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第五百六十七話 永遠に現れない?必死なポイント稼ぎ!?

お知らせをよく読まずにジャンルで戸惑う間抜けな作者。

その名はじりゅー!あー、びっくりした。

「なにがあったん…あ。」


 封印されていた記憶が少しだけ蘇った。

 あの小説の中では俊太はすべてのトラブルを意図して起こし、本当のピンチの時だけ助け舟を出す。

 そんな親友の成長を図る漢らしい策士という扱いになっていたのだ。

 それを読んだ俺がもしやと一度も思わなかったと言えば嘘になる。しかし、その度に俊太を見て思うのだ。


「この店のメニュー全部もってこいやー!」


 アイツはそんなガラじゃないと。

 そう思わせているのだとしたらあの小説の俊太以上に策士だと言うのだが、アレは完全に本能だ。自信をもって断言できる。


「楽しそうね。」


「ああ。俺たちもあれくらい楽しめればな…」


 俺たち楽しい、暴徒あいつら楽しい。皆楽しい。ウィンウィン。

 そんな楽園が出来上がっていたというのに。


「すいませーん。」


 後ろから声が聞こえた。

 入り口を塞いでいたのでもしかして邪魔になっていたのだろうか。


「あ、悪い悪い。」


 素直に退く。


「あれ?もしかして貴女様はリセ…あ、いや、人違いでした。すみません。」


「気にしなくていい。」


 視線がある場所に止まると言葉を止め、謝ってきた。

 本当に認知されなかった。

 拍子抜けしたが、同時に安心もした。❝俺は❞追いかけられなくて済むんだ…


「って、隣のお方は…!」


「あ。」


 そう、❝俺は❞。


「頑張れギーナ。俺はお前を信じてるぞ。」


 逃げ足をな。


「ちょっと守!貴方だけ回避なんてずるいんじゃない!?」


「え?守?」


 余計なことを…!


「おお!いたなら早く言えよ守!これうめーぞ!」


 お前もか、お前もなのか…!


「守だって!?」


「おいおい本当かよ!また来てくれたんだな!」


「ああ、前は見れなかったから今度こそは拝ませてもらうぜ!」


「で、どこにいるんだ!?ここにいるんだろ?」


 きょろきょろと必死に探しているが、彼らの頭の中にいる存在おれはここにいない。

 そして永遠に現れない。何故なら強制整形させられたから。


「見えないの!?コレが守よ!」


 指を避ける。可能な限り最小限な動作で。


「いないぞ?」


「ついに追っかけすぎておかしくなっちゃったか…」


「ギーナさんマジ苦労人。」


「はぁ!?」


 物語の序盤から主人公を追っかけてるからな。あの小説では。


「あれー!おかしいぞー!さっきまでそこに居たのにー!サインだって貰ったのにー!」


 わざとらしく叫ぶ。


「サイン!?」


「くっ…羨ましい…!」


「あの方は必ずこの世界に来ている!捜せ!」


「ギーナさん。貴女の旦那様は必ず連れて参ります!」


 口々に飲食店を出ていく民衆。

 それから一分を待つ前に店主すら居なくなっていた。

 ギーナにいくらか集まると思ったが、そんなにポイントを稼ぎたいのだろうか。


「なあ、どんな手品使ったんだ?新しい魔法か?」


 料理を口いっぱいに詰め込んだまま喋る俊太。汚い。


「いや、あいつらが認識してるのは顔が変わる前の俺だからな。

 俺は下手な演技くらいしかしてない。」


「本当に下手だったな。」


「そうだな。

 自分でももっとうまくできなかったかはっ…」


 すぐ隣にあった怒りと羞恥の気配。

 その矛先が突然自分に向いたことを理不尽だと思う前に建物の壁にぶつかり、突き抜けて地面に転がった。







『聞こえますか?』


 誰かの声が聞こえる。

 意識がぼんやりしていて誰かまでは分からない。


『気を付けてください。

 この世界でも貴方方に…ん……て…』


 ノイズがかかっていく。

 意識が覚醒していくと同時にノイズが強くなることに気付いて違和感を感じる。

 間もなく、ノイズごと声が消えた。

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