第1話 ネイビーシールズ、出撃!
小説家になろうに初投稿となります。ネイビーシールズと海賊というお話を書かせて頂こうかと思います。それでは、出撃。
2015年ソマリア アデン湾海上
何の変哲もない海上にて波を蹴立ててアデン湾を疾走する一隻のボートの姿があった。そこにはチャットの葉を噛み、腕に銃を抱え、目をギラつかせ獲物を探している男たちがいた。彼らは海賊と呼ばれている。
古くはヴァイキング以前の時代から始まり、繁栄を極めた大航海時代。いくつかの時代を乗り越えてなお現代においても活動している。
今の海賊は大航海時代のガレオン船に大砲、三角帽子を被りフリントロック式の拳銃を構えるようなファンタジー溢れたものではない。
現代はゴムボートや漁船を改造したものを使用し、大体は中東に出回っているAKコピーを手に持っている。海賊と名乗るのもおこがましいギャングと化している。
彼らは視線の先の獲物へ目を輝かせ腕のAK-47を構える。
「目標到着30秒前!乗船準備!」
「了解!」
ボートはゆっくりと速度を落とし目標であるタンカーへ船を横付けし特殊部隊顔負けの速度で船内へと乗り込んでいく。
「行け行け行け!艦橋を制圧しろ!」
AK‐47と手榴弾で武装した海賊たちは瞬く間に艦橋へなだれ込み船員達を取り押さえた。
「動くな!いいか、両手を見せて床に伏せろ!」
隊長格の男が船員へ指示すると船員は怯えきった表情で両手を見せた後、ゆっくりと床へ伏せた。隊長格の男はそれを確認すると即座にハンドサインで部下たちへ命令を下す。
「敵、突入まで20分だ。それまでに装備を揃えて脱出準備」
「了解」
同時刻 ソマリア 強襲揚陸艦 ボノム・リシャール 艦内
ボノム・リシャールの船員が何時に無く慌ただしく動いているように感じられる。いや、気のせいだろう。いつもの事がまた始まろうとしているだけだ。
連絡を受けたのはつい5分前、米国籍のタンカーがソマリア海賊に乗っ取られたという報告が偵察にあたっていた哨戒機より届けられ、即応体制としてフル装備で待機命令が下された。
なぜ僕が今回待機命令を受けたかと言えば、僕が米海軍屈指の特殊部隊SEALsの一員だからに他ならない。それ以外にあるかっていうの。
すると口髭を蓄えた中年のSEALs達が続々とブリーフィングルームに集結しパイプ椅子にどっかりと腰を据える。
「あまり無茶をするなよルーキー。まだ17なんだからな」
「ルーキーと呼ばず、シューターと呼んで下さいよ隊長殿」
「悪かったな。腰抜けシューター」
中年のシールズ達は引きつった笑いを見せてブリーフィングルームのプロジェクターへと目を向ける。僕も渋々とプロジェクターへと向き直り指揮官の入室を待つ。
――問題無い。いつものようにこなして行くだけだ。
数分の後指揮官が完全武装の状態で入室し今回の作戦概要を述べ始めた。
「いいか諸君。やることは同じだ。いつものように始め、いつものように終わらせる。腰抜けルーキーお前は最前線に駆りだしてやる。ありがたく思えよクソガキ」
「そいつはどうも」
ベテランからのありがたいお言葉を聞き流し、僕は作戦内容のみに耳を傾けた。
聞けば聞くほどいつも通りに事が運ぶものばかりだ。
ヘリに搭乗して船舶へ降下し強襲制圧。その一言で済まそうという気はベテラン方にはどうやらあまり無いらしい。
海賊の装備などたかが知れているし、大抵は僕らの姿を見れば即座に降伏する。
――だったら処刑しろよ…
海賊如きで何故情けをかけて逮捕する必要があるのか。と僕は内心で毒づいた。全くもって不愉快極まりない。
どうせならロシア海軍の方が良かったかもしれない。
上の空でそんな馬鹿げた妄想に身を浸らせていると即座に指揮官から叱責が飛んだ。
「おい、腰抜けシューター。作戦は耳に入っていたんだろうな。あ゛!?」
「はい…聞いてました」
あまりの気迫にシュンと縮まる僕。聞いてましたよ。
「いいや、こいつがどうなろうが知ったこっちゃない。全員5分後にはヘリに乗れるようにしておけ。解散だ」
プロジェクターの電源が落とされるとともに中年のSEALsに続いてフライトデッキへと前進していく。
その途中で僕は装備品を再度点検した。先ほど指揮官が言ったように今回はヘリからの強襲制圧作戦。色々と装備が落ちるような真似だけはしたくない。
武器は僕が愛用しているHK416の短縮型にサプレッサーを取り付けたもの。近接戦闘を想定してホロサイトに倍率変更用のマグニファイアブースター、ハンドガードにはシュアファイアのライトとレーザーサイトを装着してある。
バックパックにはその他の銃器を詰め込んである。だが使う機会は無いだろう。
チェック後HK416を肩へかけ、予備の拳銃であるP226を構え、ホルスターへと戻す。
メインのマグポーチにはしっかりとHK416のマガジン6つが収まっている。
問題はない。後は自分がヘマをしなければどうとでもなる。
フライトデッキには既に発艦準備を終えたMH-60ブラックホークが3機待機していた。
僕もSEALsの後を追って何とか乗り込み、墜落防止用のフックを掛けて一番近いシートへと腰掛ける。
その直後、回転翼の唸りを上げてブラックホークがゆっくりと発艦し遥か彼方にいる海賊共へ向けて飛び立って行く。
「ルーキーだからってビビんなよ!」
艦を飛び立った直後、前の席の白い口髭を生やしたSEALs隊員ことオールドマンにどやされる。
「分かってますよ!」
「ビビって前に出れねえならケツを蹴っ飛ばしてやるから安心しな!」
「そいつはどうも!」
後ろから蹴っ飛ばされて作戦終了後に笑い話になったらそれこそ末代までの恥じゃないか。
というより全員に爆笑されている。これは全員地獄行きにしておこう。そうしよう。
「ビッグバードよりブラボーチーム。目標のタンカーを捕捉。降下まで30秒」
先ほどまで爆笑していたSEALs達も顔を引き締めて眼下の敵へと狙いを定める。
――いつも通りだな……
降下に備えHK416にマガジンを装填、チャージングハンドルを引き、初弾をチャンパーへと送り込む。同様にP226もマガジンを装填しホルスターへと戻す。
「よし、腰抜け!ロープを降ろせ」
オールドマンに言われた通り、僕はタンカーの甲板へロープを投げた。その直後にロープを伝って降下。
「ブラボー6、こちらブラボー9、降下完了。これより艦橋へ向けて前進する」
HK416を構え周囲の状況を警戒し僕は右手より、オールドマンたちは左手に展開し人質がいるであろう艦橋へゆっくりと足を進める。
刹那、甲高い金属音とともに自分の数歩先に小口径の穴が穿たれる。
気付かれた。素早く身を翻し遮蔽物へと身を潜め、ブースターを立ち上げ、グリップをしっかりと握りしめる。準備は万端だ。
「ブラボー6より腰抜けへ、海賊共が撃ってきやがったぞ!やっちまえ!」
「了解、射撃開始!」
海賊たちがいるのは艦橋付近の窓、発砲炎を確認しそこへ正確無比な射撃を叩き込む。
サプレッサー独特の空気が抜けたような発砲音と共に海賊の胸に赤い華が咲き誇る。
3発の5.56㎜弾に胸を貫かれた海賊はSEALsの猛攻になす術もなく床へ崩れ落ちた。
それを確認するが否や僕は前進し続いて物陰から身を乗り出した海賊へ向けて即座に2発お見舞いし一瞥すること無く艦橋へ向けて前進する。
オールドマン達は慣れた銃捌きで抵抗する海賊たちを次々と無き者へ変えていく。
「ビッグバード。支援攻撃を開始する、巻き込まれるなよ!」
続いて3機のブラックホークがタンカーを取り囲み艦橋へ向けてミニガンを一斉掃射。ヴォォォォという独特な発射音と共に僕の頭へ薬きょうが雨あられのように降り注いだ。
「あーあー、なんてこったい」
艦橋に制圧射撃した3機のブラックホークは何事も無かったかのようにそそくさと規定の位置へきっちり戻っていった。
この任務は間違っていなければ人質救出が目的の筈だったのだが、
僕はブリーフィング内容を間違えたのだろうか。
――お前ら絶対人質救出する気ないだろ!
アイコンタクトでメッセージを送るとブラックホークは機首を横に振って僕に答える。うん、舐められてるね完全に。
他にブラックホークがジェスチャーを送ろうとあれこれしているが完全に無視。人質がミンチになっているのは確定だ。
「よおし。悪党共は葬った。後は上にいる魔王達を倒す時間だ。勇者様は腰が抜けて手が出せないそうだから俺達が代わりに魔王を倒してやるとするか」
その魔王はあいつらがフルボッコにしたと思うんですがそれは……
また僕の殺気を感じてブラックホーク達はゆっくりとタンカーを取り囲み始めた。
「んなっ!何て事をあんた達は…」
「勇者様はもう魔王のいる部屋まで着いたのかな?」
「着きましたよ!もう配置に着いてます!」
ダメだ!あいつらが信用できない!
「よおし、よくやったぞ勇者よ。こっちも配置に着いた。何時でも行けるぞ!」
オールドマン達も艦橋へ到達し僕とオールドマンがドアの側面に張り付き突入態勢を整える。オールドマンは突入用の爆薬を取り出し、ドアへと張り付けた。
ブラックホークは観戦しているようだ。もう知らん。
「了解。強行突入・スタンバイ」
――さあ、始めるか…
刹那、轟音と共に艦橋へなだれ込み、海賊達を抹殺する。手はずだった。
海賊の一人が持っていたそれを見て一同の勝利の確信はたちまち恐怖へとすり替わる。誰かが大声で叫んだ。
「手榴弾!!」
だが時既に遅し。ピンが抜かれた手榴弾はスローモーションのように床へ滑り落ちて行く。
僕はとっさの判断で海賊を射殺し手榴弾に覆い被さった。
「バカ野郎!」
オールドマン達の叫びが遠くに感じられるような気がした。その直後小さな爆発と共に自分の体がふわりと宙に浮くのを感じ、景色がゆっくりと暗黒の世界へ包み込まれていった。
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