第五百二十三話 早朝の密談?不眠街道まっしぐら!?
地の文増やそうと思ったらただの中二病になりました。お助けください。
どうすれば上手い地の文に…
島の喧騒とともに夜は終わりを告げようとしている。
その一方で。
「それは実にありがたい話だが…いいのか?」
「もちろん。駄目だったらそもそもこんな話持ち出してないわ。」
明るくなり始める空も見えない、洞窟の中。一人の少女が暗がりに向かって話をしている。
「お前にメリットは?」
「この話を受けてくれる事、かしらね。
要はデータが取れればいいんだから。」
「それなら安心だ。
自分のメリットの為に依頼人を裏切る輩もいるモンでね…」
「裏切るも何も、そんなことしても私も損しかしないわ。」
「そうか、ならよろしくな。」
少女は洞窟を後にする。
その後姿を見る暗がりの者には、彼女の髪が海にも、空にも溶けているように見えた。
「…朝。」
目を覚ましたのは移図離だ。
彼女は眠気に苛まれつつも辺りを見回し、長かった昨晩の惨劇を思い出した。
相変わらず部屋はボロボロ、補修の類は全くされていない。
辺りに散らばるように眠っている愉快な友達を見ていると、その中に1人だけ欠けていることに気付く。
いや、もう一人いる。こんなにも広い交友関係を持つ事となった原因も。
「…守?
…ギーナ?」
ここで移図離はあることに思い至る。
「…浮気?」
津瑠も他の皆と同じように寝ている。
二人だけ居ない、ということは…
「なんだ?今とんでもなく妙な単語が飛んできたが。」
「…あ、守。」
違ったらしい。
守は1人で帰ってきた。もしデートか何かなら一緒に帰ってくるだろう。言い訳でも付けて。
「1人寂しく散歩してたぞ。あとついでに埋めたとこの匂いチェックとか…」
「…ギーナは?」
「知らん。俺が起きた頃にはもういなかった。
散歩にでも行ってるんじゃないか?」
どうやら彼も知らない様子だ。
偶然合流でもしていれば津瑠にあることないこと吹き込めたのに…
「何かよからぬことを考えてるな、残念ながらバレバレだ。」
と言う考えを見透かされてしまったのだろう。
「…舌打ち不可避。」
「勝手にしてろ。」
そう言うと彼はごろりと寝転び毛布を被る。
「今起きてても皆が起きるのはまだ先っぽいからな。
二度寝でもする。ギーナのことを気にしててもしゃーないしな。」
移図離もそれには同意する。
なにせ魔法無制限というとんでもないチートを持っている天才だ。何に襲われても眉一つ動かす前に撃退できるだろう。
「あれ、起きてた?」
「…眠れそうに無いな、こりゃ。」
噂をすれば、というものか。
部屋に入って来たのはギーナだ。
「寝たら墨で顔に落書きでもされそうだしな。」
「しないわよ。その辺に炭はあるけど。」
例え本当のことしか言えなくなったとしても、今と同じ事が言えるだろうか。
内心怪しいと思いつつも被っていた毛布を投げ、座った。
その瞬間、最早人の領域を超えている守とギーナの耳が遠くからの足音を捉えた。
それも複数。足音の感覚が短いことから走っていることとが分かる。
「戦、か。」
眠っていた長にもそれが聞こえたらしく、起き上がる。
「……あんな遠くから聞こえた足音で起きんのか。不眠街道まっしぐらだな。」
「寝られたもんじゃないわね…」
「邪な気配を察知したからじゃ。毎度その程度の音では起きぬ。」
この無意味なやりとりは、ふと浮かんだ3人の素朴な疑問を解決する以上の役割を与えられなかった。
「とにかく、早いところ奴らをなんとかせねばなるまい。
このままでは…」
長はその続きを言うことはなかった。
しかし、その続きが分かってしまった3人は焦りを覚えるのであった。
獣人の村は、ところどころ壊れた壁で囲われている。
昔の戦の名残だ。今となっては必要ないものなので修復作業も行われていない。
だが、この村の一部の住民はそれを見るたびに決まって同じ昔を思い出す。
決していい思い出ではないが…
「…あいつら起こさなくてもいいのか?」
「そんな暇無いでしょ。」
茶番の余裕はあったのにか?
という小言を吐き出そうとした口を閉じる。
自分でまいた種だったから…ということもあるが、理由はもう一つ。見えてきたからだ。
「…きおったな。」
襲撃者のおぼろげな輪郭が。
それからにじみ出てくる怪しげなオーラのようなものが。
「なあ、何かが決定的におかしくないか?」
「確かに、今まであんな気配を感じた事はないのう…」
「あのオーラは魔法ともちょっと…いえ全然、むしろ根本的に違う力みたいな…?」
オーラに関してはギーナも心当たりが無いらしい。
無駄に禍々しいオーラの正体は?襲撃者は何者なのか?
そして、4人だけで戦うことになってしまった俺たちの運命は?
疑問と謎を抱えたまま、襲撃者と対峙した。




