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第五百二十二話 恐い想像?そんな主義は無い!?

「なあ、誰かコイツ外に運んでくれ。俺まだ何も…」


 今にもやばそうな様子の俊太を運び出すように頼もうと思ったが、自分で運ぶ事を決意せざるをえない光景が見えてしまったため黙って俊太を背負う。


「あっはははははは!ははははははは!!」


「止めろ!今すぐ!部屋が!」


「まずい!電気で焦げた!」


「こっちは火がついたぞー!」


「壁が丸々消えた!」


 ……俺は俊太を外に連れ出していたため何も見ていなかった、何も知らなかった。


「ちょっと!一人だけ逃げる気!?」


「俊太がやばいから外に連れて行こうと思ってな。逃げるって何から逃げ」

 シュッ!


「……るんだ?」


「なんかほっぺたに掠ったけど?っていうか痛くないの!?ねえ!!」


 痛くない痛くない。その魔法がドアの蝶番に当たって壊れたなんて気のせい気のせい。


「痛い?どこがだよ。」


「やせ我慢はしてないわよね…震えてるけど。」


「これは痛いからじゃないぞ!?

 もしアレがもうちょい左にずれてたらとか恐い想像したせい……でもないんだからな!?」


「いい加減現実逃避はやめたら?」


「やかましい!早く俊太を外に出さないと部屋がとんでもないことに」

「もうもっと酷い事になってるけど?」


「そろそろまずい…うっ…」


 マジでやばいと思った俺はドアを蹴破り外へ出る。

 背負ったままではまずい。背中の爆弾がリバースフードオープンする前に外に連れ出し、降ろす必要がある。

 しかも降ろす場所も考えなければならない。もし大通りのど真ん中とか民家の前とかでは迷惑極まりない。

 先ほどのように森へと運ぶ事がベストだが、間に合うかどうか…!


「分かった!分かったから!

 私が俊太を運ぶから!かわりに部屋で暴れてるギーナなんとかして!!」


「お、俺は見てないものは信じない主義の第一人者なんだ!俺は酔って顔真っ赤にしながら笑って魔法を使いまくってたギーナなんて見てないから信じない!」


「顔色レベルでガッツリ見てたじゃない!しかもアンタそんな主義抱えてないでしょ!?」


 げっ、ばれた。

 あ、ばれたじゃない。見てないことにしてるんだった。


『…もう無理しかないよ、その設定。』


 …だな。

 って、ちょっと待てよ?


「…なあ光。」


「何?」


「今思ったんだが、さらっとお前も逃げてないか?」


「……あ、ばれ…じゃない!!

 そ、そんなわけ無いでしょ!?一人だけ逃げた卑怯者を追ってきただけよ!?」


「なるほど、うまいこと考えたな。これでお前も共犯者だ!」


「勝手に共犯者に仕立て上げないで!アンタとは違うわ!」


「…うぇ…」


 呻き声が聞こえたと同時にとっさに俊太を落とし、少し下がって安全を確保する。

 結局俊太がダウンした後、2人で地中深く埋めることとなった。

 …あ、別に俊太を埋めたわけじゃないぞ?






 しばらく経ったことを見越して、俺たちは長の家へ戻ることにした。

 煙が上がってないことから考えて、大規模な火事にはなっていないと思うが…


「お~い、大丈夫か~?

 何が起きた~?」


「あくまで知らない体を通すのね…」


 何も見てないって建前になってるからな。

 と心の中で返し、改めて惨状を見る。

 壁はこげ、場所によっては大穴が空いている。

 一方この状況を作り出した犯人はと言うと、すやすやと安らかに眠っている。この部屋の状況と対照的だ。


「守さん!?

 今まで何してたんですか!?」


「なんで急にいなくなった!?」


 まあ詰め寄られるだろうな。


「ああ、俊太が部屋でリバースしたらまずいと思って運び出してたんだ。

 まさかこんな事になってるとは…」


 光が冷めた目で見ているのが分かる。

 どこからどう見ても完璧な演技のはずだが、事情を知っている光からみれば白々しいにも程があるだろうな。


「そうか…で、その俊太は?」


「「…あ。」」


 持ってくるの忘れてた。

 今頃埋めたところに放置され、くしゃみの一つでもしているのだろうか。


「ちょっと俊太持ってくる。」


「待った。」


 また部屋を出ようとしたところでタカミに呼び止められる。

 修繕を手伝えとでもいうのだろうか。

 それとも、逃げるとでも思われたか?

 …そのとおりなんだよな。


「私は見てたわよ。

 一瞬よってるギーナを見てやばいみたいな顔したところ。」


 バカな!?ばれていただと!!


「……何のことだか。」


 という驚きを完全に演技で包み隠し、あくまでしらを切ることに専念する。

 しかし、俺は失念していたのだ。それを知っているのはタカミだけではないことを…


「…タカミ。」


 しまった!軽い口止めすらしてなかった…!


「それは無いんじゃない?

 私も守を手伝ったけど、こんな事になるくらいの騒動なら気づくんじゃない?」


「………それもそうね。」


 ……あ、あっぶねーーーーーーー!!

 ここで裏切られたら証拠充分で処罰を受けるところだった…

 …まあ、よくよく考えたら一応逃げた光も同罪ってことで処罰を受ける事になりそうだからな。フォローが賢明か。

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