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第2話 転生しましたが瀕死です

ネイビーシールズ第2話、始まります!

――ここは、どこだ?


自分の感覚で感じているのは、少なくとも今自分は地表にいるという事、濡れた戦闘服の感覚からすると砂浜に打ち上げられているのだという事だ。それよりも僕には驚くべきことがあった。


生きているのだ。少なくとも。


重い瞼をこじ開け自分の状態を確認する。手榴弾の傷はどうやら健在のようだ。波に紛れて鮮血が流れ出している。立ち上がる事は不可能に近い。教本では血圧が3分の1以下になれば立った状態で意識を保つのは不可能だ。と言われている。出血がひどくなったら伏せて意識を保てと訓練時代から幾度も聞かされてきた。とりあえず這いずって波打ち際から離れ、そこでもう一度確認する。


「ひどいなこりゃ……」


恐らく持って10分かそれ以下か。いずれにせよ残された時間は無い。

続いて周囲の状況を確認する。夜だ。場所は恐らくはソマリアの沿岸と考えて間違い無い。そこまで流れ着いたのも奇跡なのだが。


ふと砂浜の向こうに光が見えた。よく見るとランタンを掲げた女性のようだった。

――もうお迎えか、ずいぶん早いもんだな……



「おい!お前、大丈夫か」


その女性は僕の傷の状態を確認するや否や迷いもなく担ぎあげた。


「よし、もう大丈夫だ。近くの医者まで運んでやる」


「どうも……」


意識を保っているのも最早限界に近かった。数瞬の静寂の後僕は再び意識を手放した。




3日後


「ここは?」

何日眠っていたのか分からない。目を覚ました先は揺れ具合や構造から船の中だと分かる。薬品が棚に置かれているところを見るに医務室だ。


「ッ……!」


慌てて腹の傷をさする。だが腹に傷は残っていない。


「どうして……」


傷が残っていないのはともかく回復しているという事だ。

気分転換にと僕は船の甲板へと顔を出した。潮風が僕の髪を乱暴にかき回す。ごちゃごちゃの髪をかきあげて景色を一望した。


「ここはソマリアじゃないのか?」


そう、僕が打ち上げられたのはソマリア沿岸に違いないと思い込んでいた。


それにもう一つおかしな点がある。かのマーカス・ラトレルですら救出に3日程度しか要さなかった。僕には救出用のヘリ一つ寄越さない。


それどころか僕が乗っている船を含めて皆帆船だ。

さらに言えばこの船のマストには正々堂々と髑髏の旗がはためいている。


――まるでカリブの海賊の世界に迷い込んだみたいだ……


昔映画館で見たような光景が目の前に広がっている。


「坊や、傷の治りはどうだ?」


イングランド訛りの英語が聞こえた。驚いて振り向くと南洋の輝く太陽を背にして船首より甲板を軋ませながら、僕を助けた女性がゆっくりとした足取りでこちらへと向かってくる。あの時は意識が薄れていて顔すら分からなかったがよく見ると深紅の腰ほどまである髪に海賊のトレードマークの三角帽を斜めに被っている。

最近のイギリスは海賊のコスプレでも流行しているのだろうか?


ああ、パイレーツオブカリビアンの撮影か。

いかん。ますます訳が分からなくなってきたぞ。

取りあえずまっとうな返事でも返しておくか。


「上々です。帽子が曲がっていますよ」


「おっと、来客に向けてこれとは、失礼」


彼女はおどけた仕草で帽子を被り直し、フランクな笑みを浮かべた。

とても演技とは思えない素振りだ。名役者なのだろう。

いや、ライトとカメラマンがいないぞ。


「ここはどこか分かるか坊や」


「ソマリアですかね。それともイギリス海兵隊の部隊ですか?」


真面目な考え方へ頭の回路を引き戻す。

僕の漂流地点から考えればソマリアの沿岸地帯に間違い無い。それか増援として王立英国海兵隊(ロイヤル・マリンコ)が瀕死の僕をここまで運んでくれたのかもしれない。



「ソマリア?そんな場所何て無いぞ。それにイギリス海兵隊ってのじゃあないぞ」


この女性もも今度とばかりはおどけた表情ではなく本当に知らないと言う様な表情だった。


「じゃあ、ここは?」


「イル・サン・トゥルーガ島。荒くれ者共が集う海賊の拠点さ。私はこの私掠船の船長を務めているヴィクトリア・ドレイクだ。今後ともよろしく頼む」


「よろしくお願いします。キャプテン・ドレイク。僕はウェルナー・ブルックリンと言います。アメリカ海軍特殊作戦コマンド所属NavySEALsのチーム8にて活動をしていました。僕を助けてくれてありがとうございます」


目の前の気さくな女海賊ドレイクへ恭しくお辞儀を返す。


「こちらこそだ。死にかけの人間を放っておくのは良心が痛む。それにしても海軍所属とはな。あの傷から察するにデカい戦闘でもしてたんだろう。だが、お前さんの言うアメリカ何て国はこの世界にゃ無いよ。ここはフォート公国の飛び地だ」


フォート公国?

ハンマーで殴られたような衝撃が僕の思考回路を揺さぶった。

嘘だ。そう考えれば全てが丸く収まる訳では無い。だが目の前の女海賊は嘘を言っているような口ぶりには到底見えなかった。


世の中には嘘に紛れ込んだ真実というものが少なからず存在するというものだ。無論、今回の事態もそれに当てはまる。


「そう……ですか」


半ば諦めにも似た感情が僕の頭の中を駆け巡る。

少なくとも分かっているのは、絶対に助けは来ないという事。

2つめにはこの女海賊を頼らなくてはならないこと。軍人として海賊を海へ葬ってきた身として一番ショックだった。


「そうだよミスターブルックリン。それに私は君を助けてあげた。だから君にやって欲しいことがある」


「何をしろと?」


僕に帰る場所は無い。行く当ても無い僕に一体何をしろというのだろう。

いや、ある。僕がこの先生き延びていくたった一つの道が。

あの髑髏の旗を見てから、どうするべきか僕は薄々感づいていた。

それは、かつて自分が忌避し、憎悪していた者達と同等の存在となる事――。

脳裏に自分たちが捕えた男の悲痛な叫びが蘇った。


そのソマリア人は双眸に涙を浮かべていた。それは自分の未来の閉塞感に自暴自棄になり、路頭に迷った男が取った最後の手段だった。


「そうするしかなかったからだ。漁も出られず金も稼げず、そんな先行きの無い人生に未来を羨望することは出来ない。だから俺は――」


――海賊になった。全てを吐き出した後、彼は他のSEALsに処刑され亡骸を海へと流した。


では、僕はどうだ?

これまでの人生を思い返せば彼の様な境遇に陥ったことなど一度たりともなかった。特別に裕福という訳でもなかったし、特別に金持ちでもなかった。


だが僕には夢があった。かつての僕には。だがそれが思い出せない。

腰抜けシューターとして新人でありながらも必死で戦い続ける中でその夢は記憶の中から消え去った。


――ただ、従わされて戦っているだけの存在になった。


そんな駒みたいな生き方は、もうやめよう。

かつて米海軍屈指の特殊部隊(Navy SEALs)として幾多もの海賊を海へ沈めてきたウェルナー・ブルックリン軍曹としての人生は、今日終わりを告げる。


――自分の意志で生きて、自分の意志で戦おう。


「私の船に乗って欲しい。無論、君が良ければだが」


それが、僕の運命を変える戦いの始まりだった。


次はたぶん今週の木曜日になります。ご感想お待ちしております。

修正 アフリカ、中東付近で活動しているシールチームナンバーは8でした。

ウェルナー君の所属はNavySEALsチーム8ですのでよろしくお願いいたします


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