第五百三十話 忘れ去られた目的?戻ってたけどな!?
騒動が収まった後、ギーナの両親が俺たちを迎え入れてくれた。
明らかに狙ったかのようなタイミングで家から出てきたのは気付かなかった事にした。
「昨日は大変だったな。」
「お前らが足引っ張ったせいだろ。」
その翌朝。珍しく朝早く起きた俊太と世間話をしていたら、昨日のことに行き着いた。
昨日のことといったらもう一つしかない。ギーナファンクラブだ。
「いや~、足引っ張る気はなかったんだけどな~。
あのままだと守だけで片付いて、俺達の意味が無くなるみたいな気がしたからな。手伝えって言われたのに。」
「今ここで俺がそんな愚痴をこぼしてたら良かったんだけどな。」
「……ん?」
遠まわしに何もしなきゃ良かったのにと言ったのだが、伝わらなかったらしい。
最近の俊太はバカなのかそうでないのか、分かりかねる。
「なに?昨日何かあったっけ?」
「うおっ!?ギーナ!?」
会話の乱入者に少し驚きつつ、なんとか俺は平静を保つ。俊太は保てなかったらしい。
「ちょっとな。
実は、お前が帰った後しばらく皆でギ…義理高い旅人って奴に会ったんだ。」
義理高い旅人ってなんだ、と自分で言ってて思う。苦しすぎる。
「へぇ~。
で、足を引っ張るとか言ってたけど、あれは?」
深く追求してきた。
絶対嘘だってばれてるな。いい笑顔だし。
「ああ、ちょっとトラブルがあってな…
コイツが無駄な事をしてくれたおかげで無駄な被害を被ることになったってことだ。」
「悪かったって言ってるだろ、それは。」
ここで少しだけ事実を混ぜる。
決して言い訳が思いつかなかったからではなく、その方が嘘に真実味を持たせる事ができるからだ。
……思いつかなかったというのもちょっとあるかもしれない。
「…大変だったのね。」
「まあな。」
とりあえずはごまかせたことに安堵する。俊太も似たような心境だろう。
ファンクラブの存在がもしばれたら…ということはギーナの両親の手によってギーナ以外の皆にも知れ渡っている。
だから、うっかり話すという心配も少ない。
「それはそれとして、今日はどうするの?」
「今日か?
…言われてみればする事無いな。旅も終わったわけだ」
「終わってませんよ?」
「リセス!?」
少し寝癖がついたままのリセスが部屋に入って来た。
「そもそも、あの旅の始まりは私の旅に皆さんが着いてきた事から始まりました。
私の目的は旅の中でこの国を知って、城に帰ること。
私の旅は帰るまで終わりません。」
そう言えばそうだった。
当初の目的を今更ながら思い出した。これまで完全に忘れてたなそれ。
「またあの道歩くのか!?もう勘弁してくれ…」
何ヶ月にも渡る道筋を思い出してか、嘆く俊太。
しかし、実際はそこまで遠くは無い。あの旅では遠回りをしていただけなのだ。それに。
「移図離がいるだろ。」
「そうか!その手があったな!」
移図離の能力なら一瞬で王城に行ける。
これで今日することは決まったな。
「帰ってきた、という感じでしょうか…長かったですね。」
1回戻ってきたけどな。
数分後、移図離を起こしてリセス、ギーナ、俺、移図離、ついでに俊太のメンバーで転移してきた。
転移で移動してリセスを送るだけなので、そう時間はかかるまいという結論が出たからである。
「なんか向こう騒がしくねーか?」
「そろそろ祭りの時期ですからね。
王族も参加するという事なので、さすがに早く戻らなければと…」
「この前帰ったほうが良かったんじゃない?」
リセスは正論を言われて返答に困ったのか、無言で扉を開いた。
本当にそうだな、と俺も思ったのは言うまでもない。




