第四百九十七話 ネガティブな待ちぼうけ?バカにできないけどくだらない!?
あと三話で五百話記念か…
王様への報告の後、王城で一泊して翌朝出発した。
その道中のこと。
『やっぱり、私がなんとかするべきでしょうね…』
頭の中に直接聞こえてくる声。
なにかを決意したような言葉だけど…
『いえ、しかし神としての力をそう安々と使うのは…
とはいえ、責任は私に…』
と、こんな感じで実は振り切れてない。
神の力がどうとか、責任がどうとか。無限ループに入りかけている。
もういっそ、ギーナ辺りに精神分析チョップでも…
『お待ちください!お願いします!』
め、珍しく女神様が必死だ…あ、昨日からそうだった。
性格は真面目っぽいから、責任感が強いのかな?
(分かったけど…
もしなにかするつもりなら、守が自分で解決する前にした方がいいと思う。)
『分かっています!承知の上です!』
まあ…守の自己解決は望みが薄いけど。
『いつになったら自然消滅するのかな~…俺。』
この通り。
最早私が話し掛けても無反応。カウンセリングも不可能となってしまった。
「あ、なんか足りないと思ったら守がいないのか。
…そう言えば、守はどうしたんだっけか…」
「自然消滅を待ってる。」
「なんの!?」
自分の。
なんてネガティブな待ちぼうけなんだろう…
「あ、ちょっと待ってくれ。」
かろうじて道になっている直線を進んでいると、ルーがある場所で立ち止まった。
「どうしたの?そんな茂みなんか見つめて…」
ルーが見ているのは何の変哲も無い普通の茂み…じゃない。
あの茂み、何かがおかしい。
「この茂みには魔法が掛けられていてだな…
軽い認識阻害がかかってんだ。」
「認識阻害?」
「ああ…実は俺達の故郷、隠された場所にあるんだ。
それも、色々と理由があってだな…とまあ、そんなことはどうでもいいか。
この茂みの周辺の土をどかすと、木の蓋がある。
その蓋をどかして、そこにある階段を下って、しばらく地下の通路を歩いて…その後にある階段を上れば」
「悪いけど、もう皆進んじゃってるよ?」
「え?」
ルドの説明が長すぎたため、私以外の皆はさっさと茂みの土をかき分けて出てきた階段を下っていった。
「人の話は最後まで聞け!あの村は…」
ルドもなにやら焦った様子で後に続いていった。
あの村は…なんだったんだろ?
『隠されている村ですか…何かありそうですね。』
何も無ければ隠す必要が無いからね。
先に行ってしまった皆に追いつくべく、私を階段を降り始めた。
「…特に何かある訳でも無いわね。」
階段を上った先にあったのは、何の変哲も無いただの村。
子供達が走り、その様子をほほえましく見つめる村人…普通だ。
「お~い!そこに居るのはルドか~!?」
村人の1人がこちらに駆け寄ってくる。
「じいさん!
久しぶりだな、元気だったか?」
それに答えるのはルド。
どうやら知り合いらしい。
「もしかして、ルーが見つからなくて泣き付きに来たのか?」
「知っててからかってるんだろう?
目の前に本人がいるってのに…ボケたようにも聞こえるから止めた方がいいんじゃないか?」
「わしゃあまだボケとらんわい!80歳越えただけでボケる訳があるか!」
80歳!?
充分ボケてもおかしくない歳だと思うけど…
「まあまあ、元気で何よりだってことで。」
「そいつぁ強引でないかい?
……な、何故ルーがここに!?」
「さっき言ったよな!?思いっきり見てたよな!?やっぱりボケてるだろじいさん!!」
なんか、身内同士で漫才してるよ。
水を差すのもどうかと思うし、2人はしばらく放っておこうかな。
「それにしても、べっぴんさんばっかりだな!」
なんかこっちに矛先が向いた。2人して露骨な話題転換を…
気遣おうとしたらコレだよ。
「皆、ルドと仲良くしてくれよな!?な!?」
1人1人、皆の手を握りながら回っていく。
手を握られた時に気付いたけど、息がお酒臭い。酔ってるねこの人。
「ああ、またじいさんの悪い癖が…
悪いな、この酔いどれが…」
「き、気にしなくていいわ。別にルドが悪いわけじゃないし。」
「いや、それもあるけどこのじいさんは」
「なんだ、内緒話か?
お前も隅に置けねえな~?」
「…いい加減その方向で話を進めようとするの止めろ。」
「いいだろうに、お前の将来の心配してるのは、俺だけじゃないんだからな?」
「くどいって言ってるんだよ。そのくらい分かれ。」
ルドには結構イライラが積もっていたらしい。
「ああ!?人がせっかく心配してるってのに、なんだその態度は!?」
おじいさんも、酔っているせいか情緒不安定だ。
「余計な心配だ!黙ってろ!」
「わしゃあとやるのか!?いい度胸だのう!?」
しまいには2人とも黄金化…そんな口喧嘩で?
『口喧嘩もバカには出来ませんよ。
一つ間違えれば、長年の親友も復讐の対象に変わることもありますから。』
いや、まあその通りなんだけど…
内容がくだらなすぎるって。
『…そうですね。そのことが否めないのは確かです。』
認めちゃうんだ。
『認めますよ、そりゃ。』
呆れながら物理的に話し合っている2人を見て、思わずため息が出た。
ルドってあんなキャラだったっけ?とか、色々思いながら。




