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第五百九十五話 ゴングは鳴っていた…らしい?予想外のプレゼント!?

 

「やっと来たか。」


 分身を引っ込め、部屋に入ると勝手に扉が閉まる。


「オートロック付き自動ドアか…融通が利かな過ぎてかえって不便そうだな。」


「何言ってんだ?」


「ふと思ったことが口に出ただけだ、気にするな。

 わざわざ鍵なんてかけなくても、あの二人は入ってこないし入れる気も無いってのに。」


「へぇ、随分自信があるな。」


「わざわざ全員で戦う必要は無い。」


「さっき深手を負って逃げたのにか?

 さっきも言ったけどな、俺はお前より強いんだ。何倍もな!」


 音の無いゴングは鳴っていた。

 …らしい。俺には聞こえなかったけど。

 体感時間を延ばし、不意打ちに近い一撃を避ける。

 助走からの拳…剣じゃないんだな。

 そっちの方がリーチがあって早く攻撃できるが、それをしないとなると…

 ゆっくり、向こうの俺が視線と顔を追尾してくる。

 その顔には笑みが浮かんでいた。

 来る。

 急激に方向転換して横薙ぎに払われた足を後ろに下がって避ける。

 いや、避けようとした。


「なっ…」


 何かにぶつかった。

 考えるまでもない。アイツが創った障壁だろう。

 足が迫ってくる。

 俺の見立てでは身体強化があっても受け止めることは難しい。


『守、こっちも障壁!』


「!

 そうか!」


 こちらも障壁を創り、蹴りを防ぐ。

 ただし。


「いっっってええええええええええええええええ!!??」


 脛に当たるように位置を調整させてもらった。

 障壁使い同士の戦いにおいて蹴りはNG。脳内でメモをとりながら足を抑えて悶える向こうの俺を見る。


「脛とは卑怯な…」


「卑怯?

 攻防一体となった素晴らしい戦術じゃないか!」


 昏く、そしてどこか爽快な気分が心に訪れる。

 悪役や外道主人公の気持ちが少しわかった気がする。ゲスいことを止められないわけだ。

 しばらくもだえ苦しむ様をじっくりと眺め、立ち上がるその時を待つ。


「待ってくれてありがとう…とでも言えばいいか?」


「言わなくていい。」


 敵とは言え、流石に追い打ちをかけるのは良心が痛む。後とっさだからって本気で殺しにかかって来てるような一撃を放たれても困る。

 以前の姿とは言え、自分が苦しんでるところをじっと見続けるのはどうも不思議な気持ちになる。

 敵のはずなのに素直に喜べないというか。なんというか複雑な気持ちになった。


「これほど魔法が使えればと思ったことも無かったぞ…痛みぐらい消せそうだし。」


「え?お前魔法使えないの?」


「んなもん使えるわけが…あ。」


 アイツは今❝言っちゃった❞とか思っているだろう。

 なるほど、アイツ魔法は使えないんだな。良いこと聞いた気がする。


「まあ、魔法が無くても能力があるから俺なんか一捻りだろ?」


「あー!今俺が言おうとしてたのに!」


「台詞は早い者勝ちなんだよ。」


「やかましい!さっさと終わらせてやるから覚悟しとけ!!」


 そう言うと、向こうの俺は足元から障壁を上に向かって伸ばした。

 2,3秒待って完成した高い障壁の塔の上に居る俺を見上げる。


「上へ参りますタワーか。」


「変な呼び方するな!」


 分かりやすさ以外の利点が無い名前をつぶやくと、わざわざ上から拾ってツッコミを入れてくれた。

 あんな高いところに居るのによく聞こえたな。


「じゃあ俺も…おっと。」


 上から障壁のブロックが落ちてくる。

 中が空洞なら人一人入れそうなほどの大きさの立方体だ。地面(?)に落ちるとズンと思い音がして少し沈んだ。


「危ない物を落とすな…」


「一個や二個だけだと思うか!?」


 降ってくる障壁のブロックは一個や二個ではない。

 いくつもいくつも降り注いでくる。


「避けられるか!?それを!」


「避けられないなら防げば良いじゃない!」


 俺のやや上に空中固定の障壁を創り、障壁ブロックの雨を防ぐ。

 これで降ってくる障壁に押しつぶされる心配は無いものの、俺から攻め込むことが出来ない。どうしたものか…


「………」


 見つけてしまった。

 向こうの俺が創り出したと思われる塔へと続く坂道を。

 罠だよな。

 なんかあそこだけ障壁が降ってる様子が無いけど、絶対に罠だよな?


「先に言っとくが、それは罠だ!

 でも、他に攻め手は無いんじゃないか?ならそこを昇ることをあぶなっ!?

 人が話してる最中に障壁を落とすんじゃない!!」


 文字通り高みの見物を決め込んで油断している間に頭から障壁ブロックを落とす作戦は失敗した。

 別に成功するとは思ってなかったが、ちょっと気が晴れた。


「さあ上ってこい!どうせ障壁があればどんな罠も関係ないだろ!?」


 別に障壁があるから罠効かないって訳じゃないが、障壁があれば落とし穴も途中で足場を創ってしまえば防げるし、丸い岩がゴロゴロ転がってきても軌道を逸らしたり止めたりすることはできる。

 そういう意味では結構万能なのかもしれないな。なんか切る時は剣から包丁、カッターに至るまで自由に創り出せるし。

 よし、登ってみるか。例え罠でも乗り越えてやる。


「ああ、確かに関係無いな!」


 ご丁寧に落下防止のためか両端に低い壁がある坂道を上る。

 走っていても障壁を落とす様子は無い。どんどん向こうの俺に近付いてくる。


「よくぞここまで来たな!

 プレゼントだ、受け取りな!!」


 向こうの俺は腕を組んで待ち構えていた。

 プレゼント、と言われ辺りを見るも何も無い。てっきり球形の障壁でも転がってくるものだと思っていたのだが。

 となると、上から落として転がす気だろうか。だとしても容易に飛び越えるなり防ぐなりできる。浅はかな作戦だ。

 そう予想を立てて上を見た俺は、予想外のプレゼントに鋭く息を吸った。


「魔法は使えなかったはずだろ?

 いや、まさか…」


 黒い滝が俺を飲み込み、押し流す。

 俺が見たことも無い障壁。それは液体だった。

 浅はかだったのは飛び越えられると思っていた俺の方だったと気付いた時には遅く、落ちたまま残っている障壁に背をぶつけた。

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