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第五百三十四話 雑な性格?オブラートも無い!?

「コイツはほっといていいか?」


「そうだね、ほっとこう。」


「お、お前ら…」


「お前は何者だ?」


 元迷子と意見が合ったという事もあり、早速リベルをスルーして元迷子の正体を単刀直入に訊く。


「そうだね…数多姿族って聞いた事ある?」


「数多姿族…なるほどな。」


 納得がいった。

 数多姿族はその名の通り幾つもの姿に化けられる。

 人間の子供の姿に化けるなど、造作も無い事だろう。


「へぇ、珍しいね。数多姿族を知ってるなんて。

 大体の人は疑問符を浮かべるのに。」


「何回か会った事があってな。

 だから驚いたり呆けたりしてるところを不意打ち、なんて事も出来ないわけだ。」


 元迷子の眉がピクリと動き、アイツが動揺したことが伝わる。

 不意打ちを狙っていたのは気配で分かっていた。

 ただ、目の前に居てどうやって不意を突くのか、というのは疑問だったが。


「それもばれてたみたいだね。」


「まあな…」


 心の中で戦闘の準備をしながら一言返す。

 どうやら実力行使に出る気らしく、元迷子の害意、というより敵意が徐々に高まっていく。


「僕が次に何をするか、分かってるみたいだね。」


「ああ、逃げようとしてるんだろ?」


「そうだよ。」


 次の瞬間元迷子は走り出した。

 しかし、その方向の先にあるのは曲がりくねった暗い路地ではなく俺。そう、俺に向けて走ってきているのだ。

 その速度を乗せた拳をこちらに向けてきた。小さな子供にしか見えない今のアイツからは想像もできない速さだ。


「!」


「ただし、俺を倒してから、だろ?」


 しかし、対応できないほど速いわけではない。

 気配による先読みでその拳の軌道は分かっているので、拳をつかんで止めた。その攻撃が軽いものだったからだ。

 いくら速度が乗っていても、中身がなんであろうとも、姿かたちは小さな子供だ。

 質量が小さい故に、フォームや力の伝え方でどうにかするには限界がある。

 同じ速度、同じ物質でも、質量が小さければエネルギーは小さくなるからな。


「まるで攻撃がどこに来るか、分かってるみたいだね。」


「ああ、ちょっと気配察知でな。」


「便利すぎるよねそれ…!」


 拳を俺の手から引き抜こうとしているが、当然びくともしない。

 いつまでも子供の姿で居るからだ。せめて撒いた時に別の姿にでもなればよかったものを。


「…便利と言えば、数多姿族の能力も便利だと思わない?」


「そうかもな。」


 もの凄く強引な話の切り替え方だと思いつつ返す。

 先程の撒き方と言い、割と雑な性格なのかもしれない。


「だって、自分の姿を変えられるんだよ?

 こんな風に、ね!」


 突如拳を引く力が強くなり、力の変化に対応する前に拳が引き抜かれた。

 何が起きたのか、それを確かめるべく拳に目を移そうとすると、いつの間にやら丸太のようになっている腕が目に入った。

 手や頭など、他の部位の大きさは変わっておらず、腕の太さだけが変化している。

 オブラートも何も無い言い方をすると、気持ち悪い。下手過ぎる合成写真のようだ。


「腕だけ重いだろ、それ。」


「…ばれた?」


 拳を引き抜いた後の腕はだらりと下がり、拳が地面に付いていた。

 腕はマッチョ他は子供、となれば少し考えれば分かる事だ。


「一瞬でいいから、ちょっと時間くれない?

 他の部分も変わるから。」


「いいぞ。」


 ずっとその見た目で居られるのは俺としても嫌だったので、了承する。

 倒した後に腕が重くて運びづらいとか、そんなこともありそうな気がした。

 そんなことを考えている間に、変化はもう終わっていた。


「これで、実力が出せるってもんだ。」


 少し口調が変わっているように思えるのは姿が変わったせいか、はたまた元の人物に思考が引っ張られるのか。

 それはともかく、その姿は小さい子供からダンディーなマッチョボーイへと変貌していた。とんでもないビフォーアフターだ。


「ふん!」


 元迷子(現マッチョ)は、俺に対して待ってくれた礼も言わずに拳を突き出す。

 軌道が丸分かりだったので、気配察知を使わずに予測して拳を受け止める。

 その重さは先程とは比べ物にならない。


「ぐっ…!」


 やはり、重みが加わっただけで断然違う。


「一発でこれか!?」


 受けきれないと思った俺は拳をいなすと、逆の拳が迫っていることに気付いた。

 恐らくそれを避ければまたその逆の拳が、その次には…

 ラッシュを予測した俺は、気配察知で拳の軌道を予測しようとした。

 だがそれは適わなかった。


「うっ!?」


 何故なら、その瞬間別の場所から強い邪気のようなものが感じられたからだ。

 その発生源は…地面に倒れたままのリベルだった。


「おっと…計画通り、気配察知を使ってくれたみてえだな。」


 湧き上がる破壊衝動を必死に抑え付け、頭を抱えてうずくまる。

 敵の術中にはまったことに悔やみながら、俺はきつく目を閉じた。

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