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第五百九十三話 新たな障壁?余裕はもう無い!?

 

「フッ!!」


 慣性を利用し、ハンドスプリングの要領により手で跳ぶ。

 空中に障壁を創ってそこに着地する。眼下には通り過ぎていった障壁の雨が見えた。


「これも避けるか…!」


「お前の狙いは、バラけた障壁を障壁で防御させること。

 そして、防御した障壁の向こうから上に飛んで後ろから奇襲して勝利…と行きたかったんだろうがな。

 そこまで知っていれば障壁での防御は隙を与えるだけと分かる。なら撃ち落としたり避けたりすればいい。」


「全部バレてるのか…」


「俺も異世界に来て間も無いころ、同じ戦術を使ったからな。」


 思い出すのはギーナの父親ギファードとの試合。

 今や懐かしさすら覚える記憶だ。


「……変に頭を使った戦いをしようとしても、先手を打たれるだけか。」


「ごり押しでもする気か?」


 もしそれで来られたら困るものだが。


「ある意味そうかもしれないな。

 だが、確実にお前は知らない戦い方だ。」


「ほう?」


 障壁を用いた戦い方なら俺の方が上。俺にはアイツには無い経験、ノウハウがあるからだ。

 アイツの能力が現代で突然目覚めたのか、例の彼女が目覚めさせたのか。どちらかは分からないが、少なくとも現代で障壁をポンポン使えるわけではないだろう。もし見つかったら騒ぎになりかねない。

 なのに、何を根拠にそんなことを言ってるんだ?

 同じ障壁使いとして好奇心すら湧いてくる。


「見せてやるよ、お前が知らない障壁を!」


 向こうの俺が地を蹴る。その手には今創り出した障壁の剣があった。


「おいおい、まさか剣で勝負する気じゃないだろうな?」


「どうかな!」


 現代で平和な生活を送っていた向こうの俺が、異世界で剣を使っていた俺に剣術で勝てる訳が無い。

 何をするかはわからないが、絶対に何かする。かっこいいからと言うだけで不利な戦い方をする高壁守ではない。

 打ち合いに持っていけば有利だ。そう判断した俺は障壁の剣を創り、やや斜めに振り下ろされた向こうの俺の剣を迎え撃った。

 二つの同じ剣がぶつかり合う。


「ぐぁ…」


 その一瞬後、顔面に何かがぶつかる。

 その内の一つが目に入り、力が抜ける。


「終わりだな!」


 当然剣は押されてせり負ける。

 迫る黒を止める術は無い。

 首の横から脇腹に向けてかつて感じたことのない痛みが走り抜け、一筋の熱が膝を折らせた。







「扉が閉まっちゃいましたぁ!?」


 守一人が入ると、そこで扉が閉まった。


「早く開けてください!守さん一人では危険です!!」


「分かってましゅ!」


 クラウンがドアに近寄る寸前に障壁が現れたため、障壁にぶつかりその勢いを止める。


「んがっ!?

 ……障壁?まさか守は一人で?」


「いえ、向こうの守さんでしょう。さっき障壁使ってましたし。」


「でしゅよね…こんなところで変な自己犠牲とかされても困りましゅ。

 それで、コレどうしましゅか?」


 クラウンが指さしたのは障壁。

 障壁はドアの前にあるため、それがある限りはドアを開けることはできない。


「私達が取るべき行動は決まっています。

 障壁を破壊して部屋の中の守さんを助けに行く。それ以外にはありません。」


「別のところからつながっている可能性は無いんでしゅか?」


「あるかもしれませんが、これを壊していった方が手っ取り早いでしょう。」


「それはそうなんでしゅが…どうやって壊すんでしゅか?」


「……クラウンさん、お願いします。」


「え、できましぇんよ。

 私は力技よりも搦め手で敵を翻弄することに長けてるタイプでしゅから。万全な状態でも障壁が壊せるかどうかは怪しいんでしゅ。」


「仕方ありませんね…

 では、私の力でこれを破壊して先に進みましょう。」


 下げられている女神の右手が拳になり、そこに光が宿る。


「……壊した後、どれくらい力が残るんでしゅか?」


「今の力の半分くらいでしょうか。

 使い切りはしませんが、同じ力は二度も出せないでしょうね…」


「節約して、別の入り口を探した方が良いんじゃないでしゅか?」


「駄目です。

 こうしている間にも、守さんは闘っています。

 時間がありません。もたもたしていたら、それこそ守さんが負けます。

 そうなれば私達は彼女に敗れ、世界は滅びる。力を出すことを惜しんでいるほどの余裕は、もう無いんですよ。」


「分かったでしゅ…」


 女神の力説を聞き、釈然としない様子ではあるがそそくさと障壁の前を離れるクラウン。

 ありがとうございます、と小さく礼を言った女神は光る右手を障壁にぶつけた。

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