第七十五話 またナンパ?危なっかしい戦闘!?
めんどくさい…めんどくさいぞ…
何でこの時間にチャラ男がナンパして来るんだよ!おかしいだろ!ふざけんな!
「おいネーチャン、俺達に付いて来いや。」
しかも今度は命令形かよ!他人の意思を尊重する気無しかお前ら!
「ごめんなさい、もう帰らないといけないので。」
これで引き下がれ。命令には命令だ。
「そんなことで大人しく帰すと思うかアァン!?」
「帰して下さい。」
「当然駄目だ!大人しく付いて来い!」
チャラ男が手を伸ばしてくる。当然、手をつなぐためではなく、腕を掴むために。
そんなことさせるかよ。俺は腕を掴まれる前に、風系統の魔法を使ってチャラ男を吹き飛ばす。
「ぐっ!このアマ…!」
吹き飛ばすと言っても、数メートルしか飛ばなかったので、チャラ男は俺に向かって走ってくる。
ここで障壁を出せば…
「何!?」
障壁が出ない!?そんなバカな…あ、バカなのは俺だった。今障壁使えないんじゃん!何忘れてんだよ俺は!
そんな事を考えていたら、チャラ男は既に目前に迫っていた。
俺はとっさに魔法で身体強化し、バックステップで避けた。避ける前に居たところに、チャラ男の拳が通る。
「チッ!」
…あいつ、本気で殴る気だったぞ…
何かしらの重い理由があるならまだ良いが、ナンパを断られて加減して掴みかかったところを痛みも無く少し吹っ飛ばされたぐらいで女を殴るなよ…
……女?見た目はともかく、俺男じゃん!何言ってんだ!うわあああああ!!
「おら!喧嘩中にボーっとしてる暇なんてあるのか!?」
喧嘩って…売った覚えも買った覚えも無いんだが…あくまで正当防衛しただけで。
チャラ男は更に殴りかかってくる。俺は何度もバックステップで避け、魔法の風で更に距離をとる。
「おらおら避けてばっかじゃ勝てねえぞ!」
勝つ気なんて無い。避けてる振りをして逃げているだけだ。こうして逃げて大勢の人が居るところに逃げれば、チャラ男は取り押さえられ、俺は助かる。
この状況を客観的に見ても、チャラ男に非があるのは明らかだ。
「チッ、人の多い場所に行こうったってそうはいかねえぞ!」
げっ、ばれてた。
まあ、知ったからと言って、アイツは対策もしようがあるまい。だが、不安の芽は摘んでおきたい。だからこの前の夢のように威圧感で…!
「…おい、俺は早く帰りたいんだ。さっさと帰らせろ。」
「あ?…うおっ!?」
俺は昨日の夢のように、魔法で、オーラをまとい金髪になったように見せた。髪を逆立ててはいないが。
もちろん、魔法による威圧感付きである。
「痛い目に遭いたくなければ、消えろ。」
できるだけドスの効いた声で言う。
「ひ、ひいいいいいい!!」
チャラ男は、凄い勢いで逃げていった。
「ふう…」
もう、あのチャラ男は来ないだろう。
そう思って俺は一息つき、宿屋に向かって歩き出した。




