第七十六話 俺への心配?ルーマは守じゃない!?
今回は珍しく雰囲気が重めです。
これがシリアスか…!
「ただいま~。」
俺は宿屋に戻ると、思わずそんな事を言ってしまった。
誰も出迎えるわけが無いのにな…というか、誰かで迎えたら通報モンだぞ。ここに警察みたいな組織があるなんて聞いてもいないが。
そういや、あいつらは今頃俺の心配をしてくれて…
「…あ…」
そこまで考えたところで、異世界から戻った日の父さんの言葉が脳内で再生された。
『おまえがいない一週間、どれだけ周りが心配したのか分からんのか!母さんも!お前の友達も!俺も!どれだけ心配したか!』
あの時と似ている…が、今は少し違う。
あの時も今も、俺は周りの心配なんて全く考えていなかった。
前回は不可抗力だったが、今回はどうだ?
今回はちゃんと連絡も取れるし、ばらそうと思えばいつでもばらせた。チャンスもあった。
しかし、俺は自分の羞恥心ばかりをとって、周りの心配なんて一切考慮しなかった。そのせいで、今も皆が心配しているのかもしれない。
今からでもばらすべきなのだろうか。ばらして失望される事はないのか。
…怖い。皆が離れていってしまうのが、怖い。
……とりあえず手紙でも書いて渡そう。宿代の余りで買えるしな。ああ、ここで踏み出せない俺はとんでもなくヘタレなんだろうな…
俺は暗い気分のまま、ベットに寝転んだ。
ルーマの尾行が終わり、俺達はギーナの家に戻っている。
さっきルーマがナンパに襲われたが、その時は助けに出る事は出来なかった。
あの時出ていたら、ルーマの注意がこっちに向いて、ナンパ野郎から一撃貰っていたかもしれないからだ。
助けに入れない事で歯がゆかったが、何とか撃退してくれて良かった。
というか、あの撃退の仕方は何なんだよ!もう完全に超の付く戦闘民族だよねあれ!
そう思いつつ、俺は一緒に尾行していた、二人を見た。
移図離は相変わらず無表情。ギーナは難しそうな顔をして、考え込んでいる。
ギーナが考え込んでいるのは、ルーマがナンパ野郎を撃退してからだ。
ルーマが金髪になった時、驚いた顔をしていたが、なんなんだろうか。そろそろ訊いてみるか。
「なあ、ギーナ。」
「…え?なに?」
「ああ、なんかさっきから難しそうな顔をしてたからな。どうしたのかなと。」
「…さっきから考えてた事なんだけど、ルーマは守じゃない可能性があるわ。」
「ええ!?」
「…ホント…?」
ギーナの発言に、俺も移図離も驚いた。
「どういうことだ?」
「ルーマは、”黄金人”だからよ。」
「”黄金人”?」
聞いた事のない単語が出てきた。
「ええ。この世界では有名な種族よ。詳しいことは解っていないけど、戦闘の時に威圧感を伴って髪が金色になって、普通の時よりも強くなるのよ。」
…これはもう完全にアレだ。一説によると50倍は強くなる奴らですよね?なんなんですか?ツッコミ待ちなんですか?
「…で、ルーマがそうであると?」
確かにルーマは突然威圧感を伴って金髪になった。そう思うのも無理は無いだろう。
…俺にとってはただのパロディーにしか見えないが。
「ええ。最も、あなた達が同じことが出来ると言うなら話は変わってくるけどね。」
「んなこと出来るか!」
「…無理…」
そんなこと、ただの一般人が出来るわけがない。
「…まあ、そうよね…じゃあ、さっさと戻りましょ。」
俺達はいつの間にか着いていたギーナの家に入って行った。




