第五百三十一話 ふざけた依頼?無用な親切!?
な、なんとか年内間に合った!
二週間以上も待たせてしまって申し訳ありませんでした。
「は!?それは本気かよ!!」
俺は思わず声を荒げてしまった。
リセスの顔パスにより王様の部屋まで通された俺たちは、旅が終わってリセスが帰ることを伝えに来た。
それが無事に終わり、後はリセスを残して帰路に着く…はずだったが、何故か俺だけ王様に呼び止められてしまった。
「本気だ。
お主を我が娘、リセスとして祭りに参加してもらう。」
理由はこれだ。
個人的にはかなりふざけた依頼だと思っている。
「すまないとは思っているが、リセスには別の用事が入っていてな。」
「別の用事?
祭りがあるのにか?」
「そうだ。
一応相手の国もこちらの都合を知っているはずなのだが…どうもこの時期でなければならないらしい。」
相手の国、というからには国がらみの事情なのだろう。
俺がなるほどな、と呟いて頷くと、王様は続けた。
「それだけではない。
いつ反逆者が現れるか分からないということもある。
リベルの件で、我々も思い知らされた節があってな。」
なるほど、王女が危険な目に遭うのはまずい。
ただ、そのために一般人を影武者にするというのはどうなのだろうか…
「一市民に任せるというのは心苦しいが、お主はあの剣に認められたのだ。
故に何が来ても問題ないであろう。」
「いやいやいや、何か来られたらやばいだろ。俺は至って普通の一般人だ。」
「心配はいらん。あの剣は何か特別な基準で持ち主を選んでいたはずだ。
それをクリアしたお主ならできる。」
揺るがない自信を表す王様の目を見て、俺はこの前デュア本人から直感で選んだと聞いていたことを言えなくなった。
俺はたまたま選ばれただけで、特に偉いわけでもないと個人的には思っている…のだが、妙な信頼を置かれているらしい。困った話だ。
「王家は偽らないんじゃなかったのか…」
化粧も禁止してるくせに、と心の中で付けたす。
「案ずるな、祭りが終わったら話す。」
「偽る事には変わらないんじゃないのか?」
「うむ…
最悪、わしが全責任を…」
「分かった、この依頼は引き受ける。」
「…感謝する。」
王様の覚悟を知ってしまった俺は、断るという選択肢を取る事ができなかった。
「それと、もう一つ頼みたい事がある。」
「なんだ?」
「このことはリセスに言わないで欲しい。」
「…分かった。」
「国王様ー!」
「王女様ー!」
女王様はリセスの用事とやらに同伴しているらしいので、彼女を呼ぶ声は聞こえない。
俺は…いや、俺たちは今押し寄せる民衆の前に居る。
祭りのパレードに出ているからだ。まさか今日が当日だとは思っていなかった。
『緊張してるね。』
(そりゃな。
もし祭りが終わる前にバレたらとんでもないことになるかもしれないしな…)
偽っている時、バレたらと言う事を想像してしまうのは仕方の無い事だろう。
特にこんな公の場でとなると…恐ろしいってもんじゃない。
すでに女になっているので、性別でばれる事はないだろうけどな。
「このような気持ちで民の前を歩く事になるとはな。」
王様は俺にしか聞こえないくらいの音量で呟いた。
王様の心境は…どうやら最悪らしい。気配を調べれば分かる。
しばらく歩いた後王様のスピーチが始まった。
俺と王様の心境は、周囲の盛り上がりとは対照的なものだった。
「後は自由に回ってよいぞ。」
スピーチが終わった後、自由行動が許された。
「分かっているであろうが、リセスも毎年そうしておる。ゆっくり回るといい。
それから…お主の少し離れたところにボディーガードがついている。」
「ああ…みたいだな。」
反旗を翻しそうなボディーガードだ。
ただでさえ国の掟に反しているというのに、更に王様の立場を悪くしたくない。
王様にとっては無用な親切心かもしれないかもしれないが、受け取ってもらおう。
俺は1人で回り始めるフリをして王様から離れた。




