第五百九十話 たかがジンクス?どんどん任されてくれ!?
今日もう一本いけるか…?
多分無理なのでこれが今年最後の更新になりそうです。
『大丈夫なの?』
瑠間の心配そうな声が頭に響く。
女神様は捕まっていた間にかなり消耗している。
そんな状況で戦って、倒れたり、足手まといになったり…そんなことも考えられる。
「情けない話ですが、大丈夫でも大丈夫でなくても、貴方達に付いて行くしか私に道は無いんですよ。
この世界の周りに結界のようなものがあるせいか、今の私の力ではこの世界から出ていくことはできません。
解放されている状態でここに居ても、私単独で行動しても、また拘束されるだけです。
それに、今の私でも少しは戦えます。」
「どれくらい戦えるんだ?具体的には。」
「守さんと瑠間さんを十組ねじ伏せることができるくらいです。」
「……あー、もう女神様だけで良いんじゃないか?」
少し厳しく自分の状況を教えてやろうと思ったら予想外すぎる返事が来た。
むしろ俺がお荷物になりそうだ。
「ただし、そんな力が出せるのは一度だけです。
二度目はありませんし、それほどの力を出せば私自身が消滅しかねません。」
一度しか切れない、最後の切り札ってことか。
「なら、最後まで女神様の出番はなさそうだな。
俺はそういうの、最後までとっとくタイプだからな。」
「でも、必要と判断したら使わせてもらえますよ?」
「その時はしょうがない。
そもそも、そんな状況にする気は無いけどな。」
「台詞の後半が不穏ですね…」
「フ、フラグなんてたかがジンクスじゃないか。そう気にするな。」
とか言いつつ、自分でも不安になりながら。
新しい仲間を加えて部屋を出た。
「長かったでしゅね、何かあったんでしゅか?」
「ああ、悪い悪い。ちょっとな。」
「貴方も守さんの仲間でしょうか?」
「なんか増えてましゅね…まあそんなところでしゅ。」
女神様と話しているうちにクラウンが外で待っていることを完全に忘れていた。覚えていれば先に紹介していたものを。
「コイツはクラウン、さっき牢屋で仲間になったんだ。
で、こっちが」
「ミマです。」
サラリと偽名を口にする女神様に面食らってしまった。
『守さん、私が女神と言うことは秘密にしておいてください。』
(え?なんで?)
『…貴方からすればどうかは分かりませんが、私からすれば出会ったばかりの魔物です。
私は会ってすぐ、人柄も分からない内に秘密をばらせるような軽薄な神ではありませんからね。』
(だから、なんで神ってことが秘密なんだ?)
『それを知れば、神の力を奪わんとする人間もいます。
魔物とて同じ、もしくはそれ以下です。』
(それは偏見か?)
『警戒しているだけです。
人の姿に化けて世に紛れていたところを、神と知られたばかりに人間に奪われたという事例があったそうですからね。』
(俺は良いのか?)
『貴方に正体を明かさなければあの鎖に力を奪われ続けていたでしょう。そうなってしまえば終わりです。
それに…なりふり構っていられなかった状況ではありましたが、一応貴方を信頼しているのですよ?』
(…!)
そう言われてしまうと強く反発もできない。どうしてもというわけでもないし、引き下がるか…
「…なんでしゅか突然ニヤけだして。」
「い、いやちょっと思い出し笑いをな…」
あの会話が聞こえていないクラウンには俺がにやけてしまった理由は分からない。
まさかテレパシーでこっそり話し合いをしていたなんて言えないのでごまかす。
『守さん!』
(悪い悪い…)
一つ深呼吸をして落ち着きを取り戻す。
「ミマはこの部屋に捕まっててな。
助けて連れてきた。」
「クラウンさん、よろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしくお願いしましゅ。」
簡単な自己紹介と挨拶を済ませる2人。
会ったばかりでモメるほど相性が悪いとか、そんなことが無かったことに安堵しながら考える。
(この後どうするか…)
ここは例の彼女が創った世界。
この世界を完成させようとしているならこの世界のどこか、もしくはその近くにいるのではないか。
ならば、ここで例の彼女を捜索するべきだろう。
世界が消滅してしまう前に探し出し、その企みを止める。
それがベスト…いや、そうするしかないのだ。
とはいえ、例の彼女がどこにいるかは分からない。
罠かもしれないこの大量の扉を全て開けていくのは良いとは言えない。即死級のトラップを踏んだらもう終わりなのだ。
「さて、ここからですが…私にお任せ下さい。」
「任せる?どう任せるといいんでしゅか?」
俺の心の声が届いたのか届いていないのか。
どちらにせよ、物凄く頼れる。どんどん任されてくれ。




