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第10話 策謀のカンパニー


薄暗い部屋に男は一人で何かに見入っている。この世界に存在するはずの無いパソコンのディスプレイが部屋の一角をブルーライトで照らしている。男はディスプレイからデスクのケータイに手を伸ばしどこかへと電話を掛ける。


「レオナルドか?」


「ええ、私ですチャップマン少佐」


レオナルドはいつもドレイクと談笑する様な声のトーンで電話の主へ応対する。


「それで、要件というのは?」


「SEALsの作戦行動用装備の調達についてです。私が支援している海賊がSEALsの装備を欲しがっているんですよ」


「何の為に?海賊には過ぎた物だぞ」


「海賊のメンバーにSEALsがいます……驚きましたか?」


「何だって!?どうしてそれを早く言わなかった!」


電話の先のチャップマンはレオナルドの答えに当惑の声を上げた。それもそのはずだ。どちらの存在も本来この世界に無いのだから。そして片方はどんなことがあってもその存在を知られてはならない。


「私もつい先程知り得た情報でして、名前はウェルナー・ブルックリン。17歳で階級は軍曹。装備構成から考えるにSEALsTEAM8に所属していた者だと思われます」


「そうか、SEALsが海賊稼業を始めるまでになったか」


電話の向こうのチャップマンは乾いた笑い声を上げる。レオナルドはそれを軽い笑って受け流した。


「ええ、正直驚きましたがね。ウェルナー君は特殊舟艇を欲しがっています」


「なるほどな。理解は出来るが動機が分からん。何故彼はそんなものを欲しがるのだ」


レオナルドは電話の先のチャップマンにウェルナーが話したことをそのまま報告する。しばらく相槌を打っていたチャップマンも徐々にその報告に押し黙っていく。


「同等の戦力を持った部隊だと?この世界の人間でなければホワイトハウスに通達して海兵隊の派遣を進言するレベルの話になるぞ」


「いや、それは流石に戦争行為に当たるかと。我々が築き上げて来たフォート公国とアメリカの内密な関係が一夜に崩れてしまいます。せいぜい資材支援が妥当かと。それと、ここは現地で部隊を作った方が遥かに得策です。こちらにはSEALsがいますから」


レオナルドは自らの計画を描きニヤリと口端を上げる。


「ウェルナー君にはこの事は内緒です。我々は知られなければいい。知られないで彼らをバックアップ出来る体制は整えておきましょう」


「分かった。特殊舟艇に関しては一週間程でそちらに届くだろう。だが実行部隊は送らん。万が一こちらの部隊が壊滅するような事があっては上に申し訳が立たんよ。それでは、また会おう」


ガチャリと電話の途切れる音と共に再びこの部屋に静寂が舞い戻った。



一週間後


ドレイクは一人レオナルド邸の応接間でぼんやりと窓を眺め、時々思い返したように灰皿へと目を落とす。外では相変わらずの青い空が広がっている。


「ああ、ドレイク殿。いらしておりましたか」


応接間の奥のドアからひょっこりとレオナルドが顔を出した。目には相変わらず濃いくまが出来ており作業の苦労がうかがえる。


「すまないな。要件があるから少し世話になる」


「いえいえ、大した事ではございません。紅茶をご用意しましょう」


「いや、結構。座ってくれ」


「えっ?まあいいですよ」


ドレイクの返答に多少困惑しながらもレオナルドは対面のソファへと腰かける。ドレイクは相変わらず煙草を吹かしたままだ。


「なあ、レオ。お前は銃を作れるか?」


「作れと言われたらやるのが職人というものです。」


ドレイクの問いにレオナルドは凛とした回答を口にする。彼の真意を知る事なくドレイクは煙草を一吹かしし、灰皿へと押し付けた。


「うん。そう言うだろうと思ってたよ。じゃあ詳しく質問をしよう。ウェルナー・ブルックリンが持っている銃を模造出来るか?」


「船を作るよりかは簡単な仕事でしょう。現に武装ボートには大量の重火器を搭載していますから、銃1挺作るのはなんのそのです」


レオナルドもさして表情を変える事無く淡々と答えて見せた。レオナルドもいい加減ドレイクの遠回しな回答に疑問を抱き始める。


「それで、あなたは何をお話したいのでしょうか?」


「ウェルナー一人に重荷を押し付けるのはどうかと思ってね……それで、私掠船部隊全員が同じ土俵に立って戦える態勢を整えたいと思ってるのさ。あいつには近々戦闘部隊の指揮を執らせようかと考えているからね」


「私に会いに来たのはそれが理由だと?」


こくん、ドレイクは首を縦に振る。


「そういうことでしたか……」


「そうだ。高度に組織化された部隊を相手取るには同じ土俵、つまり銃火器、ヘリコプター、ボートの取り扱いに奏でた人間が必要だ。それがお互いに連携し合って初めて組織化された部隊になる」


ドレイクの提案はつまるところウェルナー・ブルックリンが所属していたNavySEALsの構想と非常によく似たものだった。SEALsは良く『何でもできる最強の特殊部隊』と思われがちな一面がある

だが実際には様々な支援ありきでSEALsは作戦を成功させる事が出来る。

レオナルドは思わぬ幸運に口端を上げた。


「あいつの武器を見たときからずっと考えてた。あんな兵器を数揃えて戦うような事があれば戦局は一夜にして塗り替わる。勿論その為の運用戦略も必要だが」


ウェルナーが初めて私掠船部隊としてサーペント王国の船を拿捕した時からずっとこの構想を練っていたのだ。ドラゴンよりも早く、クラーケンよりも恐ろしい破壊をもたらすウェルナー・ブルックリンが指揮する最強の特殊部隊。


「その部隊を作る為に必要なのが、指揮官であるウェルナー・ブルックリン、そして彼の隷下に所属させるチーム。そして……」


「機械と整備担当の私ですか」


「その通り、武器が無きゃ話にならんからなぁ!」


ドレイクはいつもの調子を取り戻し乾いた笑い声をあげる。


「ならば単刀直入にウェルナー君の部隊を作りたいとおっしゃればよろしいのではないですか」


レオナルドはあきれ返った素振りで2つのコップを戸棚から取り出し紅茶を注ぐ。


「悪いな。お前といると遠回しに話す癖があってな。許して欲しい」


「いいえ、随分と長い縁ですから気にしていませんよ」


ふふふ、とレオナルドはにわかに微笑んで見せた。








次回投稿は明日となります それでは

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