第五百二十六話 利益より脅威?謎はまだ多い?
「は…!?」
様子がおかしいと遠くの2人は更によく見る。
すると、あることに気付いた。
「…オーラが守に流れ込んでる?」
「まさか、吸収してるって事!?」
潜んでいるというのに驚きを隠しきれない2人。
そんな中、襲撃者のオーラが徐々に出なくなってきている。
「止めろ…止めろ!止めろ!!」
起き上がっていく守とは対照的に、がくりと膝を突く襲撃者の1人。
いずれオーラは出なくなり、出たオーラは全て守が吸収した。
「…もっとだ、よこしな。」
オーラを吸収された襲撃者は抜け殻のように力を失い、そのまま倒れる。
更にオーラを求める守は、襲撃者2人には怪物のように見えた。
「逃げろ!」
「わかってらあ!」
少し先の利益より、目前の脅威から逃げ出す残った襲撃者。
振り向いた先には、後ろにあったはずの脅威があった。
「もらうぞ。」
襲撃者2人の頭をつかみ、オーラを引きずり出して奪い取る。
「まだだ…まだ足りない。」
彼が手を離すと、2人は糸が切れたように倒れる。
守は倒れた襲撃者をしばらく見ると、倒れた3人に背を向けて歩き出す。
「ふざけるな…!」
歩き始めていた足が止まる。
「俺達の計画がこんな…こんなにもあっさりと…!
終われねえ!終わらせねええええええええええ!!」
残った力を振り絞り、近くに転がっていた黒い剣を投げる。
先程守がオーラに捕らわれ、その時に落とした障壁の剣だ。狙いは外れる事無く標的へ向かう。
「………」
剣はある場所で進行を止める。
彼に当たったわけではない。しかし、事実剣は空中で突然跳ね返った。
「バカ…な…」
驚愕の表情を浮かべた後、力尽きたように地面に伏せる。
「余計なところで使わせんな。
まだ足りないってのに…」
ふらふらしながら、振り向かずにまた足を進める。
一歩を踏み出したところで、彼は倒れた。
「……いいデータが取れたわ。」
どこかで誰かが呟いた。
それを聞いていた者はその場に居なかった。
「…俺達が寝てた間にそんなことがあったのか?」
「長が起こしに来てたよね?」
「その前に起こったって事。」
長が村の入り口で起きた事を報告している。
いつもの一行だけではない、村人全員を招集しての報告だ。
歳を重ねている村人の中に戦慄を覚えていない者はいなかった。
人数はそちらの方が下回っているのに、何も分からない子供や一行の様子が浮いているように見えるのは雰囲気を暗く塗りつぶされているせいだろうか。
「長、どこに行ってたのかと思ったら村に戻ってたのね。」
「…途中から忘れてた。」
一応長が居なくなってた事に気付いてたけど、居ない人…獣人に頼ろうとしても無意味だと思ったから3人で戦うことにしていた。
長が村人を連れて戻ってくるまで忘れていたのは移図離もだったらしい。
「で、事件解決のMVPは?」
「…寝てる。」
寝てるというより気絶している。
守の魔力は空、魔力切れの症状で気絶している。
またまた守の強さに磨きがかかっちゃうわけだけど…
ここ最近毎度毎度魔力が切れて学習はしないのかと本気で問い詰めたい。本人はそんな気無いだろうけど。
っていうか、死なないのが不思議だと思う。
「守なら長の家。
見舞いにいくなり顔に落書きするなり、ご自由にどうぞ。」
「見舞いで止めろ、イタズラ勧めんな。」
「…守?」
「もう大丈夫なの?」
気絶していたはずの守が若干ふらつきながら歩いてきた。
「ああ…慣れた。」
「慣れてどうにかなるものなの?」
「いや、ちょっと前までずっとこんな感じだったからな。」
「そう言えば魔力が無くなってたわね。」
魔力切れてもちょっと気絶する程度って…
「おい、その失礼な考えを止めろ。分かってるんだ。
で、奴らはどうした?」
「あの3人の事?
ちゃんと捕まったって。気絶したままだとか…」
「気絶したままか…」
色々と訊かなければならないことはあるけど、意識が無いなら訊きようが無い。
「あいつ等には訊きたい事も、言いたいことも多すぎる。
意識が戻る時まで、覚悟してろ。」
「意識も無いのに覚悟も何も無いでしょうに…気絶まで追い込んでまだ気が済まないの?」
「追い込んだ?俺は…思い出せないな。
でも、魔力切れは起きてるんだろ?だったら俺じゃない。」
「あなただったんだけど…」
「…また新手の暴走?」
守本人にはあの時の記憶が無いらしい。
あの時の守はまだ足りない、とか言ってたけど…それについて訊く事もできそうに無い。
解明されてない謎は、まだ多い。




