偶然
謎の物体は後に《サークル》と呼ばれた。
何故自分が選ばれたのかまるで自覚は無かったが、この物体を身体に結合することになった。
そして、両親はその時期何者かに殺された。
悔しいが原因はわかっていない。
だが、二度あんな思いはしたくない。
子供二人は泣き叫ぶ以外にどうすることもできなかった。
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十月十四日
今日も鎌田悠人は一人で学校に通う。
神森町と呼ばれるこの町は東京の中心部にあり、都市部森林計画によって作られた町だ。
登下校の道には比較的自然が多く毎回新しい発見があり、飽きることはない。
彼は学校生活には満足している。
同級生は優しいし、配慮をしてくれているのか両親の話をしてこないのも自分自身にとってはありがたいことだった。
だが、そんな眩しい彼等を見ているとより一層自分自身は空虚な存在なんだと自覚する。
彼等の行為にどこか素直になれない自分がいて、それが自分を蝕んでいるような気がした。
ーー本当は誰も受け入れたくないんだろ。
違う。決してそんなことないはず。
心の中では否定したが、同時に問いかけてくる。
ーー結局、常識なんてあり得ない。
今否定している悠人の気持ちは明日には変わっているかもしれない。
現実にあり得ないことはないのだ、起こり得る事象は何だって起きる。
「お前は誰なんだ……」
その問いかけに返事は無かった。
仕方なく、悠人は再び歩き始めた。
川沿いの土手には毎日何人か朝ランニングしている人がいる。
不思議なことにこの道を使っていて会った生徒がいないのがこの道を使っている理由でもある。
今日もまた、昨日と同じ一日が始まる。
この道を使って一年が経とうとしていた。
高二になっても何も変わらない日々。
もう少しいつもみたいに散策してから行こうとしたが、足を止めなければならなかった。
「あれ、鎌田君だよね? 」
後ろを振り返るとそこには同じクラスの日野山空音がいた。
「あ……おはよ日野山さん」
悠人は驚いていた。
この道でこの時間に通うクラスメイトがいたとは思いもよらなかったからだ。
「鎌田君ってこっちなんだ、知らなかったよー」
「この道には色んな発見があるからね……」
「ふうん、まあこんなところで立ち話もなんだから学校行こ? 」
日野山空音は誰が見ても可愛いと答える、学年一の美少女だ。
スラリとした脚にはつい魅力を感じてしまう。
「どうしたの? 」
いやなんでもない、と言い学校に向かうことにした。