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第4話 海賊稼業、始まります!

いよいよ戦闘シーンです。それではネイビーシールズ・パイレーツをどうぞ

チャンスというものは向こうからやってこない。こっちから向かわない限り手に入るモノでは無い。だがそれを手に入れる術を僕は手に入れた。


ヘッケラーアンドコックHK416とシグ・ザウエルP226ハンドガン、更に僕の使用していたAOR2の戦闘服に戦闘用ベスト、そしてヘルメット、更にはエンジン駆動のゴムボートまであの戸棚から出てきたのだ。神様に感謝するとしよう。神様、ドレイク様というところで装備の着装に移る。


着こなしていたおかげで肩や腰といった動く部分に干渉する様な事は無い。なら特に戦闘に問題はないだろう。ヘルメットはクレイ・プレジッション社が開発した空挺降下用の特殊部隊向けヘルメットだが割とマイナーな様で僕以外にこれを使っている人は見た事が無い。


因みに言えばこの戦闘服もクレイ・プレジッションが作り上げた代物であり僕ら特殊部隊にのみ支給されるオーダーメイドの高級品。だからと言って丁寧に扱っていた訳じゃない。


更にあの戸棚から顔を出したゴムボートも元々SEALsで乗りこなしていたものだ。というよりよくあんな戸棚にしまい込めていたものだと感心するが

船舶への強襲乗船ではこれ以上無く役に立つ。


「随分と変わった甲冑なんだな。アメリカはこんな恰好の兵士を戦わせているのか」


その海賊帽とロングコートを着込んだDカップの巨乳海賊が何を言いますかね。

とはいうもののあながち間違っちゃいないのも事実。キャプテン・ドレイクが派手な格好で戦果を挙げるのとは対照的に僕らは隠密に任務を果たすのが務めだった。

戦果を隠すなど彼女にとっては奇妙なことに思えるのだろう。


「僕はこれが一番、性質に合うんです」


「分からん奴だ。ま、キャビン・ボーイとしての腕だけじゃ惜しいものだな。こんなに仕事道具があるというのに使わないんじゃ勿体ないもいい所だ」


その時だった。僕らの海賊船からほど遠くないところから一隻の大型帆船が現れた。僕は船長室の窓辺に乗り出し船を確認する。大型のガレオン船だ。船体側面には大砲が何十門も装備されている。


「あれは……」


「サーペント王国の船だな。さては他の私掠船が避けるルートを通って来たって訳だ」


先程話に聞いたサーペント王国の帆船が姿を現した。

ドレイクはがっぽり金銀財宝香辛料をありったけ頂こうというつもりらしい。


「どうするんです?」


「あの船からがっぽり頂きたい所だが、こちとらあのハリネズミには近づきたくは無いな。強襲を掛けようとすれば大砲の砲門から言って乗り込む前に殲滅される」


ドレイクはいつの間にか自分の望遠鏡を掲げ、見える範囲の敵を偵察している。


僕はあの船舶への攻撃方法を思案する。僕の手元にはSEALsの装備がフルセット。海賊行為なんぞなんのそのだ。


エンジン搭載のゴムボートなら大型帆船の甲板から気づかれずに接近できる。

その隙に爆薬を使い船体を浸水させれば航行能力を損失させ、縄梯子を使い突入。

後は船舶強襲のやり方通りに事を運べば任務遂行はそう難しいものではない。

海賊を殺すために磨き上げた技術が海賊として戦う為に使われることになろうとは。


「なら僕が行きましょう。ボートを使い隠密行動であの船まで近づきます。後は船の大砲を無力化させた後にこちらの船を近づければたぶん何とかなります」


「分かった。こちらはあの船の1キロ南で戦闘態勢のまま待機しよう」


「分かりました」


「それじゃあ、始めようか」


ドレイクがコートを翻して甲板へと躍り出る。甲板では既に戦闘準備を終えた屈強な男たちが彼女の命令を心待ちにしている。


「いいか!?。サーペントの船は1隻、他の船舶は見当たらない。奴らに目に物を見せてやれ!」


「ウォォォォォォッ!!!」


ドレイクの命令に従順した男たちの咆哮が甲板に木霊する。


「だが、お前さんたちにはちょっとばかし見学して貰いたいんだ。こいつがどんなものか確かめて見たいんでね」


男たちが一同に水を打ったかのように静まり返る。当然かと言えば当然。戦闘を心待ちにしていた部下達からすればお預けを喰らった様なものだろう。


ドレイクの背後から僕はゴムボートを抱えて現れた。完全武装だが周囲からは怪訝な目線を向けられる。


「おいおい船長、こんなモズクっ子に戦闘を任せていいんですかぁ?」


うわ、腰抜けシューターの次に嫌なあだ名だなそれ。


「まあ聞け。こいつが最初に船を襲う。そんで船員をぶちのめしてからお前たちが突入する。問題はあるか?」


簡単な作戦だが彼らには不服な様だ。事実僕へブーイングが飛び交っている。


「なら、私を同行させて下さい。キャプテン・ドレイク」


凛とした声が甲板に木霊し、その声の主は男達をかき分けてドレイクの目の前へ踊り出る。


確かにその声によく似合う美貌だった。特徴的な金髪を銀の美しい髪留めで留めたポニーテール。キッと釣り上った双眸は歴戦の海賊の様だった。


「ジュリアンか。お前がこいつと行くって言うのか?別に悪い事とは思わんが、ウェルナーお前はどう思う?」


「僕も賛成です」


これには僕なりの理由がある。いずれ僕が海賊稼業としてやって行く為には恐らく一人では到底任務遂行は不可能になると判断しているからだ。


ボートの要員にしろ突入要員にしろ支援要員にしろ何にしろだ。ならば今名乗りを挙げたジュリアンを連れて行き、現代兵器の性能を見せつけていずれ彼女にも使わせようと考えているからだ。


「分かった。ジュリアン、戦闘中はこいつの指示に従え。それだけだ」


ドレイクはさして困惑する素振りも見せず快諾した。


「分かりました」







先ほどのゴタゴタで女海賊ジュリアンが僕のボートへ乗り込む事になった。今のところ乗客は一人。ボートに搭載した武器装備をもう一度確認する。


HK416とP226、強襲用装備として閃光手榴弾とブリーチング用の成型爆薬、後は船の横っ腹に大穴を空けるための5キロのC4爆薬。これだけあればこの世界の海兵はひとたまりも無いだろう。


「こんな粘土みたいな道具であの船の横っ腹を吹っ飛ばすのか?それに肩にかけてるのは銃か。随分と変わった形だな。お手並み拝見としよう」


ジュリアンが板状に加工されたC4を弄び、疑問を口にする。


「吹っ飛ばせるだけの威力はあります」


ボートを海へ降ろしエンジンを始動。波を蹴立てて目標へ進撃する。その姿は僕が思うのもあれだがソマリアの海賊の様だった。


――アデン湾の海賊を思い出す……


思い返せばSEALs時代が懐かしい。こんな形で乗船を図った海賊達を掃討して行くのが僕達の任務だった。それが今では逆の立場として、海賊として金銀財宝をありったけ頂く事となった。


だが、今は今だ。SEALs時代の思い出を振り払い、僕はボートの舵をぎゅっと握りしめ、ばれないようにゆっくりと船体の右側面へ回り込む。


「敵船舶に到達。ジュリアン!そこの粘土取って!」


C4じゃ通じない為仕方なく『粘土』と呼んだ。ジュリアンはきびきびとした動作で僕にC4を投げ渡す。投げ渡されたC4 を僕は慣れた手つきで船の横っ腹へ練りつけ、起爆用雷管をセット。これで船体下部へ浸水させる準備は整った。再びボートを操縦し船体の後方へ移動。乗船用のはしごを近くの手すりへ引っ掛ける。


「ジュリアン、よく聞いて下さい。僕らがはしごに登った後、あれを起爆します」


「どうするんだその後は?」


「強襲制圧です。出来る限り速く帆船の衛兵を無力化して財宝の位置を聞き出します。武器は何を持っています?」


「こいつだ」


そう言うとジュリアンは腰からフリントロック式の拳銃とカットラスを抜き、再びしまい込み、はしごを駆け上がっていく。僕もそれに続き、起爆準備を整える。はしごを登りきった所でHK416を体の前へと回し、起爆スイッチを2回握りしめる。


ズドォォォォォン!!


巨大な爆発音とともに水柱が噴き上がる。そして帆船はゆっくりと右側へ傾いていく。浸水が始まった証拠だ。それを皮切りに僕らは帆船甲板の後方部へ一気に躍り出る。


僕らの姿に驚いた衛兵に向け容赦なく5.56㎜弾を2発胸へと叩き込み、床へ蹴り倒す。異変に気が付きもう一人の衛兵が船室から飛び出してくる。


「はぁッ!?」


衛兵は僕の姿を見るなり、抱え持っていたマスケット銃を向けようとする。

しかし僕は彼よりも素早く胸に2発、頭に1発の銃弾をお見舞いし、衛兵は手すりから海面へ滑り落ちていった。


続いて混乱状態に陥っている甲板へ前進、3人の衛兵が僕らに気付きマスケット銃を構える。


しかし、彼らが引き金を引き絞るよりも速くHK416の引き金を引き絞り1人の衛兵の胸に2発、2人目には額に1発、3人目には腹部へ3発の弾丸を叩き込む。3人は糸が切れたかの様に甲板へと倒れ伏す。


「何て実力だ……」


僕の横で先ほどの一部始終を見ていたジュリアンは呆けたように息をついた。何しろ僕が撃ちまくっているせいで彼女の活躍が一向に来ないからとも言えるだろう。


「さて、お仕事、お仕事!」


いつもの調子で僕は順調に甲板を制圧していく。

落ちこぼれとはいってもNavySEALsの端くれだ。

素人に毛が生えた海賊に負けてはいられない。僕も海賊だけど。


「負けてられるか!」


ジュリアンも負けじとフリントロック式拳銃を抜き放ち衛兵へ発砲し、撃ち漏らした衛兵をカットラスで一掃した。


「よし、船内へ突入!」


制圧を終えた後に船内へと突入する為に爆薬を木製の扉へ張り付ける。


「くッ……!!」


脳裏にあの日の記憶が蘇る。ブリーチング後にソマリア海賊は捨て身の覚悟で手榴弾のピンを抜き、僕が死ぬはずだったあの時の事を。

ブンブンと頭を振り、記憶を追い払う。


――目の前の事だけに集中しろ!


ドアを爆破し、閃光手榴弾を投げ込む。刹那100万カンデラの閃光と180デシベルの爆音が船内へ響き渡る。


「よし行くぞ!」


閃光手榴弾で動揺していた船内の船員や彼の護衛にあたっていた衛兵は必死の形相で武器を構えようと試みる。

そのわずかな瞬間に僕は機械的な動作で彼らを射殺していった。


「おい、そこのお前!積み荷は何処にある?」


腹を銃弾で貫かれ、息も絶え絶えな船員に銃を突きつけ、仰向けに蹴り上げる。


「下だ。この下の貨物室にある……頼む。殺さないでくれ……!」


抵抗手段を失った敵に用は無い。銃床で彼の頭を殴打し気絶させる。少なくともこの一撃で死にはしない。

まあ流れている血の量から察して長くは持たないだろうが。


「よし、貨物室へ向かおう」


僕の指示にジュリアンは黙って頷き、僕の後ろについて行く。


「今のは何だったんだ?」


先ほどまで沈黙を守っていたジュリアンがゆっくりと口を開く。


「通常の突入手段を行っただけです」


「初めてではない動きだな。今までもこんな事をやってきたのか?」


「ええそうです。今までに何度も」


流石にソマリアで息も絶え絶えな海賊の腹を蹴り上げて尋問して殴り倒すなどという外道な事はしていなかったが。


貨物室のドアを蹴破りフラッシュライトを点灯。待ち伏せている敵がいないか確認する。見たところ敵はいなさそうだ。


それよりも目を引いたのは数々の黄金で形造られた像や大量に袋詰めにされたシナモンに胡椒だった。前世で聞いた話だが胡椒のレートは金に相当する値段だ。

どうやら僕らはとんでもない当たりくじを引いたらしい。


「すごい。これをキャプテン・ドレイクの元へ持ち帰ったら彼女が何と言うか……」


ジュリアンは目を輝かせて金、銀、胡椒、シナモンの袋を略奪しにかかる。

僕も負けじと胡椒の袋をかき集めて甲板へ搬出する。


「ふぅ……」


外は先ほどと変わらず青い空が広がっている。

僕の初めての海賊稼業はこうして幕を閉じた。

読んで下さってありがとうございます。

よろしければご感想やご意見をお願いいたします。

次回は明日か金曜日となります。それでは

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