第五百十七話 環境破壊?心の声が漏れた!?
守の手から発せられる光が止むのとほぼ同時に、津瑠がゆっくりと目を開ける。
「守君…?何があったんだっけ…」
「………」
半開きの目で守に問いかける津瑠だが、問われた守は口を開いたまま動かない。
「……助けたお前が呆けてどうする。」
「太郎!?皆!?いつからそこに居たんだ!?」
気付いてなかったのか。気配探ってなかったのかよ…
「数秒前?」
「なら教えて欲しいんだが…なんでさっきまで気配が小さくなっていった津瑠の気配が元に戻ってるんだ?」
………はぁ?
内心本気で首を傾げなかった人間は守以外居なかっただろう。
「なんでってお前…お前が治したんだろ?」
「は?俺は治れって念じてただけだぞ?
治れと念じただけで治る怪我があるか。」
「現に治ってんじゃねーか!」
もう一度津瑠を見るが、やはり傷一つ見当たらない。
守も同様に津瑠を見ていたようだが、俺と同じことに気付いたらしい。
「それなんだよな…てっきり皆がどうにかして治したのかと。」
「少なくとも私達は何もして無いけど?」
「え?何かしてそうな筆頭が何を………ギーナが日本語を喋った!?」
日本語?前から喋って…
…ああ、あれは翻訳魔法の効果だったな。別に日本語を喋っているわけじゃないのはちょっと前の守が証明したから分かる。
「え?何言って…まさか、翻訳魔法が効いてる!?」
「え!?マジで!?
ってことは…」
守はちらりとすぐそばにある木を見ると、無言でその木に近付く。
そしてグーで殴った。
するとその木はバキリと大きな音を立てて折れ、支えをなくした先の部分が落ちて重い振動を生み出した。
「おおおおおおおおおおお!!
すげえ!完全復活だ!!」
調子に乗ったのか、次々と辺りの木をなぎ倒していく。
その度にズズン!ズズン!と大きな音が鳴るのでうるさい。
「環境破壊すんな!」
「ゲフッ!?」
やや本気でわき腹を蹴る。恐らくこうでもしないと止まらない。
「わき腹はマジで止めろ!蹴っていいところじゃない!」
「じゃあどこならいいんだよ!?」
「……………色々考えたら、人間は蹴ってはならないと言う結論に達した。」
「木は殴り倒してもいいのにか?あと、人外なら良いよな?」
「じ、人外にも人権はあるんだ。蹴って良い理由にはならない。
だからその素振りっぽいの止めてくれないか?なんかブンとか言ってて当たったらひとたまりも無さそうなんだが…」
「……まあ、暴走が止まったならいいか。」
蹴りの素振りを止め、肩の力を抜く。
ツッコミ役に徹するとすぐこれだ…ただでさえ俊太がボケまくってるのに、守までボケ始めたら間違いなく肩が凝る。
そもそも、俺がツッコミ役をする事になったのはどう考えても守と光がツッコミを……
「……本当に治した自覚は無い、か…」
なにやら急に静かになった太郎無視して、互いの情報交換をしていた。
その後さっきの現象について考察を始めたのだが…どうやらさっき俺が津瑠治れ~津瑠治れ~と念じている時に手から神々しい光が出ていたらしい。
右手に妙な感覚がとは思っていたが、まさかそんなことになっていたとは…
『どうやら目覚めてしまったようですね…』
(何にだよ。
って、女神様か。久しぶりだな。)
ここしばらく…少なくとも魔力が使えなくなってからは一度も声を聞かなかった気がする。
『ええ、本当にそうですね…』
『…なんか疲れてるみたいだけど、大丈夫?』
今のは瑠間だ。
確かに、今日の女神様は妙に疲れている。何かあったのだろうか。
『心配には及びません、身体的にはなんともありませんから。
ただ、ちょっといろいろあって…』
『精神的にだいぶってこと?』
『そんなところです。』
(神様でも疲れるのか。)
『意思や意識があれば、なんであろうと精神的疲労は溜まりますよ…神でも魔物でも。』
そう言うものなのか…
一応覚えておこう。女神様が心労を無駄に溜めて、俺に妙な仕打ちや八つ当たりが来ないとも限らない。
『ところで守さん…
魔力の封印解除、おめでとうございます…』
わざわざ疲れてるのにそんなことを言うために…休んでりゃいいものを。
『ちょっと待って、封印?』
『ええ、封印です。
状態としては、発電所では発電が行われているのに、電線が切られていて各家庭に配給されないという感じでしょうか。』
『それって封印って言う?』
『テキトーで良いんですよ。
封印に近い状態ですし、貴方達の言う粉塵爆発はただの燃焼。本当の意味では爆発ではないんですが爆発と名前についてますから。』
使えないという意味ではあっているが、封印と言うには大袈裟すぎる気がする。
(しかし、どっからでてきたんだその例え…)
『すぐに思いついたのがこれだったので…世の中割とテキトーな部分もあるんですよってことで。』
『喋り方もテキトーになってきたね。』
『じゃ、次々用件を言いますね。さっさと休みたいので。』
(なら休んでからでもいいだろ。)
『……中途半端で終わるのもどうかと思うので、さっさと言います。』
(お、おう…)
絶対気付いてなかったな。
『まず、津瑠さんが能力に目覚めかけてます。』
「『津瑠が!?』」
「え?何?」
「なんでもない、気にするな。」
「?」
驚きすぎて心の声が大きく…どころか漏れていた。
一般人の域を出る事は無いであろうと思っていた津瑠が能力に目覚めると言うことが、どれだけ衝撃的だったかは言い表せない。
なんの能力かは想像もつかないが、確実に言えるのは俺たちの影響で目覚めたであろう事だ。
異世界と言う非日常に身を投じたのは津瑠自身の意思だが、引き込んだのは俺たちだ。
しかし、津瑠も戦闘要員になりえるならありがたい…なんとも複雑な気分だ。
『……前に……が出来たのです。』
『なるほど…それで…まで分かったんだ。』
『そう言うことです。』
…話が進んでたっぽいな。
考え事のせいで全く聞こえてなかった。
『あ、女神様、守は全く聞いてなかったみたいだよ?』
『……ハァ…』
あ、バラしやがった。




