第四百九十四話 緻密な計算故に?大きなリスクと大きな力!?
まずはリベルに狙いを定める。
瑠間はロボ…いや、ゴーレムだったか?と戦っているので、少しの間ならこちらに向かってくる事は無いだろう。
一体一体があっけなく倒せるとはいえ、十数体まとめてなら多少は時間を稼いでくれるはずだ。だから、瑠間は後回しにする。
「またゾロゾロと…!ただでさえきついというのに!」
リベルは心の余裕が無くなってきたのか、心の声が漏れ出してきている。
「だが、先ほど苦戦したばかりの相手に勝てると思うか?」
「思うわ。
ひょっとして、私達がなんの対処法を考えてなかったとでも思ってる?」
「こけおどしか?」
「そう思うなら…見て驚くと良いわ!俊太!」
「おう!」
俊太は俺達から少し離れたところにいる。
当然これも作戦のうちだ。
「行くわよ…てい!」
ギーナは真っ直ぐゴーレムに向かい、魔法で強化されたであろう拳を叩き込む。
拳が当たる直前に攻撃は速度を変え、見事ゴーレムを粉砕した。
「バカな!?」
「有効、みたいね。」
この作戦は先ほどリベルに魔法を放った時、俊太はどうやってゴーレムに攻撃を当てたのかという疑問から始まった。
バカだから精密な計算をするロボには読めなかったという案も出たが、そうではなかった。
俊太曰く、拳の速度を殴る最中に上げたからだという。
それまでは最初から速度を上げて殴っていたのだが、その時は偶然速度を上げるのが遅れたらしい。
つまり、攻撃を途中で早くする事で、攻撃が読まれにくくなったのだ。
分かりやすい例えで言うと、投げられたボールが空中で急加速するということだ。
ロボではなくゴーレムなので緻密な計算をしているかどうかは分からないが、計算を狂わせればこうも簡単に攻撃を当てられる。
俊太が戦線から離れているのは、俺達の攻撃を急加速させるため。自身も戦っていたらそれどころではなくなってしまう。
「さあ皆!思いっきりいくよ!!」
「おお!」
「援護は任せとけ!」
先ほどの苦戦が嘘だったように、ゴーレムをあっさりと倒せるようになった。
一体なら時間稼ぎにもならない程に、進む速度を少し緩めるだけで、そのくらいで倒せる。
無双する系のゲームを連想するな。
なんか数人すれ違いざまに粉砕していたのが見えたが、気のせいという事にしておこう。
「よし、あと少しでリベルに…!」
「ま、まずい…!」
リベルに近付くのにかかった時間は、わずか5秒。
この場所がそう広くないというのもあったが、俊太は攻撃の速度だけでなく、俺達が進む速度も上げていたらしい。
二重の意味で、俊太の癖に気が効くことだ。
ヒュン
その瞬間、風を切る音がした。
その音を出したのはギーナでも、キャビでも、タカミでもない。
「…もうゴーレムは品切れ?」
瑠間だった。
リベルに狙いを定め、拳を振りかぶる。
「止めろ瑠間!そんなことをしたら守が…」
「守?守なら外の状況が分からないよ?」
「なに!?唯一の抑止力が…」
抑止力?
暴走してるって訳じゃないのに、なんで必要なんだか…
もう邪魔は無いようので、拳を振るう。
しかし、拳は止められる。
拳を止めたのはリベルでも、さっき邪魔をした太郎でもない。2人…だけじゃない、彼女ともう1人以外は皆目を見開いて動かない。
「……もう、止めて。」
拳を止めたのはギーナ。
「でないと…いくら瑠間でも、容赦は出来ないわよ。」
リベルと私の間に、割り込むように立ちふさがったのはタカミ。
「…上等。
なんなら、2人いっぺんにかかってくる?」
「分かってるわね。」
「言われなくても。」
「「そのつもり!」」
2人は同時に、全く同じ速度で走り出す。
私はそれを迎撃すべく、両手を後ろに引いて同時に打ち出した。
「おいおい、嘘だろ…」
「瑠間がギーナとタカミのペアと互角に戦うなんて…」
このメンバーの中では最強の2人が、瑠間と戦っても有利に持っていけない。
それほどまでに瑠間は強かったのか、それとも…
「…容赦出来ないって言ってた。
でも、全力は出せてない。」
こうなる前の、あの温厚な瑠間が頭にちらついて全力が出し切れていないのだろうか。
とは言ってもだ。それなりの力は出しているはず。なら、少しは圧せていても…
『瑠間さんは、過去に魔力切れを起こしました。
魔力切れは、命に関わる危険な状態…しかし、それを乗り越えれば格段に身体能力は上昇します。それを二度も。
つまり、瑠間さんは命がけの修行を2回も行ったことと同義。
強くなっていて不思議では…いえ、強くなっていて当たり前なのです。』
命がけの修行を2回…
チート二人相手に、全力ではないとはいえ後れを取っていない理由が分かった。
闇堕ちしたから強くなったとか思っていたが、そうではなかった。
大きなリスクを背負ったからこそ、大きな力を手に入れることが出来たんだな。




