表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
542/630

第五百十九話 人ごみで気絶?540度の変化!?

「この人がさっき言ってた獣人?」


「そうだ。

 顔こそ悪人っぽいが、意外と親切な奴だから安心しろ。」


 シャチの獣人は親切に道を案内してくれている。

 どうやら意外だと思っている奴もいるらしく、一度話したはずなのにわざわざ確認してくる奴もいる。

 凶悪…とまでは行かないが、人相が良いとはお世辞にも言えないのは分かる。ただ、本人に失礼だし面倒なので確認を控えて欲しいところではあるが。

 小声で話してはいるが、もし聞こえたら凄い形相で睨まれそうだからな…それは避けたい。


「ここを真っ直ぐ進めばすぐに町に着く。

 じゃあな。」


「え?町まで案内してくれるんじゃないの?」


「…チッ、人が多いところは苦手だからな。俺はここで帰らせてもらう。」


 村で人が多いって…現代の都会にでも来たらどうなるんだ。人ごみで気絶するぞ。


「案内してくれてありがとな。」


「…チッ、ああ。

 それと……守。

 お前、結構辛辣しんらつな事を言ってくれるな。」


「!?」


 ブルッ!


「……」


「守?守ー?」


「………ハッ!?」


 全身に戦慄と震えが同時に走った。

 シャチ獣人が振り返った時ちらりと見えた凶悪な顔…どの魔物にもあんなに恐ろしい顔をした奴は居なかった。

 父さんを怒らせた時を想起させる何かを感じた俺は、その後も若干震えながら歩いていたらしい。







「…ようやく着いた…」


 今までの疲れが出たからか、その声にはため息が混じっていた。


「私達は1回近くまで来たけどね。」


「誰かさんが流されたせいで…」


「悪かったな。

 魔力の封印が無ければあんな事には…」


「なんか疲れてるね。人外の癖に。」


「あのな、例えどれだけ身体能力が優れていようと、疲れるものは疲れるに決まってるだろ。

 それに神様でも何でも、精神的な疲れなら溜まるらしいぞ?」


「へー、神様でもって本当?」


「ああ、その神様から聞いたからな。」


「ふ~ん…」


 神様でも疲れるのか、と訊かれた時の女神様もこんな心境だったのだろうか。

 それはともかく…これでキャビとお別れか。みじか…くもないな。毎日が濃すぎて全くそんな気がしない。


『何も無ければ、ね…』


 …だな。


「おお、キャビ。

 ようやく帰ってきたか。」


「…長。」


 帰ってきたキャビを出迎えたのは長だった。


「長。数ヶ月の猶予、ありがとうございます。」


「うむ、若者が島の外に興味を向けるのは必然。

 わしに礼を言う必要は無い、お前さんはお前さんの意思で旅に出た…それだけのこと。わしにそれを止める権限など無い。」


 月明かりに照らされた長の顔には嬉しさも寂しさも浮かんでいて、複雑な心境がうかがい知れる。


「長…

 しかし、私は今回の旅で充分島の外を見て来た。

 もうこの島を離れる事は」

「良い、無理をするな。

 お前さんがどれほど多くの者に出会い、友と呼べる者と旅を楽しんだか…わしには気配で分かる。

 島を出たくなったら出て行けば良い、友に会いたくなったら会いに行けば良い、全部お前さんの自由じゃ。」


「……はい。」


「さて、しんみりとした話はここまでにしよう。

 お前さんは多くの友を連れて来た。来た客はもてなすのがこの村の長としての役目。

 ゆっくりしていきなされ。客人達よ。」







 …その後は、何か起きるのかと警戒していたものの見事としか言えないほどに何も起きなかった。

 長の家に招かれ、夕食をご馳走になることになり…ここまでは特に何も無い。

 でだ。

 今、目の前に食べきれるかどうかすら分からない量の料理が並んでいる。

 こちらは十数人…ということは分かっているのだが、それでもなおここまで食すことは出来るのだろうか。


「なあなあ、全員でもこんなに食えるか?」


「お前さん方の年頃なら、食べきれない量を想定した方が、かえってちょうど良いこともあるからのう。」


 いやいや、限度ってもんがあるだろ。

 しかも一部の料理からは焼くなりして飛んだとは思えないほどの強いアルコール的な匂いが…俺たち未成年だぞ?


『まっもり~ん!るっまり~ん!』


「『!?』」


 超ハイテンションなテレパシーに瑠間ともども驚く。

 誰だ今の!?テレパシーって事はフォルフか?デュアか?ルソードか?それとも…

 いや、こいつらこんな慣れなれしくなかったし…


『いや、それこそまさかでしょ……まさか…』


(まさか…なんだ?)


『まさか、既に誰かがアルコール入りの料理を…!』


 その可能性はある。

 いや、むしろそれしかない。

 一応見回してみるが、顔を真っ赤にして辺りに絡んでる奴は居ない。いや、むしろまだ誰も料理に手をつけていない。


『あっはっはっは!ま~だ気付いてない?』


『(まただ!?)』


 誰だ?この場に酔ってない奴が居るとすれば……

 …逆に考えるんだ。酔ってない奴がここに居るなら、ここに居ない奴が酔ってる奴だと。


『(ということは…)』


『ピンポ~ン!だいせ~か~い!

 正解は、女神様ちゃんでした~!わ~!』


 キャラが540度変わってやがる!!何があった!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ