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第五百七十四話 良くないスイッチ?ありもしない希望!?

二週間以上空いた…だと…

「そのまま守を人質に取ってても、タムは折れない、無限の力は手に入らない、まるで無意味よ。

 だから早く解放しなさい。」


「……」


「…そう。

 現実に目をそらして、唯一の優位に縋るのね。」


 解放する気が無いことを知ったギーナは更に言葉による追撃をかける。


「…また現実か。

 またしても俺に立ちはだかるというのか…!」


 良くないスイッチを押してしまった。それを容易く理解したギーナは後悔を後回しにして策を練り始めた。


「……何があったのか、教えてくれないか?」


「………」


「僕はまだ、ジラから修行に行って何があったのか聞いてない。分かるのはそこで何か辛いことがあったことくらいだけだ。

 励ましてほしいならこれでもかってくらい励ますし、悩みを聞いてほしいなら日が暮れても聞き続ける。」


「うるさい…!お前に何が分かる!

 俺を傷つけたお前に!!」


「………」


「例え俺が経験したことを夜が明けるまで話してもお前には理解できない!

 俺が味わった苦しさを、悔しさを!砂粒一つ分もな!!」


 ジラがこうなった理由は自分にもあると、タムは分かっていた。

 それでも、叫ばずにはいられなかった。


「理解させる気が無いだけだろ!」


「!?」


「今、ジラは苦しみを分け合おうとしないで、勝手に一人で抱え込んで八つ当たりしてるだけだ!

 その行動の中に理解させようとするものはあった!?」


「だ、黙れ!」


 守の首にナイフが食い込み始める。

 まだ血は出ていないが、何らかの拍子でそうなってしまうのは目に見えた。


「タム、もうジラを刺激しない方が良いわ。

 少し頭を冷やす時間をあげましょう。」


「分かってる…」


 深呼吸をして落ち着きを取り戻すことを試みる。

 一度、二度空気を吐くたびに熱くなった心が冷めていくのを自覚しながらジラを見据える。


「……癪だが、言ってやろう。」


 頭が冷えたのか、ジラは静かに語り始めた。

 三人は静かに聞く姿勢を取る。


「俺がつい最近まで長い旅をしていたことは知っているだろう。

 その旅の中であらゆる場所の小説を読んで、俺も自分で書いた小説を見せ続けた。

 それで知ったのは世界の大きさと、俺のちっぽけさだけだった…

 自身がすっかり尽きた俺は、失意のままこの村に帰ってきた。

 そこで見たのはすっかり人気になったお前と、その熱烈過ぎるファンだった。」


「それで、妬ましさから守を人質に取ったの?」


「……違う。

アイツはな、俺が昔書いた小説の、設定を盗んだんだ。」


「盗んだ!?」


「タムが!?」


「……そうだ。

 俺もお前が書いた本を読んでみたが、あの主人公の設定は何だ?

 俺が昔書いた小説の設定と酷似しているはずだ。」


「………」


「なあ、嘘だろ?嘘なんだよな?」


「本当、みたいね。」


 タムの様子を見て是非を察したギーナは、ありもしない希望に縋る俊太を引き止めるように言い放った。


「あの小説の主人公、高壁守が住んでいた世界。

 あれは俺が昔…前世の記憶をもとにして書いた小説の世界、❝地球❞。それと同じだな?」


 ジラの問いにギーナも俊太も、タムでさえも衝撃の事実を知り硬直した。

 ジラが前世の記憶を持っていて、なおかつ地球から転生していたことは誰も知らなかったのだ。


「それを知ってからというもの、俺は居なくなったお前が憎くなった。

 俺が帰った時に居なかったのも、俺の帰りを知って逃げたからだと気付いた!」


「違う!僕は逃げてなんかいない!」


「黙れ!事実お前はこの村に居なかっただろう!!」


 強く言い返せば、ジラを更にヒートアップさせる。

 そう思ったタムは自分から落ち着いて話し始めた。


「………言っておくけど。」


「なんだ?」


「僕は君の設定を盗んだ訳じゃない。」


「開き直りか!?」


「そうじゃない。

 ジラが地球から転生したなんて思って無かったし、あの小説の世界が地球を元にしてたなんて今初めて知ったことだった。」


「なら、何故似ているんだ!!」


「…俊太、さっきの紙をジラに見せて。」


「え?あ、ああ…」


 言われるがままに1枚の紙をポケットから取り出し、見せる俊太。


「バカな、それは…!」


「僕にも前世の記憶があるんだ。

 それも、❝地球❞のね。」


 俊太が見せた1枚の紙。

 そこに書いてあった言葉は漢字、片仮名、平仮名。

 そう、紛れも無い日本語だった。

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