第五百四十四話 直訳すると?そういう症候群!?
「で、これどうすりゃいいんだ?」
俊太は俊太らしからぬ冷静さで女神様に尋ねる。
俺はというとorz
『え~…私の力では元に戻せないかと。』
「じゃあ皆の印象に残った事を再現して、俺達のことを思い出せ~!みたいな感じのことをすれば元に戻るのか?」
『二年分の記憶を消されたのではなく、精神を若返らせただけなので皆さんのことは忘れていませんよ。
なので前提条件として成立しません。変な称号をつける事が可能な程ですからね。先程なんと呼ばれたか忘れましたか?』
先程…え~と、俊太がスピードマスターで移図離がワープマスター。片方でいいからマスターから離れろ。ほぼ能力だろ。
ギーナがインフィニティマジシャンで、俺がアウトオブヒューマン…確かに、言い得て妙だ。
俺たちのことを知っていなければこんなあだ名を思いつくことも無いだろう…
「ってちょっと待て。誰がアウトオブヒューマンだ。」
「…直訳すると人の外。」
「ふふっ。」
「ハハッ。」
「笑うなー!命が惜しかったら笑うなー!」
なんで人を人外扱いしたがるんだお前らは。
そう言えば、中学時代に友達のすげー伝説をでっちあげるって遊びが流行ったような気がする。あれと同じなのだろうか。
「…?」
2人が笑う中、移図離だけが入って来たドアを不思議そうに見ていた。
何かあるのかと思って見てみると、特に何も無い。
「どうした?何かいたのか?」
「…目が見えた。」
は?
え?突然当たり前のことに感謝したくなったのか?そういう症候群なのか?
「なんだ?当たり前ありがとう症候群にでもかかったのか?」
俊太と同じ思考回路をしていたのかと思うともの凄く嫌な感覚に襲われる。
なんだろう、日頃バカと言っていることに対する天罰なのだろうか。自分をバカと言っているような錯覚を覚える。
「私、俊太と同じ思考回路だったのね…」
ギーナもだった。
根本的なところは似てるけどな。
「…エッセイとか苦労話の小説読んだ後によく発症するアレ?」
「え?あんの?」
「…知らない。」
おい。
「…よく見て。
この部屋、居るの皆じゃない。」
言われてみて気付いた。
この部屋でどんちゃん騒ぎを繰り広げていたのは、今回城に行かなかった旅のメンバー全員ではない。
そう例えば…
「……大丈夫なの?」
廊下から聞こえてくる声。
この声は…誰だ?
「恐くないの?」
再度問われる。
恐いって誰がだ?
「…ギーナ、妹?」
「もしこの声がそうだとしたら、大騒ぎした後父上と母上に問い詰めるわ。」
ギーナの妹ではないらしい。というか居ないらしい。
「恐い…もしかして、中二病とか言うのに関係が?」
なるほど。
この声が言う恐い、と言うのは精神操作によって攻撃的な中二病になった状態のことだ。
なんか叫びながら能力を撒き散らす様はさぞ恐ろしいだろう。
よって、この問いに関する答えは…
「大丈夫だ、問題ない。
おれはしょうきだ!」
『駄目なスラング並べないでよ!』
心の中からツッコミが返ってくる。
瑠間は俺が望んだツッコミを返してくれるから良い。何故なら自分自身だから。
…あれ?これって1人芝居じゃね?
「良かった…皆いきなりおかしくなっちゃって…恐かった…」
濁点がつきそうな涙声が返ってくる。よほど心細かった事が窺える。
「大丈夫だ、俺達も居ただろう?」
「そうだ…
お前は一人じゃない…
オレ達もいる…」
「そうよ、だから元気出して。タカミちゃん。」
「「「「・・・・・・え?」」」」
今、なんと言った?
『・・・・・・え?』
そっちじゃない。というか間まで再現しなくても良い。
その前だその前。信じられない人物の名前が出てきたような…
「う…ん…」
変わらない涙声と同時に、目をこすっているタカミが現れた。
その翼はしゅんと下がっており、手は涙で濡れている。
そんな普段ならありえないタカミの姿を見て、俺は自分の正気を疑った。




