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第五百六十四話 気分だけでも?とりあえずそうしとく!?

「守…二度と会えないと思ってるかもしれないけど、未来で絶対に会えるからそんなに気を落とさなくても良いわ。」


 タカミは俺を慰めるように、落ち着いた口調で話し始めた。

 普段のお転婆はなりを潜め、この瞬間だけは本当の天使のように見えた。

 絶対、か…タカミが言うならそうなんだろうな。


「ああ、分かった。

 なら、俺はその時まで待ってるからな。

 久々に会ってもハリセンで叩いたりはしないでくれよ?」


「叩けるわけないじゃない、だって…あ、これ以上はまずい。」


「おい、ちょっと気になるだろ。そういうのは止めてくれ。」


「気にしないで。禿げても知らないわ。」


「禿げられない頭になったけどな。」


 女神さまの罰の数少ないメリットだ。他のデメリットがでかすぎて目立たないが。


「なんかゴメン…」


「気にするな。」


 心の汗なんか流れていない。

 俺は俺の涙腺を信じる。この程度では屈することもないと…!


「ぐっ…」


『屈したね。』


「うるさい…」


「…なんか知らないけど、とりあえずさっさと守を帰してあげたら?」


『そうだったな。

 では、守を元の時代に帰還させる。守は特に何もしなくていいぞ。』


「もしそうでも目をつぶれとか何でもいいから言えよ…」


『なら好きにしろ。』


 好きにしろじゃねーよ。お約束というのが分かっていないのかお前は。

 もういっそのこと気分だけでも味わおうと目をゆっくり閉じる。


「またね、お父さん。」


 狭まっていく視界の中で、天使は微笑んだ。






 目を開けると、誰も居なくなったリビングで立っていた。

 ゲームの世界に行く前となんら変わりない。一つ、タカミが居ないことを除けば。


「…またな、絶対に。」


 届かない声だと、分かっているのに言わずにはいられなかった。

 永遠の別れをした気持ちが少しだけ分かったような気がした。

 1人でかっこつけて誰も見ていないことを確認すると、自室に向かった。

 よく考えてみれば夕食を終え、風呂に入るまで後は部屋でうだうだするなりなんなりする時間だ。

 体感時間ではもう1、2日くらい経っているようなものなので、早く寝たい。風呂は朝でもいいだろう…

 自室の扉を開ける。別にリビングから自室まで何キロもあるわけじゃないのですぐに着く。


「ん?」


 ふと、机の上のノートが目に入った。

 このノートには見覚えが無い。誰かが置いて…いや、俺の部屋には入ってないだろうから違うか。


「日記?未来?」


 …これはアレだろうか。

 未来のことが記された日記とかそんな危ない代物なのだろうか。

 放っておきたい衝動に駆られながらも、勝利してしまった好奇心に従ってノートをめくる。まずは一ページ目…


 月 日(日にち分かんない)


 分からんのかい。

 まさか、いつかわかんないけどこんなこと起きるよー的なタイプの予言なのだろうか。

 続きを読んでみよう。


 噂を信じて落ちた先で出会ったのは、見知らぬ森の光景と私の父親と全く同じ名前を持った少年だった。

 話の流れで過去に来たってことになったけど、ありえない。同姓同名なんて日本じゃよくある話だから。

 なのに…なんで似てるの?

 次回、衝撃の変貌!


 …次回予告か。

 なんだろう、ものすごい既視感がある。これ未来で起きることだよな?

 そして一人称。なんで私なんだよ。俺だろ。


『まさか、私視点…!?』


 なるほど。

 とりあえずそういうことにしておこう。


 罰が解かれたはずなのに、あまり変わらない私の父親の顔。

 その顔は、今もなお変わっていない彼の顔そのものだった…まさか本当に?

 次回、


 ……


『続きは?』


 無い、な…

 なんか二つ目も既視感がすごかったな。


「あー!何人の日記見てるのよ!!」


「『え!?』」


 ありえない声が聞こえた気がして驚きの声を上げてしまった。

 いや、これは気のせいだ。きっと強敵との戦いで疲労がたまっただけなんだ…


「こっちを見なさい!」


「ホワイ!?」


 また声がしたので振り返ると、そこにははっきりとタカミの姿が映っていた。


「なんでお前…未来に帰ったんじゃなかったのか!?」


「え?帰った?」


 なんで何も知らないみたいな態度をとっているんだ。

 ここにきてとぼける意味あるのか?


「え、ちょっと待って。話を勝手に整理していい?」


「…ああ。」


「えっと、まず私はあんたにドッキリを仕掛けに来た。」


「ああ…どうやってだ?」


「そりゃ、思いついてすぐにしたら対策とられるかなって思って…忘れた頃にタイムスリップしたんだけど。」


「ああ、つまりお前は過去のタカミってことか…あ。」


 やらかしてしまった。

 タカミがその内帰るという、盛大なネタ晴らしを。


「ねえ、守…私、未来に帰ったの?」


「……そうだ。」


「………」


 いずれ来る、俺たちと別れて一人で未来に帰るという運命に絶望してしまったのだろうか。

 タカミは俯いたまま喋ろうともしない。


「……あー、良かった。」


「え?」


「いや~、いつまでこんな騒がしいとこに居なきゃいけないのかなって、最近思っててね。

 永遠に帰れないかと思ってたから安心したわ。」


「…そうか。そりゃよかったな。」


 治せ、さっきできた小さな俺の心の傷を。


「じゃあさっさと帰るわ。あ、それ返して。」


「あ、おい!」


「何?私のだから返さないけど?」


「どこが未来の日記だよ!」


「………だって、読んでくれなきゃドッキリできないじゃない?」


 ああ、俺に読ませるためにそんなことを表紙に…

 とか考えているうちにタカミはいなくなっていた。過去に戻ったらしい。


「なんだったんだ…」


『タカミはイタズラ好きだから…』


「しかし、悪いことしたな。」


 ぼんやりと、フローリングに落ちている滴を見つめる。

 後のことは過去の俺に任せよう。どうせ追っていくことすらできない。

 …待てよ?


「まさかタカミ…」


 未来で絶対に会えるってこのことだったのか!?

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