表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
603/630

第五百七十九話 それ自体が不思議?実は無計画!?

8月に間に合わせた意味は特に無いです。

時間取れない…

 …どう答えよう。

 真顔でありえないと一蹴するか、真実をそのまま話すか。

 嘘はいけない。いつかほころびが生じてバレるから。けど、もし真実を話したら…


「あれ?お客さんなの?」


 どう答えようものかと考えていると、後ろから声が聞こえた。

 ドアを開けずに顔だけすり抜けさせるという芸当が出来るのは、我が家に一人しかいない。


「れ…令音さん…?」


 何故か酷く怯えながら呼んだのは彼だった。


日蓮ひれん君、相変わらずさん付けが取れてないの。」


「な、なんで僕のことを!?

 まさか本当に令音さん本人!?」


「そうなの。」


「そんなはずは…だって、この前ニュースで死んだって!」


 会話から察するに、どんな関係かは知らないけどお互いに面識はあったらしい。

 そして彼…日蓮は令音が既に死んでいたことも知っていた。


『そう言えば、令音に憑依された日にそんなニュースやってたな。』


 そんなこともあったね。


「確かに、私は死んでるの。

 今の私は幽霊。それなら、死んでもここにいるのはなにも不思議じゃないと思うの。」


 幽霊ソレ自体が不思議だよ。


「幽…霊…そうなんだ、本当に…

 じゃあ、僕の目の前にいるのは正真正銘の令音さん…」


「そうなるの。」


 あっさり令音を信じ、ついでに幽霊の存在も受け入れた。

 いや、受け入れざるを得ないだけかもしれない。現に令音の体は少し透けていて、壁をすり抜けてきたのだから。


「……中学校の卒業式にした約束、覚えてる?」


「うん。

 高校卒業して、気持ちが変わらなかったらまた告白させてほしい。

 ちゃんと覚えてるの。もうその約束は果たせそうにないけど…ゴメン。」


「謝らなくてもいいよ。

 僕は令音さんが死んだことを知って辛かった。

 ずっと絶望しながら生きていくのかと思ってたんだ。

 そんな時にルーマさんを見かけて、一目惚れした。告白もしたけどやっぱり駄目だった。

 それでも諦めたくないって、あの時と同じ気持ちになった。僕の方の気持ちが変わっちゃった今、その約束はもう…」


 令音も日蓮も目を伏せる。


「…………」


「…………」


 重苦しい沈黙が続く。


「なんか知らんけど、勝手に人様の家の玄関の空気を葬式みたいにしないでくれるかい?」


 それを破ったのは全く別の方向から来たお母さんだった。


「ずっと玄関先にいるんなら、帰るなり上がるなりしな。後ろで気まずそうに待ってる誰かさんが見えないのかい?」


 少し開いたドアの向こうにいる光には私も全く気付かなかった。


「し、失礼しました!」


 慌てて出ていく日蓮。


「あ、待って…」


「追うな。」

 少しは頭を冷やさせてやりな。

 令音も少し考える時間が要るだろう?」


 お母さんに引き止められ、玄関に向かっていた足を止めた令音はスーッと壁の中に消えていく。

 交代するように玄関を開けて入ってきた光がそれを少し目で追うと、視線を私に移した。


「途中からしか聞いてなかったけど…どういうこと?」


「私の知ってる範囲で言うと…

 …長くなりそうだから上がって。」


 とりあえず光を私の部屋まで連れていった。







「あいつにあんな過去が…」


 日蓮の意外な過去に驚く光。

 冷静に事情をまとめた私も驚いていた。知り合いだったことにも驚いたけど、あんな約束もしてたなんて…


「チョイ役に重い設定があることは結構あるけど…」


 否定はしないけど、現実の人間にチョイ役って言うのはちょっと…

 …あれっきりだと思ってた私が言えたことじゃないかな。


「…あ、そう言えば。

 光はなんでここに来たの?」


「ちょっと遊びに来ただけ。別に俊太がやらかしたから来たってわけじゃないから安心して。」


「ならいいけど…」


 四か月以上前にはよくあった。

 最近は俊太が何かやらかす以前に何か起きるけど。


 コンコンコン


 ノックの音が聞こえたので、入室の許可を出す。

 誰かは分からないけど、別に見られたくないようなことをしてるわけじゃない。


「ちょっといいかい?」


 ドアを開けて入ってきたのはお母さんだった。


「何?」


「2人とも、ちょっと令音と話してくれないかい?

 日蓮とか言うのはともかく、令音の奴相当気にしてるみたいだからさ。」


「……分かった。」


 なんて言えば良いんだろう。

 口ではそう言いつつも内心必死で考えながら、無計画に令音がいる部屋に向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ