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第四百九十六話 王様の目には?友達モドキ!?

「…取り逃がしてしまったか。」


「…申し訳ありません。」


 今、王様に今回の事を報告をしている。

 取り逃がした、というのはリベルのことだ。

 リベルは移図離が転移させた後どこかに逃げたらしく、移図離が戻ったときには既に居なくなっていた。


「…あの荒野だったら、ちょっと移動してもわかると思った。

 けど、リベルは居なかった。気配すら無かった。」


 気配すら…

 戦闘はゴーレム任せだったアイツに気配を消す事なんて出来ないだろうし、短時間での長距離移動も難しいだろう。

 一体どうやって…


「でも、とりあえず危機は脱したんだから良いじゃない。

 ちゃんとここに無事なリセスも居ることだし。」


「…それもそうだな。」


 王様は一応納得してくれたらしい。


「リセス、親として…一国の王として一つ、言って良いか?」


「なんですか?」


 王様がなにやら言いたげだ。

 まあ、何が言いたいかは大体分かるけど…


「城に残れ。」


 やっぱりね。

 あんなことがあったんじゃ、城の外に出すわけには行かない。

 また命を狙われるだろうからね。

 もう充分国を見て回っただろうし、お別れかな…


「…いえ、私は城に残りません。」


 え?


「この城に来る前から決めていました。

 まだこの国を充分に見て回れてませんし、まだ学ぶべき事がありますから。」


「しかしだな…」


「命を狙われる、という事を心配しているなら大丈夫です。

 皆さんが、きっと守ってくれます。」


「…そうか。ワシは嬉しいぞ。

 我が娘が、これほどまでに頼れる仲間を作ったことがな。」


「お父様…」


 王様が一目皆を見て言う。

 王様の目に、私たちはどう映ったのか。それは私にも、リセスにも分からないだろう。

 でも、自分の娘を任せるに値すると判断させた何かがあったのは間違い無い。それだけは確実に言える。


「気をつけて行くのだ。

 必ずや、奴はまたリセスを狙ってくるであろうからな。」


「はい!」


 一つ返事をして、振り向く。


「というわけなので、またよろしくお願いしますね!皆さん!」


「もちろんだ!」


「当たり前よ。」


 口々に肯定を意を唱える私たち。

 この場に笑顔以外の表情は無かった。

 ……って、移図離まで!?なにか企んでる時以外は無表情なのに…


「……」


 あ、無言で戻した。







 笑いあった後、夜も遅かったので一泊して城を出た。

 私たちは、誰一人減らずに旅へと戻っていた。


「結局、あの声はなんだったんだろうな。」


「あの声?あの声って?」


 ふと、話が流れに流れて太郎がそんなことを言いだした。

 ここに居ない誰かが、さっきの事件に…?


『私のことですか?』


 ああ、なんだ女神様か。


「そうそう、こんな声で…って、まだ居たのか!?」


「昨日も思ったけど、どこから…」


『別の世界ですね。』


「別の世界!?」


 ずっとあの世界から状況を見て、更にテレパシーを送って会話してたんだ…

 どうでもいいところで神様らしさを見た気がする。


「どうやって俺達を知ったんだ!?何故俺達に味方した!?」


『質問が多いのも無理はありませんね…

 瑠間さん、手伝ってもらえませんか?』


「え~…丸投げ?」


『…お願いします。』


「分かった分かった。

 この声は、守が口を滑らせて言った……」








「…ああ、女神様って比喩じゃなかったのか。」


「良かった…浮気なんかじゃなかったんだ。」


 何故か残念そうな俊太と、嬉しそうな津瑠。対照的だ。

 あと、津瑠と守は付き合ってる訳じゃないから浮気でもなんでも…言うだけ野暮かな。


「守にとってはうらみが強そうな相手だが…当の守はその女神様とやらをどう思ってるんだ?」


 守を女顔にした張本人、ということも皆に伝えている。

 その上考えてる時にテレパシーで割り込んでくるし、印象は悪いだろう。と考えるのは自然なことだ。

 でも、


「意外かもしれないけど、少なくとも悪く思ってる節は無いよ。」


 テレパシーを通じて、女神様のことを知って…守は女神様を友達のような何かだと思っている。

 ただ、記憶をそのままに女の子として生まれ育った事にされかねないという恐怖もあるので…恐れてもいるような気がする。

 それもひっくるめて、守からの認識は友達モドキ、って感じかな?若干恐れのほうが上だけど。


『瑠間さん、それは無いとは思いませんか?』


(無いも何も、あんなことされたら本気でやりかねないと思われても仕方ないんじゃない?

 嫌なら守への接し方を変える必要があると思う。)


『今更接し方を変えるのも面倒なので、別に今のままでも良いですかね。』


(ちょっとちょっと。)


『でも、今回は悪い事をしたと思っているので…少しは検討しようと思います。』


 まあ、今の守の状態を見たらね…

 守が心の中でもの凄く暗いオーラを放っているのが分かる。

 既に何も言わなくなっている。不気味なほど静かだ。

 きっと、顔はどこかの叫んでる名画…いや、それ以上に酷いかもしれない。

 コレを見たら、誰でも気の毒だと哀れみを顕わにすると思う。


(本気で、カウンセリングが必要だね。)


『そうですね…私はなんて面倒な種をまいてしまったのでしょうか…』


 後悔の色が混じった女神様の声。

 後悔なんてするなら最初からしなきゃ良かったのに…と、思わずにはいられなかった私だった。

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