第五百六十一話 どう考えても不要?あっさり名乗り出た!?
「なあ、このクエストにしてみないか?」
「良いけど、ここまであからさまな条件が揃ってると罠みたいで…」
ギルド的な建物のクエストボードモドキの前でなにやら話している。
雰囲気を出すためか、張られている紙の文字は読めない。
問題無く3人が読めていることからゲームのプレイヤーなら読めることはわかるが、プレイヤーでもNPCでもない俺にとっては不親切極まりない。
なので条件がどうの、という話には全くついていけない。
そんな俺を見かねたか、タカミが助け舟を出してくれた。
「今私達が見てるクエストだけど、クエストの参加条件が今の私達に合いすぎてるから受注を躊躇してるわ。
なんでも、同行人数は3人、女性2人男性1人、羽が無い性別の紛らわしいNPC同伴」
「確定じゃねーか。あと最後ふざけんな。」
性別が紛らわしいはどう考えても不要だ。羽が無いNPCすら俺しかいないのに。
『帰還用のクエストを……紛れ込ませた…』
ノイズがかった声が脳内再生される。
その直後昨日の夢を完全に思い出し、そのクエストは世界の意思が紛れ込ませたものだと確信した。
元の時代に帰ったら条件の一部を問いただせてもらおう。
「そのクエスト、受けるように言ってくれ。
それを達成すれば俺は帰れるらしい。」
「え!?
……ねえ、2人とも聞いて。」
「なんだ?」
「なに?」
「そのクエストは…罠よ。」
「待て、逆だ。」
頼んだことの180°ひっくり返した行動をとったタカミにツッコミを入れる。
条件では3人必要だから俺帰れなくなるんだけど。
「……冗談、今のは忘れて。
これを受ければこのNPCのイベントはクリア、お別れってことになるわ。」
タカミがちょっと残念そうにしているのをあまり見ないようにしながら2人の判断を待つ。
そこまで帰したくないのだろうか…いや、もしかして…
「…そうか。
ちょっと残念だな。」
「昨日1日とはいえ、楽しかったからね…」
2人も名残惜しそうだった。
俺もそんな気持ちはあるが、いつまでもここに留まっているわけにもいかない。
何度も言うが、この世界の魔物は異世界のそれとは強さが全然違う。
3人はログアウトできるが俺はできず、もし俺一人になった時町から出れば確実に生きていけない。
生きるために、そして元の時代で待っている皆のために、どんな辛い道だろうが帰らなければならないのだ。
その心情は奇しくも、まさしく俺が最初に異世界に来た時と同じだった。
魔物の一匹すら出ない。
そりゃ、辿り着けるかどうかも分からない超危険なクエストなんかを用意して俺が死んでしまったら元も子もないだろう。当たり前と言えば当たり前か…
「不気味ね…何も出ないなんて。」
「ああ…」
俺も念のため警戒はしているが、無駄に精神をすり減らすだけになりそうだ。
森の奥にあった洞窟をしばらく進むと、人ほどの大きさがある石碑と、両隣にある台座が見えてきた。
「なんだアレ?」
「何か書いてあるような…」
この洞窟にはご丁寧に松明が壁に刺してあるので、暗くて見えないなどということはない。
近づいて見てみるが、俺には読めない。こうなれば3人が読んでくれるのを待つしかない。
「え~と、
『この先に進みたくば2つの魂を差し出せ。
さすれば道は開け、差し出された2つの魂はこの場を離れる…』
…誰か2人は進めないってこと?」
そうなるのだろう。
この場を離れるという言い回しがよく分からないが、とりあえず誰か2人をリタイアさせなければならないということだろうか。
「じゃあ、私はリタイアする。」
「俺もだ。」
あっさりソウカとマルタがリタイアを名乗り出た。
「え?本当に良いの?」
「そのNPC、連れてきたのタカミでしょ?責任持って帰してあげて。」
「残るのが2人なら守は必ず残すとして、俺達2人のどっちかが残ってどうする。
それに、リタイアなんてしたくないって顔に出てるぞ。」
「……じゃあ、お願い。」
「了解、じゃあな。」
「またいつか、会えたらいいね。」
「ああ。またいつか、会えるといいな。」
2人は石碑の両隣にある台座に乗る。
2人は青い柱のような光につつまれ、天へと、いや天井へと昇っていく。
岩に阻まれる前に2人の姿は青い光の玉に変化し、洞窟をすり抜けていった。
しばらくして青い光が消える。
ズズズズズ…
「何!?」
大きな地響きが洞窟を揺らす。
台座が地面に沈み、石碑が真ん中から縦に避けていくのが目に入った。どうやらこれで良かったらしい。
「……進むぞ。」
「ええ。」
2人の犠牲によって開けた道を歩む。
その先には…
『クエストクリア、おめでとう。高壁守、タカミ。』
世界の意思が待っていた。




