第五十五話 こいつは強敵?まさかの事実!?
何か今回は時間かかったな…
「貴様か?俺に何かを落とした奴は?」
谷から飛んできた、人らしきものは、外見こそ強さを感じないようなひょろい青年だが、
青年から出るあの時のフォルフを上回る殺気のせいで、俺に勝てないという意識を持たせる。
「ああ、そうだ…」
俺は嘘が通じるとも思えず、諦めて正直に言う。もう俺は駄目かもしれない…
「…そうか。では、少なくとも、事情はあるんだろうな?この程度の殺気で動けなくなるのであれば、自発的に挑んでくるとは思えないからな。」
「この先に、一つの村がある。俺はその村に、ここに来る怪物を退治してくれと言われた。」
「まあ、この先に村があることは知っていた。そもそも今向かっていたところだからな。…古い友人に会いに、な…」
「な!?友人!?だったらなんで今の姿で向かわないんだ!?さっきまでの姿じゃ、警戒もされるだろ!?」
しまった!殺される!
「…ああ、だから退治してくれと…納得した。騒がせてしまったようだな。すまない。」
「え?あ、いえ、こちらこそ…」
あれ?意外といい人だった?
「しかし、どうしたらあんな怪物みたいになれるんだ?一体あんたは何者なんだ?」
思い切って訊いてみた。後悔も反省も…するかもしれないが。
「ああ、俺は”数多姿族”の一人だからな。」
「”数多姿族”?」
聞いた事がない。一体何なんだ?
「知らないのか。まあ、数多姿族のことを知っているのはごく一部の地域だけだからな。
数多姿族というのは、”自分の姿を変える力”を持っている種族だ。その力は遺伝していくため、遺伝することの無い、”能力”とは別物に分類されている。」
「へえ~そいつはすげえや。で、何であんな姿で村に?」
「それはだな…」
「お~い、守~?大丈夫~!?…その人、誰?」
『お前は切り替えが早すぎだ…で、そこの奴は何だ?』
奴が答えようとしたところで、キャビ達が来た。
「ああ、あいつはさっきの怪物だ。数多姿族とかいう種族の力であんな姿になってたらしい。で、なんであんな姿に?」
なるべく簡潔に答え、奴の返事を待つ。驚く暇なんて与えさせん。早く理由が訊きたい。
「それは魔力の温存のためだ。数多姿族の力は、変化する姿にもよるが、相当な魔力を使う。特に、大きさに差があるとな。
だから俺は非常時のために、ある程度の魔力を温存しているのだが、そのほかの魔力が尽きていてな。それで、魔力が回復するまで、あの姿になっていた。
まあ、予想外の事態が発生して非常用の魔力を使って、今に至るというわけだ。」
俺を見ながら言うな。
『そういえば、自己紹介がまだだったな。俺はフォルフだ。』
「…あたしはキャビ!」
なんか間があったのは恐らくお仕事モードから戻ったからだろう。
「俺は守だ。」
「俺はジルムだ。」
あいつ、ジルムって言うのか…
「俺は続けて村に向かうが、お前達は?」
「俺たちも向かうよ。じゃあ、行くか。」
俺たちはジルムも加え、村へと戻って行った。




