第五百七話 元々が分からない?目が全てを物語る!?
学校は体調不良ということにして休み、母さんの同伴で病院へと向かった。
最初から期待していなかったが、結果は問題なし。
異世界の病院に…行ったとしても結果は変わらないだろう。
多分、精々魔力が通ってませんねーくらいで終わりだ。分かってるっつの。
「dudttoaa?」
だから何語だよ。
一応規則性があるらしいので、翻訳…できるわけ無いか。暗号の解読じゃあるまいし。
「どうだった?だって。」
「……問題無いだってさ~…辛い。」
ただでさえ重力が何倍にもなったかのような重圧に耐えているというのに、病院に行って歩いた事によって体力がほぼ尽きている。
意識を保っていられる事さえ奇跡だ。眠気的な意味で。
「じゃあ、魔力が無い事を除けばいたって健康って事?」
「そうなる…」
どうにかベッドまで移動した俺は、そのまま倒れこむ。
もうこのまま夢の国に旅立てる。というか旅立つ……
「……駄目だ、完全に寝てるなこりゃ。」
俊太の声が聞こえる。他にも気配が4つ。
恐らく、学校を休んだので5人で見舞いにでも来たのだろう。忘れられなくて良かったな太郎。
…相変わらずだるい。動きたくないし喋るのも億劫なので寝たフリを決め込むことにしよう。
「どうする?もう帰る?」
「そんな冗談は聞かないぜ?」
「冗談じゃないんだけど…」
駄弁るなら他所でやって欲しい。うるさい。
「それにしても、本当なんだよな?魔力が無くなったって…」
「…ちょっと確かめてみる。」
……腕を揉むな。筋肉のつき具合でも確かめようとしてるのか?
「…元の硬さが分からない。」
おい。
「そもそも、腕の硬さで魔力が無いって分かるの?」
「分からない。」
おいおい。
「…それはともかくだ。なんでこんな事になったんだろうな?」
それは俺も非常に気になるところだ。
誰が何の目的でこんな事をしたのか…全く心当たりも無い。
そもそも、俺が知ってる奴の中にこんなことが出来るやつは………
…いや、まさかな。
旅をしているメンバーはもちろん、これまで出会った誰もそんなことが出来ると思われる人間は居ない。
俺も知らない誰かの仕業であることは確かだ。
……いや、待てよ?
前にローブを着ていて顔も体格も良く分からないやつがいたような…動機が無いか。
それに、ローブと犯人の口調は全く違う。犯人は完全な女口調なのに対し、ローブは……思い出せない。
が、少なくともそこまで明らかな女口調ではなかったはずだ。
………止めよう。
いくら俺が犯人を模索しても、知りもしない誰かを言い当てる事は不可能だ。
考えるだけ不毛か。それより、早くこの状態をなんとかしないとな…
「守が起きてたら、最近変わったことが無いかとか訊けたのに…」
…最近変わったことか。
もしかしたら、そこに解決につながる原因があるかもしれないな。
「いつも変わったことしか起きないような…」
「気にしない。」
……さて。
まずは今日だが、謎の人物の手によって魔力が全身に行き渡らなくなった。
おかげで身体能力が極端に下がり、この有様だ。
昨日。何故かクラス転移が起きた。
突然景色が変わったときは驚いたが、襲い掛かってきた魔物を蹴散らして移図離に頼んで教室に転移して終了。
これに原因があるとは思えないな。なんか引っかかるけど。
一昨日。俊太が海に落ちた。
3日前。戦った。
4日前…
「いくら私達が考えても、当の本人が寝てたらね~。」
「そうだよな。
……守、実は起きてるだろ。」
…な、
「なんて」
「何故ばれた!?」
「あ、起きてた。」
驚きでだるさは一気に吹き飛び、跳ね起きる。
「起きてたならそう言えよ。色々と訊きたいことがあるってのに。」
「だるくてだるくて仕方なかったんだから仕方ないだろ!?いつから気付いてた!!」
「…いや、まさか本当に起きてるとは」
「思わなかったのか!思ってないのに言ったのか!?」
ベッドから降りて太郎に詰め寄ろうとしたその時、手が滑って頭から床に着地する。
「……頭打つのってこんなに痛かったか?」
その痛みで冷静さが戻る。
それと同時にまた体が重くなり、ズルズルと床に滑り落ちてゆく。
「だ、大丈夫かよ…」
「大丈夫だったら学校休んでねーよ…
おかげで体は重くなるし、無駄に疲れるし、元に戻る方法が全くわからんし、いいことが全くねーよ…」
「涙目が全てを物語ってるね。」
光に言われ、ほぼ反射的に自分の目に手を伸ばす。
その指は少しだけ濡れていた。




