだろう。
やがて放課後になり帰宅しようとして下駄箱を開けようとしていた悠人は誰かに声をかけられた。
「鎌田君よかったら帰らない? 」
なぜ俺と?という疑問は彼女の笑顔に打ち消された。
(まあこんな機会もそうそうないからな……)
「別にいいけど」
だが、悠人には後に起こる出来事を知るよしもなかったのだった。