第七十四話 就職活動開始?三人の影が潜む!?
翌日。
「ここで五日間だけ働かせてください!」
スタッド村の宿屋。守はまず、ここで働けるか、宿屋の女将に交渉していた。
「う~ん…五日間とはまた微妙だねぇ…最近は忙しくもないし、ここは間に合ってるんだよ。」
「そこをなんとか!」
「まあ、あんたみたいな美人だったら、他にも働けるようなところはあるよ。例えば、この村の商店街とかね。だから他を当たっとくれ。」
一回目の宿屋は空振りに終わり、長い…かもしれない守の就職活動が始まった。
守は、若干しょんぼりしたような様子を見せながら、宿屋から出てきた。
そして、その様子を見る、三つの人影があった。その人影は…
「お、ルーマが出てきたぞ。」
「ええ。そうね。」
「…尾行、開始…」
太郎、ギーナ、移図離の三人だった。
わざわざ三人が尾行している理由は、昨日の、守の居場所会議にあった。
三人は、何でこうなったのか、遠い目をしつつ、思い出していた。
「…やっぱり守はルーマなのかな?」
「うわああ!止めてくれ!」
議論をしているうちに出た、光の発言に、俊太はダメージを受けた。
「…俊太…プッ。」
「笑うなぁ!」
俊太本人は必死でも、はたから見れば面白い以外の何者でもない。
「…そんなに知りたきゃ、尾行でも何でもすればいいじゃないの…」
「それだ!」
「え?」
「ルーマを尾行して、ルーマが守説を検証すればいいんだ!」
必死な俊太は、ギーナの案を力強く肯定した。
「…本気?」
「ああ!当たり前だ!と言うわけで、メンバーは…」
それから十四人のメンバーから選抜、決定した。
影が薄いのでばれにくいだろうと、太郎と移図離、天才だし、その場で何かに気づくかもしれない、と、ギーナが選ばれた。
そして、今に至る。三人は尾行を続けたが、ルーマはいろいろな店をまわって、頭を下げていることから、何かを頼み込んでいるように思える。
しかし、それだけだ。尾行がばれないように離れているため、会話の内容は聞き取れない。
そのため、今何を頼んでいるのか分からない上、守なのかどうかも分からない。尾行は、雲行きが良くなかった。
「全く尻尾を出さないな…」
「尻尾?出してるじゃない。ほら。」
「そっちじゃねえよ!」
ギーナが言っているのは昨日生えた方の尻尾だ。当然、太郎が言っているのはそっちではない。
「はあ…」
空はもう赤みがかっている。
本日の就職活動の結果に、俺はため息をついた。
村全体の店と言う店、そこで紹介された場所を、一日使って頼み込んだが、全部駄目だった。
理由はやはり五日間という微妙な雇用期間にあった。雇う側としてはもっと長い期間雇いたいとのこと。
更に突き詰めると、雇っている間に、俺を目当てに来る客が出てきて、雇用期間が終わればその客が来なくなり、更に他の客も流れていくのが怖い、ということらしい。
なんでそこまで評価されるんだろうな…この顔は…
美人って大変だなあと思いつつ、俺は宿屋に戻ろうとした。が、
「おっ!美人のネーチャン発見!待ってくれよ!」
この前とは違うチャラ男に呼び止められた。
もう美人になんてなりたくもない。俺ははっきりそう思った。




