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第11話 歓迎されざる者


メアリーの射撃もだいぶ様になって来た。最初は立射から始めた訓練が今では複数の射撃術を体得するレベルにまで上達していった。彼女自身はあんまり上達していないというが僕からしてみれば大きな進歩だ。


「いくぞメアリー。準備はいいか?」


「はい!」


今、彼女に行わせている訓練は廃棄された船を使用し、その船の中にあるターゲットを撃ち抜いていくという極めて実戦的な訓練だ。しかも一つでも外せばその時点で訓練はやり直し。

この訓練には僕も参加する。勿論彼女の腕前が果たして実戦レベルまで引き上がっているかというのを確かめたいからだ


「よし、ダイレクト・ブリーチング!」


テープ状の爆薬をドアに対角線になる様に貼り付ける。メアリーは僕と向かい合わせにドアの側面へと張り付いた。数瞬の後、木製のドアを吹き飛ばし、船内に設置されたターゲットを全て撃ち倒す。ターゲットが他にも残っていないことを確認してセーフティーを掛け甲板へ出た。

メアリーも僕に続く。


「凄いなメアリー。ここまで上達するなんて」


「いやぁ……君のおかげだよ。ボク一人じゃ、ここまで出来ない」


「そんな事は無い。君の能力が優れているんだ。もっといけるはずさ」


もっといけるというよりかは既に実戦投入したとしても問題は無いレベルにまで成長している。

僕らで部隊を組んだとしても足手まといになる事は無いだろう。









レオナルド邸


レオナルド邸は先ほどまでののんびりとした雰囲気は消え去り殺伐とした緊張感が漂っている。それもジュリアンが駆け付けた報告によってだ。


「何だって?サーペント王国の海賊討伐部隊がこの島の沖に集結しているだと!?」


驚愕のあまり彼女の手からティーカップが滑り落ち、地面へと四散した。

サーペント海軍の海賊討伐部隊がこの島を攻撃目標にしていると察したドレイクは奥歯を噛み締め憤慨した。


「それで、数は?」


「詳しくは分かりませんが竜騎兵部隊を搭載した船が5隻確認できます」


「竜騎兵部隊か……!」


竜騎兵を搭載した艦船は現代兵器で例えるならばニミッツ級空母に匹敵する戦力を秘めている。サーペントは魔術師と竜騎兵部隊を素早く展開させることで戦争の一手を取って来た。それが5隻集結しているとなれば、殲滅戦を実行することに他ならない。死ぬか、降伏かの二択を迫られる。


「分かったよ、ジュリアン。全部隊に通達しろ……」


ドレイクは高らかに宣言する。


「ペルソナ・ノン・グラータ!戦闘に備え交戦準備!」


ペルソナ・ノン・グラータ。本来ならば外交用語の『好ましからぬ者』の意味だがフォート公国の軍事用語で『敵性部隊』という意味合いを持つ。つまり防衛戦闘が行われると言う事だ。

ジュリアンは港町にいる部下達に防衛戦闘準備の旨を伝え、陣地設営を行っていた。


「ここの陣地は対ドラゴン戦闘の用意をしろ!制空権が取られる前に叩き潰せ!」


制空権が竜騎兵部隊に取られてしまえばたちまちサーペント海軍の上陸部隊への支援攻撃が行われる。そうなれば甚大な損害を受けることは免れない。

こちらにあるのは今のところ魔力速射砲と呼ばれる火器が対ドラゴン戦闘の要だ。

速射砲の名前通り外観は大砲と言うよりかは自走砲や榴弾砲に似た外見をしている。


「魔力速射砲、設営完了しました」


部下の一人が魔力速射砲の設置完了を知らせる。報告を聞くとともに彼女は踵を返して港町から海岸にある防御陣地へと足を進める。無論自分の持ち場に着くためだ。海岸陣地には地上砲撃部隊を展開させてあり、手筈としては揚陸部隊を砂浜にセットしてあるC4を起爆させ混乱しているうちに砲撃を叩きこむというプランが既に出来上がっておりその仕上げにかかっていた。


まず鉄条網を敷き、敵の侵攻を出来る限り食い止める。鉄条網に気を取られている敵を狙撃、突破された場合はC4の一斉起爆により敵の戦力の減少を狙う。

そうこうと思案に暮れているうちに砂浜へ到着した。浜には5門の大砲がセットされている。

だが砂浜に設置し終わっている筈のC4のセットが未だに完了していないという。


「15分以内にC4のセットを完了させろ。敵は待ってはくれん」


「分かった、何とかやってみよう」


海岸陣地の設置係の一人を叱りつけると気怠そうな足取りでC4の設置へ向かっていった。

ジュリアンはため息をついて水平線の向こうを見据える。水平線の向こうには5隻の帆船が沖で待機しているのが見える。恐らくは増援艦隊の到着を待っているのだろう。


「機関銃が欲しいよ……」


――サーペントの連中を挽肉にしてやれるのに……

機関銃と言う兵器の有用性についてジュリアンはウェルナーから耳にタコが出来るほど言い聞かされて来た。特にこのような防衛戦闘においては比類なき威力を発揮するほど強力な兵器だ。

敵が人間であり、下位魔術師ならば恐らく海岸線に死体の山が出来るのは間違いない。


「後は地雷が欲しいって言ってたっけな。ウェルナーの奴」


地雷もまた防衛戦闘にはこの上なく有用な兵器だと彼が力説していた。少数の部隊が多数の部隊を相手取るならば、地雷が一番効果的であると。相手を足止めしキルゾーンへと誘い込む。そんな兵器がのどから手が出るほど欲しいのだが無いものねだりをしても仕方が無いと言う事は当のジュリアンとてよく分かっている。彼がいくら素晴らしい兵器の知識を持っていても使えなければ意味は無い。つまり今あるもので乗り切るしかないのだ。


「ちょっとやってみよう」


手に持っていたC4の雷管にその辺に放置されていたワイヤーを繋ぐ。繋いだワイヤーを鉄条網に括りつけ、C4を地面に浅く埋める。


「これは便利だな」


鉄条網を切ろうとすればその直下に埋められていたC4が起爆する。ジュリアンは自分のアイデアを即座に仲間に伝えた。


「全員聞け!C4の雷管をワイヤーに繋いで地面に浅く埋めるんだ!」


「よし、分かった。お出迎えの準備といこう!」


ジュリアンの指示を聞き他の海賊たちは一斉にC4をワイヤーに括りつけ始めた。

所謂ブービートラップというものだが彼らその言葉を知る事なくその戦術を整えていっている。


「さて、私はウェルナーと合流するか、急ごう」


海賊対海軍、両者共に海を知り尽くした強者たちの駆け引きが始まろうとしていた。


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