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第五百六十六話 進化は宿命?正攻法(邪道)!?

「二度目になるな…」


 すこしげんなりしながらも一軒の家に目を向ける。

 この世界にはいい思い出が無かったので、できることならもうこの光景は見に来たくはなかったのだが…

 行きたくないから行かなくていい、世の中はそんなに都合よくできていないのだ。


「来てくれたことには感謝するけど…」


「本当か?本当にここなら俺も人気者なのか!?」


「なんで私まで?」


「どうしてまた道連れを?」


「どうせ分かってるんだろ、説明はしない。」


「根に持ってるなこりゃ…」


 何も思っていないとでも思っていたのか。

 ちなみに道連れを二人程用意したのは暴徒ファンを分散させるためだ。

 俊太は多分喜々として暴徒を引き付け、ついでになにかしらの対応もして時間を稼いでくれる。

 ギーナは…あの作品内でメインヒロインっぽい扱いを受けていたため、かなりの数を引き付けてくれるだろう。

 流石に20人もいるメンバー全員を連れてくるのは大変だったため厳選して選んだ。

 誰も来ないどころか近付きすらされず、一部のメンバーの心に傷を残すという事態を防ぐという意図も無いわけではない。まだ登場すらしていないメンバーも居そうだからだ。


「あ、そうそう。

 ちょっと世界を移動する機能を付けた障壁くれない?」


「なるほど、逃げる気か。」


 以前の俺ならよく分からないまま貸し与えていただろう。俺も少しはギーナの思考に付いていけるようになったらしい。

 進化し続けるのは生物としての宿命なのかもしれない。


「そうじゃなくてちょっと忘れ物を」

「演技すごいな。鍛えられただけある。」


「それほどでも…あ。」


 あっさりかかったな。


「じゃあ、まずはここで暴徒が来るのを待つぞ。

 タムは部屋に戻ってのんびり掃除でもしてるといい。」


「そのために連れてきたからね。

 じゃあ後はよろしく!」


 タムは閉められた扉の奥に消えていった。

 …あ。


「さて、タムも行ったし帰らない?」


「それは出来ない。」


 気付いてしまった。


「あの障壁タムに預けたままだったからな…」


 言っても返してはくれなかっただろう。サボり防止の為に。


「じゃあ、今すぐ創って?」


「無理。」


 まだあの能力が目覚めていないので無理だ。

 性別を変える手段でもあれば………いや、逆に考えるんだ。盗んじゃってもいいさと。

 よくわからない横道にそれるより、正攻法で攻めるべきだ。

 前回の二の舞を踏む訳にはいかない。今回は既に世界を移動する手段が存在している。

 ここは仕返しも兼ねて…いや、ちょっと待て。

 この思考もタムに読まれているのではないか?もしかして、すべてがタムの思い通りに…


「おい、あそこにいるのは…」


「もしかしてもしかしてる!?」


 日本語おか…日本語じゃなかった。


「逃げよう、嫌な予感がする。」


「同意するわ。」


「え?なんでだ?」


 1人事態を把握していない俊太を残し、その場を走り去る。

 村の外れに、それだけを考えて森へと踏み込んだ。







「なんで分かれなかったんだろうな。」


「そうね。」


 何故か一緒に走ってきてしまった。

 分かれた方が暴徒の分散ができるというのに。

 そもそも、思わず逃げてきてしまったが元々は暴徒の誘導が目的でここに来ていたのだ。誘導する前に逃げてしまっては意味が無い。


「多分、残された俊太は必死に逃げてるんでしょうね…」


「ああ、人気者がどうとか言ってられない状態だろうな。」


「……」


「……」


「「戻ろう。」」


 現状では俺たちよりも俊太の方が一番仕事している。

 なのに俺たちだけサボり、のんびりしているわけにはいかない。

 あのバカに先を越されてたまるか。

 逃げて来た時ほどの勢いは無かったものの、俺たちは来た道を引き返す。

 俺とギーナの心は今、一つになっていた。


『酷い理由だね。』


 心の奥底に眠らせていた本音を瑠間が引きずり出した。






 タムの家の前に戻ったが、俊太の姿は無かった。

 やはり、あの俊太でも迫りくる暴徒に恐れをなして逃げたのだろうか。


『でも、現時点では俊太が一番働いてるよね。』


 今日は妙に瑠間が毒を吐いてくる。

 いっそその辺の木に頭を打ち付けて強制的に引きずり出してしまおうか。


『それだけは勘弁して。』


 あ、でもこいつ誰だって意外と相手にされないかもしれないな。

 あの小説の時系列はこの世界に来る前で止まっている。それ以降に俺はこんな顔になり、瑠間という存在も生まれた。

 よって認知度はゼロのはずだ。最悪リセスのそっくりさんで終わるだろう。主に胸のせいで。

 …ん?じゃあ今の俺は高壁守として認知されないんじゃ…


「なんだ、美味いじゃねーか!」


 色々と考えていると、どこかから俊太の声が聞こえた。

 その姿は見えない。


「もっと食っちゃってください!俊太のアニキィ!!」


 今度は聞きなれぬ声が聞こえた。

 が、聞き捨てならない名前が出たのは確かだ。会話からするに俊太は食事中らしい。


「代金は俺達で持つんで!その辺は気にせず飲んで食って騒いで下せえ!」


「おう!酒はやめとくけどな!」


 声と料理の匂いを頼りに俊太を探す。

 その先にあった建物の中を覗くと、宴会を思わせる賑々しい人々と何故かその中心にいる俊太の姿があった。

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