第五百三十二話 順応性高い?一人っ子故に!?
休みが…休みがもっと欲しい…!
「さて、このあたりで良いか…出て来い、リベル。」
人影が無い場所を探し、誰にも気付かれないように移動した。
だから少し騒がしくても見向きもされないだろう、祭りなので恐らく向こうのほうが騒がしい。
「バレてましたか…」
「気配を隠せ、でなきゃバレバレだ。」
後ろの方で隙を窺っていた事は手に取るように分かっていた。
強い怨念のような気配は消しきれないらしく、害意がある事は明白だった。そのことから色々な推察を介してリベルではないかと思い至ったのだ。
「おや?以前と雰囲気が違いますね…」
「ああ、お前は知らなかったか。
俺は俗に言う二重人格って奴でな、実は俺もお前とは初対面だ。
もう一つの人格からその存在は聞いたから、俺の方はお前の存在は知ってたけどな。」
「なるほど。」
「なるほどで済ませられるのか…順応性高いな。」
「半分理解することを捨てているので、褒められる事ではありませんよ。
ところで、以前のような暴走は?」
「一度あんなことになって、対策を怠らないとでも?」
俺は日常生活の中で、気配察知をオフにする訓練していた。
オンオフは未だにできていないが、その過程で生まれたのが度合いの操作。
それを使えばこいつの気配で暴走したりはしないはずだ。
「そうですか…それなら少し安心しました。」
「安心するのか…って、そりゃそうか。」
危うく死ぬところだったという話だったので、安心するのも無理もない。
「そろそろ駄弁るのも止めしたいところだけどな、一つだけ訊かせてもらう。
どうやってボディーガードになった?」
「元々のボディーガードを叩きのめす以外に何か手段が?」
「意外と脳筋だなお前。
もっと策をめぐらすタイプだと思ってたぞ。」
「いえ、そうでもありませんよ。
今も俺の作戦は続いています。」
「へぇ…」
ハッタリか、本当か。
それを確かめるべく、まずは気配を探る。
なんだ?近くに気配が…しまった。
リベルの気配を警戒する余り、この辺りには本当に人が居ないかを気配で調べていなかった。
あの気配が作戦に何か関係が?しかし、ここでリベルを逃すか?
「どうしました?」
余裕を十二分に表した笑みを浮かべるリベル。
迷っている間にもあの気配は遠ざかっていく。このままでは確かめようもなくなってしまう。
「くっ…!」
俺はリベルの気配をマークし、もう一つの気配を追うことを選んだ。
これならリベルがここを離れてもどこに行ったかは分かる。
「待て!」
追っていた気配の持ち主の背中が見えてきた。
リベルの気配は…人混みに紛れようとしているのか?多くの気配…恐らく祭り中の民衆の元へ行こうとしている。
そうはいくか。コイツをさっさと捕まえて、その後にリベルも…!
「さあ捕まえたぞ!お前は何をしようとしていた!!」
肩をつかむと、振り返ったのは小さな子供だった。
「え…おねえちゃん、なんで怒ってるの?」
「おね…!」
性別を訂正しようとしたところで、リベルの気配が突然消えた。
まんまと出し抜かれたことに気付いた俺は、強く握った拳を地面にたたきつけた。
「よしよし、恐かったね~、ゴメンね~。」
「ひっく…」
突然必死の形相で迫られ、近くで地面を殴ったのを見た小さな子供は当然ながら泣き出してしまった。
俺は今その子供を必死にあやしながら大通りに戻り、ついでに後は親に任せて退散しようと思って歩いていた。
無責任かもしれないが、俺は子供には慣れていない。一人っ子故に。
「おねえちゃん…」
「何?」
性別を訂正したいところだが、今俺はリセスとしてここに居るのでそれはできない。しかも今は女だ。
そういうことなので訂正はしないし、何も言わない。
「おなかすいた…」
「え?」
今しがた聞いた発言に疑問を覚えつつ、自分の腹もチェックする。
俺の腹も大分減っていた。
「……」
「おねえちゃん?」
何か食べようか、と口にしかけて気付いた。
俺一銭も持ってない。食べ物なら溢れるほど近くにあるのに。
かろうじて保っている笑顔が引きつってしまいそうだ。
もし金が無いから買えないとか言ったら…
『ごめんね~、おねえちゃんもお腹空いたんだけど、お金が無くて』
『うわーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!』
容易に想像できてしまった。
まずい。可能な限り間を空けず、なおかつ大泣きしない返答を考えなければ…
幸い俺は一人じゃない、瑠間と女神様も含めれば3人。3人寄ればと言うじゃないか。
この場合のベストなアンサーなど簡単に導き出す事ができるはずだ。
『あ、私はここ数百年子供に会っていないのでパスで。』
『私も子供慣れは…』
…えー。
暗雲立ち込めるの早すぎやしないか?




