第五百二十四話 軽口の無限ループ?飾りではない!?
襲撃者は3人、こちらは4人。
人数ならこちらの方が上だ。普通ならこれは有利と考えるのだろう。
しかし、3人がまとう妙なオーラ的な何かが気になる。
目に見える不確定要素が親切だ…これまでどれだけ前兆も無しに訳の分からない事が起こったか。
「おやぁ?出てきたのはたった4人か?」
「そっちこそ、3人しか居ないんだな。」
襲撃者の1人が軽口を言う。
軽口には軽口で返す。それが礼儀だ。
「へっ、俺たちゃ1人で百人力よぉ。たった4人じゃ瞬殺同然…もしかしてもういねえのかぁ?この村にゃよぅ。」
「馬鹿を言うな。お主らなどわしらで充分…いや、わしら全員でかかる必要も無いのう。」
更にその軽口を軽口で返し…軽口の無限ループか。
「んん?お前、ひょっとしてあん時のボスか?」
「ボスなどではない、長じゃ。
ボスは手下を従えるもの…長に従える手下は無い。あるのは守るべき民だけじゃ。」
「けっ、どっちでもいい。
ってか、俺達の狙いはただの人間じゃねぇ。なのになんでこんなヨボヨボな獣人一匹しかいねぇんだ?」
「…やはりあの時の者の残党か。お主らに言われとうないわい。」
…ああ、通りでこいつら歳くってるわけだ。
年齢は中年通り越しているあたりか…
「……なんでそんな歳で襲撃なんて企てたんだ?昔失敗に終わったくせに。」
「今の俺達にゃ力がある。あの時でも持っていなかった力をな…!」
遅咲きの中二病か?
と普段なら思うのだろうが、ただならない怪しげなオーラがその思考を邪魔し、真実味を帯びさせる。
「ほう…ならば試してみるがよい。そこの3人でな。」
「へぇ、とうとう戦いも若い娘に頼る歳になっちまったか、じいさんよぅ?」
「お主らももう若くないわい。」
…そろそろか。
頃合だと思った俺は身体強化系の魔法を使い、集中し始める。
すると、どういうことか襲撃者の1人のオーラが俺に向かってくる。
「何?」
俺にも分からないので、その質問には答えられない。
だが、攻撃をよく知るには一度受ければ良い。
「ちょっとは避けなさい!」
「!?」
ギーナの声に従ったわけではないが、嫌な予感がしたのでとっさに飛びのく。
即死…かどうかは分からないが、とにかく当たってはならないような気がした。
「あれには気をつけろ。ただの飾りって訳じゃ無さそうだ。」
「分かってるわよ!」
「…知ってる。」
とはいえ、あのオーラは襲撃者全員がまとっている。近寄って攻撃することは出来ない。
となると…魔法での攻撃が良いか。
「ギーナ、ちょっと試しにあの三人に向けて魔法でも使ってみてくれ。」
「いいわ。」
ギーナは魔法の炎を三人に放つ。
…って、炎でかすぎじゃね?いきなりKOする気か?いや、これKOじゃ済まないような…
一発で済ます気だと言う結論に達しようとした時、炎がオーラに触れて消えた。
「…消えた?」
「今見てのとおり、俺達に魔法はきかねえ。
それだけじゃねえ。こいつに触れりゃ…おっと、ここからは食らってみてのお楽しみって奴だ。」
「お苦しみの間違いじゃないの?」
軽口を返し、表面上は冷静なように見えるが、ギーナの頬には汗が伝っている。
相手が限りなく厄介という事と、自身が全く戦力にならないという事に気付いたからだろう。
魔法も効かず、近付けないため近接戦闘も見込めない。
となれば第三の戦い方が必要だ。魔法を使わず、なおかつ近付かずに戦う方法が。
「ギーナ、なんか有効な戦い方は無いか?」
「少なくとも私には無いわ。魔法が効かなきゃお手上げよ。
けど、守と移図離ならあるじゃない。」
俺と移図離にあるものか…
悩むまでも無く分かる。能力のことだろう。
「さて、そっちから来ないならこっちから行くぜぇ!」
オーラとともに前進してくる襲撃者達。
俺たちの後ろは村。避ければ進入を許してしまうだろう。
…避ければな。
障壁を出現させ、侵入を遮ろうとする。
しかし襲撃者はハードル走のように軽く飛び越え、更に向かってきた。
時間稼ぎにもなってないか…不意打ちだし、少しは手間取ってくれると思ったんだけどな。
俺たちと襲撃者の距離はどんどん縮まっていく。
「無駄無駄ぁ!」
「それで止まるとでも!?」
速い。
外見年齢とは不釣合いな身のこなしだ。
「守、まずい!」
言われなくても分かっている。
障壁をすり抜け、3人が走るよりも速くオーラが迫ってきている。
直撃は免れない。今更避けようとしても遅い…!




