第四百九十三話 何をトチ狂った?凄まじいイメチェン!?
「瑠間の奴、どこ行ったんだ?」
「どこかに行ったのは私達の方でしょ。
無事に逃げてれば良いけど…」
転移でロボの襲撃から逃げてしばらく経った。
そろそろほとぼりが冷めるころだと見当をつけた俺達は、ロボの襲撃があった場所に戻ってきたのだが…
そこに瑠間は居なかった。当然ロボもだ。
「捜しましょう。
確かギーナさんとキャビさんは、気配察知が使えましたよね?それで」
『駄目です!』
「…今誰か喋った?」
誰もしゃべっていない。
今の声は耳から聞こえたものではなく、直接頭に響くような声だった。
間違い無くテレパシーだ。
「フォルフか?それともデュアかルソードか?」
『…違う。』
『我でもない。』
『当然、俺もだぁー。』
今話にあがった3人ではないらしい…3人とも人じゃない。
となると。
「じゃあギーナか?
なんでこんな訳の分からんいたずらを…」
「私じゃないわ。」
ギーナじゃない?
じゃあ、俊太か移図離…じゃないな。2人も首をかしげている。
『聞こえるようですね。』
また聞こえた。
一体誰の仕業だ?
『詳しい説明は後でします。今は時間がありませんから。
私の話は、瑠間さんについての事です。』
瑠間の?
なんで瑠間のことを?いや、それ以前にどうして俺たちのことを知っているんだ?
とりあえずこの場に居る全員ではない事は、このテレパシーへの反応で分かった。
『まずは瑠間さんの所に案内します。
私の声に従って移動してください。』
「……」
…なんて、言われてもな。
突如聞こえてきたどこからきたかも分からない声のことを信じろと言われても、無理がある。
騙そうとしているのではないか、何か良からぬ事をたくらんでいるのではないか、そんな疑いしか出てこない。
「…皆、行こうぜ。」
その時、俊太が口を開いた。
「行くって、どこに?」
「決まってんだろ。この声の通りにだ。」
「まさか…俊太はこの声を信じるのか?」
「いや、この声を信用しきってるわけじゃない…ただ。」
「ただ?」
ただ…なんだというのだろうか。
「面白そうだろ!?」
「「「「「「「「「「「「「「「「『『『……』』』」」」」」」」」」」」」」」」」
しらけた。
当たり前だ。怪しい声に面白そうだという理由で従おうとしているんだからな。
いくらバカとはいえ、踏まないであろう罠に。
「…意外と、俊太の判断は間違ってないかもね。」
「ギーナ!?」
何をトチ狂ったらそんな結論に至るんだと、一瞬本気で思った。
だが、ギーナの真剣な表情を見れば何か考えがあることは明白だった。
「私達は瑠間がどうなったかは全く知らない。
でも、この声は瑠間に関する何かしらの情報を持ってるのは確実。
テレパシーっていうのは頭から頭に直接言葉を送り込むものだから、言葉だけじゃなくて発してる人の心情も明確に伝わる性質がある。
皆はさっきの言葉に、真剣以外の感情が伝わった?」
確かに、あのテレパシーにはよこしまな気持ちは微塵も無かった。
信じられる。そう思わせる何かがあったのは違いない。
そこからテレパシーに従って動き始めるまで、時間はそうかからなかった。
「ははは、この程度なの?」
「何故だ…さっきは苦戦していたというのに!」
謎のテレパシーに従って辿り着いた、こじんまりとした小屋の地下。
そこには異様としか言いようの無い光景が広がっていた。
「る、瑠間?」
瑠間が襲い掛かるロボを凄まじい速さで壊している。
しかもその顔には笑みが浮かんでおり、雰囲気も普段とは全く違うものを纏っている。
「…凄まじいイメチェンね。」
「というより、最早闇堕ちじゃねーか…」
闇堕ち。これほど的確に今の瑠間を示せる言葉は無いだろう。目が据わっていて恐いし。
『今の彼女は、リベルさんに気配察知を使ってしまいました。
気配察知のデメリットはご存知ですか?』
気配察知のデメリット?
そんなもの聞いた事が無い。
「…まさか、気配が近いものになるとか?」
『ギーナさんが考えてる事そのままですね。
気配が近いものになるということは、その感情も似てしまうという事。
リベルさんの負の気配を感じ取った瑠間さんは、破壊衝動が溢れてくるようです。』
「だからさっき止めたのね…」
ギーナやキャビが町中で暴れたらとんでもないことになる。
この声に助けられていたってことか。もし気配察知をそのまま行っていたら…
「どれくらいゴーレムを創れるのかは知らないけど、そろそろガタが来てもいい頃なんじゃないの?」
「そ、そんなことは無い…!」
口では威勢を張っているものの、明らかに疲れの色が見え始めている。
いずれリベルはゴーレムを創れなくなる事は明白だ。そして、それを今の瑠間が見逃すとは思えない。
『瑠間さんがリベルさんに手を出す前に、なんとか彼女の暴走を止めてください。
リベルさんと瑠間さんを遠くに離すか、リベルさんの意識を失わせることで出来るはずです。』
とは言っても、この戦いの間に入ることは容易ではない。
瑠間の動きはさっきよりも素早い。よくある闇堕ちの時に生じるパワーアップなのか、破壊衝動という一つの感情により身体能力が上昇しているのか…
…前者メタいな。
「…別に、リベルを守る事は無いんじゃないか?
一応、国家反逆罪的ななにかで裁かれるだろうし…」
…言われてみればそうだな。
仮に瑠間がリベルを見逃したとしても、国家がリベルを見逃すわけが無い。なら別に…
『甘いですよ。
今の瑠間さんがリベルにちょっと怪我させるで済むと思いますか?
最悪の結末が起きて、それを今の守さんが知ったら…完全に精神が崩壊しますよ。守さんは人殺しを忌避してますから。
それに、正気に戻った瑠間さんも自責の念に駆られるでしょうね…』
……なるほど、止めないとまずいな。このまま何もしなければ、そうなるのも時間の問題だ。
最初に言った時間が無い、というのはこのことを指していたのか。
「…皆、絶対に瑠間を止めるわよ。
そして、リセスを狙ったリベルも捕まえる…良いわね?」
タカミの決意は、すでに皆の心の中にあったことだろう。
大切な友達を失うわけにはいかない。だからこそ、絶対に止める。瑠間も、リベルも!




