第8話 交渉
ネイビーシールズパイレーツの方も更新いたします。
1年くらい間を開けて申し訳ございませんでした
一人救えた。だがそれだけでいい。誰も救えないよりかはマシだ。SEALs時代にそう言われた事がある。そして今日、たった一人を救った。その通りに。
彼女は今医務室でぐっすりと眠っている。彼女が精神ショックを受けている可能性があったからしばらくは安静にしておくようにとメディバックに言われ、今はイル・サン・トゥルーガ島の町をドレイクに引きずり回されている。
あの時は島を見ている余裕は無かったが、改めて見回してみるとイル・サン・トゥルーガ島は前世のエーゲ海の様な蒼い海に囲まれ白い家が海岸に段の様に立ち並んでいる。さしずめサントリーニ島の様な場所だ。
「お前さんが持っている様な銃を使った連中が客船を襲撃して皆殺し?」
僕はメアリー・リードの証言をドレイクへと報告する。ドレイクは思い当たる節はないと首を振った。
「それに右舷に穿たれた何千発もの弾痕。どう見たって只者の仕業じゃねえ。銃を持った連中が高度な技術で組織戦をやってるってのは間違い無いな」
「でもそれはあくまで現代兵器を使いこなせる事が何よりの条件です。ジュリアンだって渡しただけじゃなくてある程度の事は教えましたし」
現代兵器を操るには高度な技術が必要とされる。それこそ持って、撃ってだけでは通用しない。高度なデータリンクで陸海空と連携した作戦を行う。それが現代戦のあり方だ。それを僕はある程度まで使っているのだが敵はどうやら現代戦の技術をフル活用しているらしい。
「つまり使える奴ら、それもプロの域に達した連中があの客船を襲撃した……」
音も無く乗客へ近づき、皆殺しに出来る人間はそうそういるものではない。僕だってそんな事は出来るかどうかは分からない。もし現代兵器を用いてあの客船を襲撃したとすれば、次に火の粉がかかるのは恐らく僕らだろう。
「だからお前さんに会わせたい奴がいる。ここだ」
島の港町の一角に連れられた場所はいたって普通の家。ドレイクはというと足でドアを蹴りつけて強引にノック。家の主が慌ててドアを開け放つ。
「これはドレイク殿。遅れて誠に申し訳ございませんでした!」
「時間が無い。レオナルド、家に入るぞ」
僕は申し訳無さそうに軽く会釈すると苦笑いが返ってきた。まあ向こうの色情魔のことだろう。
僕はリビングの椅子に腰かける。家の主は対面のソファへ座りこんだ。
容姿は中々に端正な顔立ちだが仕事帰りにやつれたエンジニアの様な目の下にあるくまが彼の美貌を台無しにしている。こんな人に何故合わせたのだろうか。
そんな疑問を顔に浮かべるとレオナルドはまたもや営業スマイルを浮かべて見せる。
正直やめてほしいところです。見ていていたたまれなくなります。
「時間が無い。レオナルド、お前さんに作ってほしいものがある」
「何でしょう?私が作れるものと言えば奇抜なものばかりですが」
「こいつが使う為のボートを作ってほしい。武装マシマシでな」
ドレイク船長が言うには自分の帆船以外に機動力と火力を兼ね備えた船が欲しいとのことだった。船舶強襲や上陸支援用に後方から強力な火力を投射出来る船だそうだ。
要するにシールズの支援部隊として特殊舟艇部隊が使用するSOC-Rの様なボートだ。
「これから戦う相手は私たちの二手三手先を行く存在だ。いつ、どこからでも襲撃を掛けてくる」
「どんな相手でしょうかドレイク殿」
「僕が代わりに説明します」
僕はレオナルドに事の次第を話した。作戦機密に関わる事項は出来る限り秘匿し、自分が元々海軍の特殊部隊所属である事、そして今度戦う敵は恐らく僕と同等の相手であろうという事を話した。妙だったのがレオナルドに話すたびにどんどん顔を曇らせていったという事。
僕の話を終えた後レオナルドは腕を組んでこう切り出した。
「そうか、成程ね。技術屋の私でも見逃すわけにはいかないなあ。何か策は無いものか」
「重火器を搭載したボートであればシールズの作戦行動の助けとなります。お願いできますか?」
SOC-Rがあれば大火力を以て敵を撃滅することは可能だ。ボートだから私掠船の後部に括っておけばいつでも出撃できる。まさに何でもありの兵器とも言えるだろう。
「う~ん。君が海軍の所属って事は分かるけどいかんせん重火力のボートとなるとちょっと難しいね。2週間あって出来ればいいやって思ってくれればいいけど」
2週間とは何だ2週間とは。突っ込みどころが多いぞ。
「事態がそこまで深刻化しないうちに何とかして反撃体制を整えたいのです」
僕の願いは切実だった。戦力が整わずに奇襲攻撃を受ければ被害は甚大なものになる。それこそ僕の身も無事では済まない。
「分かった。やってみよう」
「船に戻ろう。ここにはあと2週間くらい停泊する予定だから、時間はいくらでもある」
「そうですね。まだ時間ならあります」
焦る事では無い。2週間あれば恐らくSOC-Rを戦力化出来る。それまで待てばいい。それに僕には気がかりな事があった。メアリー・リードの事だ。彼女は医務室で横たわっているという話以来彼女をほったらかしにしてしまっているも同然だった。
「メアリーの下へ向かいます。船長はゆっくりお休みになられて下さい」
「お前年上が好みじゃなかったのか?」
ドレイクが燃料を投下しにかかる。僕は顔を赤らめながらも何とか沈黙を守り通す。
――確かに年上は好きですけど!おっぱい大きい人が好きですけど何か!?
あっ本音が出た。まだ心の中だ。大丈夫。
「彼女に聞かなきゃいけない事があるので……」
僕の険しい目つきにさすがのドレイクも察して押し黙る。
「そうか。まあ相手は怪我人だ。根掘り葉掘り聞こうとはするなよ。それと――」
「くれぐれも性欲を解放することは無い様に!」
最後まで軸がぶれない人だった。
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