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第六百三話 秘策の結果?立ちふさがる彼女!?

「……」


 初撃から数秒、未だに守は障壁の影に隠れている。

 先程の攻撃が来れば音もなく壁が消滅し、己の身を貫くかもしれないというのに。

 しかもその攻撃は壁が邪魔で見えない。はっきり言って悪手のはずだ。


「待たせたな!」


「with 私!」


 もう一撃、と彼女が先程の攻撃を放とうとした時、守は瑠間を伴い障壁の影から飛び出した。

 各々の手には透き通る障壁、障壁結晶の剣がある。


「二刀流、ね。」


 障壁結晶の創造を一瞬にして行うことはできない。二対の手に握られた障壁結晶を見て、彼女は数秒の間の意味を理解した。


「この攻撃が防げるか!!」


「流石にこれは厳しいんじゃない!?」


 襲い掛かる4つの刃。

 同時ではないが、攻撃のインターバルはほぼゼロ。挟み込むような二方向からの斬撃を防ぐことは不可能に近い。


「そうでもないわよ。」


 彼女は腕を二振りした。

 それだけで障壁結晶の剣は刀身が半ばから離れ、やや離れた地面に落ちる。


「「何!?」」


「神の欠片の力は効かないわ。

 純粋な魔力を扱うことができる、私にはね。

 魔力は破壊の力、神の力は創造の力。決して相容れない力故に、ぶつかれば消滅する。」


 彼女の手から障壁を消滅させた光線と似た、剣のような輪郭が伸びている。

 それで障壁結晶の剣を切られたのだ、と理解した2人、もとい1人。


「能力は神の力…だから、貴女のあの攻撃に当たれば能力で創られた障壁は消滅するってこと?」


「なら直接、叩くしかないか!」


 間合いはそのまま。

 攻撃を行うには充分すぎる。


「残念。

 私が操れるのは魔力だけじゃないわ。」


 彼女に触れた瞬間、崩れ落ちた守。


「神の力を流し込んで体内の魔力を打ち消せば、魔力が無くなって魔力切れの症状が起こる。

 そうすれば死にはしなくても倒れる。そして、本体が気配の操作による維持を止めれば分身は消える。

 迂闊だったわね、瑠間が攻撃していればまだチャンスはあったのに。」


「ああ、そうだな。」


「え…っ!?」


 守は倒れ、分身体の瑠間も消えた。そのはずなのに返事があった。

 倒れた守からの返事ではない。

 それに気付いた彼女が振り向くと、白一色の剣が彼女に迫っていた。

 避けられない、そう思った彼女きつく目を閉じる。


「たった今、チャンスが生まれたな…!」


 彼女に瑠間(?)が持つ剣が突き刺さる直前に攻撃が止まり、そのままフリーズする。

 その隙を彼女が逃すはずもなく、素早く目の前の腕をつかみ、神の力を流し込んだ。







「考えたわね、やっと私も理解できたわ。

 さっき障壁で隠れた時、貴方は能力で性別を変えて分身の術を使った。

 貴方の分身の術は何故か分身体と本体の性別が違うから、あなたは女の、瑠間かのじょは男の姿になる。

 その後四本の障壁結晶の剣を創って、それを創っていたせいで数秒遅れたのだと思わせる。

 で、障壁で隠れる直前まであなたが男だったから、持ち前の演技力を駆使しつつ男の姿の瑠間かのじょが本体だと勘違いさせながら同時に攻撃。

 私が分身を攻撃したところを女の姿になっている本体のあなたが攻撃する。

 本体が倒れたのに分身が残ってる、と驚かせて隙を作れるはずだから、その隙を突いて倒す。

 …ここまでが貴方の作戦ね?」


 朦朧とした意識の中、作戦の全てが彼女に知られたことを知る。

 もう同じ手は使えない、いや、そもそも魔力切れなんて起こしてたら使える訳が無いか…


「……返事できないみたいね。

 多分、そっちは当たりだとは思うけど…どうもわからないのよね~?

 なんであの千載一遇のチャンスを逃しちゃったの?あの時に止まらなかったら私死んでたけど?」


「………」


 剣を例の彼女に突き立てようとした瞬間、脳裏にギーナの顔がちらついたのだ。

 そして思った。もし例の彼女の正体が、ギーナだったら。

 頭が良くて、顔も良い。だが残念な性格で、騒動の種を運んだりしていたが、憎めない。

 そんな彼女に、アイツを重ねてしまい剣を止めてしまった。

 その結果がこれだ。

 幸いにも意識は繋ぎとめられているが、魔力切れでロクに動けず、立ち上がる力さえも残っていない。

 バカなことをした。

 もし例の彼女がギーナじゃなければ。

 いや、ギーナだったとしても、なんとかしなければ他の皆が、俺たちの世界が滅びてしまうというのに。

 攻撃をためらい、みすみす世界を救うチャンスを逃してしまった。


「……スッキリしないけど、貴方が回復したら厄介だからさっさととどめを刺してあげる。

 私をここまで追い詰めたことを光栄に思いながら死になさい。」


 最早彼女が何を言っているのか、分からなくなってきた。

 極度の疲労感により頭が休み始めたらしい。

 もう、いいか…

 別にこの世界が完成したからと言って、必ずしも全世界が滅びるというわけではない。

 もしかしたら彼女の野望が達せられても世界は滅びず、俺たちはこれまで通り普通に生きていけるのかもしれない。

 第一、ずっと温めていたとっておきの秘策がもう破られ、しかも動けないのだ。

 俺はもう、戦えない…

 そうだ、もう、秘策、すら…

 ……待った。

 何かなかったか?もう一つ、俺が持つ何かが。

 何だっただろうか。もやもやしておちおち寝ても居られない。

 確かそれはポケットに…あ。

 終わった。

 さっきシャワー浴びた時に脱ぎ散らかしていた制服の中だ。


『守!分身の術使って!取ってくるから!』


 そうか、分身なら魔力切れは……多分関係無い…のか?


『一か八か、やってみるしかないよ!』


 分身の術に必要なのは純粋な気配の操作だけだ。魔力は関係ない。

 ただ、気配の操作に魔力を使うのなら終わりだ。俺にはもう魔力が無い。それもほとんどないではなく、ゼロだ。


(行ってこい、瑠間!)


 分身の術は成功する。

 分身体に宿った瑠間は部屋の入り口に駆け出す。


「黙って見てると思う?」


 それを阻まぬ理由も無く。

 彼女は入り口に立ちふさがり、瑠間の足を止めさせた。

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