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第五百七十話 やっと気付いた?その本人だった!?

「おお、ここだな。」


 指定された店に辿り着いた俊太。

 絵にも地図にも一致していることを再度確認し、店に入る。


「すいませーん!」


「いらっしゃいませー!」


 元気な店員が出てくる。

 店の中にはオカルトチックな物品が置かれている。配置こそバラバラだが、隙間なくみっちり敷き詰められて店に収まっている。


「パズルみたいだな…」


「よく言われるよ。

 それより、ご用件は何でしょうか!」


 よく言われるなよ。

 太郎ならそうツッコむだろうと思いながらタムに頼まれた物を買おうとする。

 そして気付いた。気付いてしまった。

 何を買うのかを教えられていなかったことを。


「………」


「どうしました?」


「何を買えばいいのか…俺には分からない。」


「お客さん!?買う者なんてお客さんしか分からないよ!?」


「俺は頼まれただけなんだ…」


「誰に!?」


「それは言えない…」


「なんで!?」


「個人情報だからだ!」


「確かにそうですけど!」


「テキトーに買うしかない…!」


「…何をお求めでしょうか。」


「これだ!」


「えー…5000ルネソになります。」


「金なら無い!」


「帰れ。」


 一通り漫才をしたところで、俊太は戻って行った。

 彼は何をしに来たんだろう、という思いを乗せた視線に気付きもしなかった。






「よう!どうだったんだ!?」


「えー…それ、訊くの?」


 俊太はお使い失敗の直後にトボトボと歩くギーナと再合流する。

 結果は訊くまでも無い、そんな様子だ。


「主人公補正、侮れないわね…

 居るって話だけでああだし。」


「代わりに、アイツ顔戻ったらとんでもないことになるんだろうな。」


「とんでもないって騒ぎじゃないわ。なんか縄持ってたのも居たし。」


「縄…まあ、人を捕まえるなら当たり前か。」


「!?」


 馬鹿がずれた感性で天才を驚愕させていると、2人の視界にタムの家が映り始める。


「俊太、ちょっと来て。」


「なんだ?」


「いいから!」


 ギーナの勢いに圧され、言われるがままに付いて行く俊太。

 突然の真剣な表情に驚きを隠せない俊太だが、ギーナの視線を辿ってその理由を察する。


「アイツはなんだ?」


「私が知ってると思う?」


 タムの家に近付く一人の男。

 彼の放つ気配にはおぞましい何かが含まれている。


「いや、でかい荷物背負ってるけどさ、それだけじゃね?」


「気付いてないの?」


 …ということに気付いているのはギーナだけだった。


「気配よ。」


「気配…た、確かになんか変だな。

 いや、最初からなんか変だなと思ってたんだ。本当だぜ?」


 見え見えの知ったかぶりに呆れる暇も無く、逸らした視線を男に戻す。


「……改めて見ても怪しいな。

 あんな大荷物、一体何のために…」


「ああ、そうだな…」


「気配にばっかり気を取られそうになったけど、あの荷物も………」


 ピタリ、と2人同時に動きを止める。

 ギーナと俊太、それ以外の人間の声が聞こえたからだ。


「やあ、僕の家の前でコソコソしてるのはなんでだい?」


「「タム!?」」


 狙われている家主。その本人だった。


「なんでだい?」


「……あいつだ。」


 タムはちらりと大荷物を持つ男に視線を向ける。


「ああ、あいつか…

 なんだ、妙に警戒してると思ったら…」


「何?あいつを知ってるの!?」


「知ってるも何も…

 アイツは僕の友達だ。」


 知り合いどころか、親しい仲だったことに驚く2人。

 だが、それと同時に一つの疑問が胸中に生じた。先程感じ取った気配は何だったのだろうかと。

 あれは通常であれば親しい者に対して抱く感情ではない。

 堂々と男の前に立とうと物陰から出て行ったタムを必死に引き止め、3人で隠れた。







「ふむ…居ないか。」


 ずかずかと家に入り込み、一通り部屋を見て回ると誰も居ないことに気付く男。


(しばらく見ていないが、旅にでも出ているのだろうか…

 いや、アイツに限ってそれは無いか…)


 男は過去を振り返り、ふと思いついた可能性を否定した。


『旅なんかに出るよりも、家でずっと物語を書き続けたい。

 僕はそういう人間だからね。残念だけど断るよ。』


 友の言葉が脳裏に響く。

 その度に男の憎しみが増大する。


(あの時、俺の誘いを断ってアイツは…!)


 机の上にのっていた紙をつかみ取る。

 原稿だ。何の物かは考えるまでも無い。


「こんなもの…!」


 振り上げた右腕をすぐに振り下ろすことは出来なかった。

 ゆっくりと机の上に置きなおし、その場を立ち去った。

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