第七十二話 こりゃまずい?俺、切り抜けられんの!?
ちなみに、守が前回、早く目が覚めたのは、食べた量が少なかったからです。
更に言うと、耳と尻尾だけで済んだのも同じ理由で、全部食べていたら完全に犬になってました。
まずい!まずいぞ!今まではなんとかなっていたが、五日も正体が隠しきれるのか!?
それ以前に本当に隠しきれているのか!?実は気づいてたけど黙って面白おかしく見てましたとか言うオチじゃないよな!?
そういや、五日間宿屋に泊まれるほど金持ってねえぞ!?一体どうすれば…
「もしも~し、聞こえてる~?」
「ハッ!なん…すいません、なんでしょうか?」
焦りからの延々と続きそうな思考は、光の声によって止められた。
「ルーマって確か、旅人だったよね?この村にはいつまでいるの?」
「えっと、五日…じゃなくて、気分次第なのでわからないですね。」
五日って断言してたらばれてたかな?いや、こっちの方が無理に訂正した分怪しまれるか…?
「…その間の寝泊りは?」
「宿屋ですね。」
ここでギーナの家に来いとか言われてもその誘いに乗ってはボロを出す可能性が高くなってしまうので断らねばならぬ。
要するに、数日野宿決定だな。はぁ…
「まあ、いいわ。ギーナの親が良ければギーナの家に、と思ったけど、まあ、しょうがないか。」
ふう…切り抜けられたか?
「では、私はこの辺で…」
「ええ。守が見つかったら、ルーマにも言うわ。」
「ありがとうございます。さようなら!」
俺は一応この場は切り抜けた…しかし、ばれたくない理由が増えちったなぁ…よし。今後会わないように努力するか。
『それで、お前らはどう思う?』
ルーマを見送った一同は、ギーナの家に戻り、会議をしていた。
議題は、ルーマに関してだ。ルーマは時折、どこか不自然になる。そう、まるで演技のような…
そこに関しては、この場の全員が思うところがあったので、会議をすることとなったのだ。
「はい。」
「では、ギーナ君。」
なぜか俊太が議長気取りになっている。
「なにその口調…まあ、意見としては、ルーマが何か隠してる事だけは確かね。」
『そうだな。』
「そうね。」
「…怪しい…」
「ああ。」
「そうですね。」
「そうよね。」
「そうなの?」
「そうだよ!」
「そうなのよ!」
「そうなんだよ!」
「そうなの。」
「そうだぞ。」
「そうだよ~。」
今のは、フォルフ、光、移図離、俊太、火太郎、タカミ、キャビ、太郎、ガーニャ、ギファード、守母、守父、フラル、の順である。
…こうして見ると随分と大所帯になったものである。
「まあ、それは俺でも分かる。…約一名、分かって居なかった奴が居たが、それはしょうがないと思っている。そういう純粋な奴だからな。」
「で、この件については後でもいいでしょ。問題は、ルーマの発言…守に助けられた、というものよ。」
「そう言えば、そんな事も言ってましね。それのどこが問題なんですか?」
火太郎が訊く。
「…その発言の前に、何か閃いたような顔をしてたような気がするのよ。」
ギーナ以外の全員は、この発言で固まった。




